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第15話 横取り

「今のパーティを抜けようと思っているんです」


「へ? 何を言っているんですか?」


「キョースケさんといて分かったの、私はまだ未熟だって……」


 いったい何を言っているのだろうか。未熟ってどういう意味だ?


「アーノルドたちはお子様だってことに気が付いたの」


 いやいや、マリアンヌさんだってお子様でしょ。


「言っている意味が理解できないんですけど……」


「今回の件で彼らが何もできない。すべてキョースケさんが解決した!」


 君が仕事を増やしてくれたのは忘れているのか?


「えっと、俺は一人で暮らしてきたからね……それなりに生活のやり方を知っているんだよ」


「アーノルドたちは一人では生活なんてできない!」


「んー……。だったら、マリアンヌさんはそういう生活ができるというの?」


「そ、それは……」


「俺のような人はマリアンヌさんに合わないよ。アーノルドやビンセント、ロロッソたちと共に成長した方がいい。もう少し現実を見た方がいいよ」


 俺は宿の中に入っていくと、外から誰かの鳴き声が聞こえてきたが、俺は振り返ることなく部屋へと戻っていった。

 その夜、食堂へ行ったがマリアンヌさんの姿はなく、俺は一人で食事をして部屋に戻った。彼女は俺のように一人で生活をすることはできない。これでよいのだ……。

 翌朝になり、井戸の方に向かうとマリアンヌさんとばったり出くわし、彼女の眼を見てみると目元が腫れ上がっている。多分夜通し泣いたのだろうが、俺の決意は変わらない。


「おはようマリアンヌさん」


「……」


 マリアンヌさんは黙ったまま急いで顔を洗い、宿屋の中へ走って戻っていってしまった。俺は言ったことを間違っていないと心に言い聞かせて顔を洗った。

 食堂へ行くとまだ誰も来ておらず、みんなが来る前に食事を終わらせることにした。しばらくするとアーノルドたちが起きてきて朝食を食べ始めるが、そこにマリアンヌさんの姿がない。


「なぁアーノルド、マリアンヌさんはどうしたんだ?」


「え? 部屋をノックしたが誰も出てこなかったけど? キョースケ、何か知っているのかい?」


 マリアンヌさんは抜ける話をアーノルドたちにしていないようだ。一応、保険をかけていたんだな。


「いや、知らないな」


 昨日のことは黙っておこう。


「そういえばキョースケ、今日の予定だけどギルドに行った後にもう一度話をしないか?」


「別に構わねーけよ。ほら、さっさと飯を食っちまえよ」


 アーノルドたちは「わかった」と言って食事に集中する。話し合うといっても俺の決意は変わらないけどね。

 それからしばらくして、マリアンヌさんがやってきたが食事はしないとのことだ。顔の腫れをどうにかして治したみたいだ。

 食事が終わり、俺たちは冒険者ギルドへ向かい回りを確認せずに受付嬢のところへ行くと、俺たちに気が付いた受付嬢はどこかへ行ってしまった。なぜ逃げるのだろうか?

 別の受付嬢がこちらに気が付いたのだが、他の人を相手にしているためこちらの対応ができそうにない。

 しばらく待っていると、あのオッサンがやって来て挨拶をしてきた。


「おはようございます」


 アーノルドがオッサンに頭を下げる。知り合いなのか? それとも相手がギルドの人だからか?


「おう、お前がリーダーのアーノルドか?」


「はい!」


「悪いが今回の依頼は失敗だ!」


 え? どういうこと?


「キョースケ、お前はカレンお嬢様のパーティメンバーだろ。一人で複数のパーティに参加させるわけにはできないからな。今回の件はカレンお嬢様たちが行ったことになる」


 えーーーーー! 嘘でしょ!

 オッサンが言い終えると、先ほど逃げた受付嬢がやって来ていたようで、カレンの前に立っていた。


「お嬢様、そう言うことなのであちらでお話させていただきます」


「キョスケ、オークは私たちだけで討伐したから安心しときな!」


 こちらに向かってサムズアップをしてきたのがムカつく。


「ど、どういうことだよ! キョースケ!」


 怒りで肩を震わせているアーノルド。俺が悪いわけじゃない。


「俺だって知らないよ! ねぇ! 俺はあっちのパーティを抜けたんですよ」


 カレンと話をしている受付嬢に言うと、受付嬢はカレンに確認を取る。絶対にあり得ないでしょ!


「いーや、キョスケは私たちの仲間だ!」


「ち、ちがーう! 俺はアーノルドの仲間だ!」


「パーティのリーダーが言っておられるので、こちらはそれを信じることになっていますので、カレン様の方を信じることにいたします。では、先ほどの続きをいたしますね……」


 あ、ありえねー……。


「悪いな。そう言うことだから……な」


 オッサンが俺の肩を叩き、アーノルドは怒りに震えている。俺は悪くないのに……。


「それで……だ、アーノルドたちに質問なんだが、お前らであの井戸を作れるか?」


 怒りに震えているアーノルドに向けてオッサンが質問してきた。何が言いたいのだろうか?


「い、いえ……僕たちではキョースケが作ったようなものを作るのは……悔しいですけど無理です」


「だよな。もし、お前らだけで作ることができるというのなら、今回の失敗は不問にするつもりだった……が、やはり無理だったか。もう一度出直してこい! キョースケはあっちで話を聞いてこい。これはギルドからの命令だ!」


 ずいぶんと身勝手なことを言いやがる。そんなにカレンが怖いというのかよ!


「アーノルド、自分の身の丈に合った依頼をするんだ。犯人だって自分たちで探すことができなかったんだろ? 先ずは動物や薬草を集め、ランクアップしてから自分のレベルを上げるんだ。動物すら狩れないようではゴブリンだって仕留めることができんし、動物を狩ることができれば食糧不足も解消することができる。言っている意味が理解できるのなら、この依頼を受けてこい!」


 そう言ってオッサンはアーノルドに一枚の依頼書を渡すと、俺の腕を掴んでカレンの方へ連れて行った。アーノルドたちは悔しそうな顔をしてギルドから出ていこうとするが、俺は止めることができなかった。

 無理やりカレンたちの方へ連れてこられた俺は、カレンの胸ぐらをつかんだ。


「あんたって人は! 見損なったぞ!」


「——止めるんだキョースケ。お嬢様は何も悪くない……」


 俺の肩を掴んで止めるオッサン。部外者は引っ込んでほしい。


「今回の件は俺がお嬢様にお願いして行ったことなんだ」


「え? なんで……ど、どういう……」


 どういうことだ? なぜオッサンが俺たちの邪魔をするんだ?


「おんぶに抱っこのままだと人は成長しないんだ。今のアーノルドたちはお前に頼りすぎている。ギルドはそう判断したんだ」


「い、意味が分からねーって!」


「自分たちでどうにかできたのなら、俺たちは何も言わねーが、そうでないのならこれからも依頼を出すことができない」


 意味は理解できるが、やり方が気に入らない。


「キョスケ、彼らの成長を止めることはやめるんだ。お前なら理解ができるだろ」


「そんなこと言われなくたって分かってるんだよ! だが、やり方が気に入らねーんだ!」


 殴ってやりたいが、それでも気が済まない。


「分かってる。お前が抜けたいのは理解している。この依頼が終わったら抜けたことを認めてやる。だからその手を放せ!」


 俺はオッサンを睨みながら手を放し、この怒りはどこへ向けたらよいのかわからない。


「ちなみに我々ならあの井戸を再現することは可能だ。キョスケがいなくともね」


 エレンが言う。


「だったら自分たちでどうにかするんだな。俺は知らねー」


 そう言って俺は冒険者ギルドを後にした。

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