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第21話 不寝番

 結論から言うと家の購入はできなかった。

 理由として俺がこの街にきてまだ一か月しかたっていないことや冒険者ランクがDランクであり、すべての信用ができないということらしい。

 金があるんだから買収できないかと思ったのだが、それも無理だった。どうやって稼いだ金か分からないことから、信用ができな~受け取れないという話。本当に面倒くさい。

 取り敢えず先月分と今月分の家賃を支払って、俺たちは家に戻った。


「まさか借家だったとは……」


 家に戻り、俺は深い溜め息を吐きながら言う。


「確かにご主人さまはお金持ちみたいですが、どうやってお金を稼いだんですか?」


 不思議そうにルノが聞いてきた。


「コツコツと働いて稼いだんだけどね」


「そのわりにランクが低いっていうのが……」


 分かってるよ! 俺よりもランクが低いお前に言われたくない!


「とにかく、この家を買い取るにはランクを上げてギルドや他のところで信用を得なければならないってことだ。取り敢えず冒険者ギルドに行くぞ」


「はーい」


 なんてノリが軽い返事なんだ。お前は武器すら持っていないというのに。そういえば、武器を渡すのを忘れていた。


「ルノ、お前に武器を渡してなかったな。取り敢えずこの剣を使え」


 剣はもう一本あるのでルノに渡しても問題ない。


「ありがたく頂戴いたします。質問なんですが、この剣は何が付与されているんですか」


「付与? あぁ、エンチャントか……。たしか腐食防止と刃こぼれ防止、切れ味倍増、他は忘れたがあと二つ付与してある」


「またまたぁ……。武器には二個までしか付与できないんですよ? 知らないんですか?」


 知らないのはお前だけだ。俺は鍛冶スキルマックスだから、沢山付与することができる。鉄の剣程度の武器だったら、最高で10個は付与させることができる。


「知らないのはお前だ。俺はすごい鍛冶師なんだぞ! その武器には5個付与されているから大切に扱えよ」


 だが、俺の言葉を真に受けないで聞いているルノ。本当に失礼な奴だな。

 ルノが来ている冒険者用の服にも付与をしている。破れ防止、汚れ防止、カッパ機能、防刃、魔法軽減など、数えきれないほどだ。売れば大金が手に入るくらい超レアな冒険者用の服なんだぞ。

 冒険者ギルドへ行き、ラインハルトのオッサンに家賃を支払ったことを言うと、お金の心配をされてしまった。それだけ俺は仕事をしていないかったということになる。仕方がなくオッサンに俺でもこなせる依頼はないかと聞いてみると、馬車の護衛だったら複数の冒険者で護衛をするから危険度が少ないとの話だったが、できるならゴブリン退治などのソロでこなす依頼が良かったが、そういう依頼は午前中のうちで締め切られてしまったとの話だった。ランクが低いため護衛の依頼料はとても安いが、他の冒険者たちと一緒にこうどうするため信頼度は高いらしい。そろそろ出発の時間とのことで俺は護衛の依頼を受けて依頼者のもとへ向かった。

 依頼者に挨拶すると時間になったらしく、他の冒険者に挨拶することもできずに出発開始してしまった。歩きながら挨拶すればよいか……。

 馬車の行先は習志野平原にあるマツド村で、数日かかる旅になるらしい。初めての冒険にルノは顔が綻んでいた。

 俺たちのほかに冒険者は五人ほどいて、全て男性だった。一応歩きながら挨拶をしたのだが、そっけない態度をとられ、俺は首を傾げてルノを見る。


「多分ですが、あのそっけない態度は私が原因ですね……」


 少し落ち込みながらルノは言う。どうしてルノが原因なんだ?


「どう言う意味だ? お前が可愛いから照れているというのか?」


 俺の言葉にルノは顔を赤くした。


「——可愛いって!」


「本当に可愛いと思っているが、そんな理由でそっけない態度とるか? 普通」


「私は可愛くないです! 私が奴隷だからそっけないんですよ!」


「どうしてお前が奴隷だとそっけない態度をとるんだよ?」


 意味が分からない。なんで奴隷がいるだけで態度が悪くなるんだよ。


「ご主人さまが道楽で冒険者をやっていると思っているんです。貴族の息子とか思われているんですよ」


 くだらない。本当にくだらない理由だ。これだから群れるのは嫌いなんだよ……。


「まぁ、別に無理に連携をとる必要もないからいいや。どうせ近くに魔物がいる気配もないしな」


「分かるんですか? 魔物の気配とか……」


「なんとなくだけどね」


 嘘である。気配察知のスキルがあるため全ての生き物がどこにいるのか分かる。


「それで、実際のところどうなんですか?」


「なにが?」


「あれだけお金を持っているんですから、貴族様と言われてもおかしくはないですが……」


「違うよ。俺は貴族様じゃない。俺は山で一人暮らしていたんだ。家族もいなければ友達だっていなかったよ。どうしてお金を持っているのかは内緒だけど、貴族様じゃない。シンジュクの町だって一か月前に来たばかりだよ」


「そう……なんですか?」


「そうだよ。俺はただの冒険者だよ」


 納得してなさそうな顔をしているルノだったが、疑ってもしょうがないと思っているようで何も言わずに歩いている。

 夕方になり、今日はここまでで休むと依頼者が言ってきたので、俺たちは各自で食事の準備を始めた。他の冒険者たちの食事は干し肉を食べるといったもので、質素に感じた。俺はストレージから水稲は鍋などを取り出し、ルノは近くの林で薪を拾ってきて焚火の準備を始める。あいつは魔物とかの心配をしないのか?

 ルノが準備してくれた焚火に鍋を置き調合スキルですき焼きを生成し、鍋の中に入れて出来上がるのを待つ。その間にルノと俺が使うお椀と箸をストレージから取り出してルノに渡す。

 しばらくして鍋が煮えてすき焼きが完成し、ルノに卵を渡して食べ始めた。俺は卵をつけない派なので自分でアレンジしたたれをつけて食べ始める。他の冒険者たちがこちらをチラチラと見ていたがシカトする。だって、向こうが素っ気ない態度をとるから悪いんだ。


「ご一緒させていただいても宜しいですかな?」


 依頼者がやってきた。


「どうぞ、二人では量が多かったみたいなんで……」


 そう言って俺はストレージからお椀と箸、卵を渡す。


「ははは、ありがとうございます」


 三人で囲みながらすき焼きを食べていると、他の冒険者がこちらを見ていたがもちろんシカトだ。ほしかったら自分で作れ。もしくは謝罪の言葉を述べろ。


「まさか帰り道でこのような食事にありつけるとは思いませんでしたよ」


「そう言ってもらえるだけありがたいですよ」


 俺たちは他愛もない話をして食事を楽しんだ。

 しばらくして冒険者の一人が全員に集合をかけてきたので、ルノには依頼者を声するよう指示して俺は集合を呼び掛けてきた冒険者のそばへ行ったが、みんなにジロジロと見られていたが気にしない。


「みんな揃ったようだな。今夜の不寝番を決めようと思う!」


 まるで自分がリーダーのように言う。誰なんだ? こいつ。


「じゃんけんで決めれば良いんじゃね?」


 俺が言うと何人かは頷いた。


「ならばそれで良いだろう」


 自分が決定権を持っているかのように言い、何人かの冒険者は睨んでいる。主導権を持っているのが気に入らないようだ。俺は気にしないし興味がない。さっさとじゃんけんで決めてしまいたい。

 睨み合いが終わりようやくじゃんけんが始まったのは体感として五分ほどしたころで、俺は一番最後になった。明け方近くが俺たちの番なので、丁度よいのかもしれない。

 俺はルノのところへ戻りじゃんけんの結果を伝えて寝る準備を始める。ストレージから体に纏う布を取り出してルノに渡し、ルノはそれに包まって眠りに付き、俺はルノを添い寝するようにして眠りについた。

 それからどれほど時間が流れたのか分からないが、誰かが俺の体を揺すってきたので目を覚まして周りを見る。目の前にはルノがおり、「ご主人さま、我々の順番がきましたよ」と言ってきた。


「あぁ……悪い。今起きる」


 そう言って俺は起き上がり体を伸ばした後、丸太に腰掛ける。


「このあたりに魔物や動物はいないようですが……」


 ルノがあたりを見渡しながら言う。


「分かるのか?」


「多少ですけどね。一応、私は獣人族の血も交じっておりますから……」


 獣人族の血が混ざっているのと気配察知に何の因果があるのだろうか?


「ふーん。ルノは優秀なんだな」


「優秀って……別に普通ですよ~」


 そんなことを言ってうれしそうな顔をするなよ。

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