第14話 抜ける
外で対策案を考えていた四人と合流する。困った顔をしている四人、本当にまだ考えていたのか? 本当に頭が悪い奴らだな……。
「まだ考えてんのかよ? 取り敢えず今晩の宿を探しに行こうぜ」
俺が話かけると、マリアンヌさんは笑顔になったのだが、この人は絶対に関わってはいけないと頭の警報が鳴り響いているのが分かった。
「キョースケさん! 宿屋より対策案ですよ! それにギルドへ報告しないと!」
「いやいや、報告はすでに終わってるし……あとで細かい話をするから、今は取り敢えず宿屋を探すの! わかった」
そう言って俺は宿屋がある場所を目指して歩き始めると、マリアンヌさんたちも遅れながらついてきた。
何件か回ったところでようやく泊まる場所を見つけ、俺たちはチェックインした。だが、ここの宿屋も鶴瓶式の井戸でロープが切られていた。
食堂に全員を集め、冒険者ギルドで話した内容をみんなに説明すると、マリアンヌさんたちは「よかった……」と言う。すべて俺が解決したんだけどね。
「そう言うことで、今日中に冒険者ギルドの人が確認しに行きますから、明日でこのパーティは解散となる。後は四人で頑張ってくれよ」
ホッと息を吐く三人。一人だけ浮かない顔をしているマリアンヌさん。
「――べ、別にキョースケさんが抜ける必要なくない? 同じアイアンなんだし……」
マリアンヌさんが引き止めようとしてきた。三人は微妙な顔をしてやがる。失礼な奴らだな。
「申し出は嬉しいが、俺は仲間になれない。俺、ブロンドになったからね」
そう言うと四人は驚いた声を上げる。もしかしたら成績優秀者は俺一人なのかも知れない。あのお嬢様ならあり得そうで恐い。
「今回の件でランクアップしたようだよ。別に手柄を独り占めしたわけじゃないからな、リーダーはアーノルドって伝えてあるから。俺はみんなと会う前にゴブリン退治なども熟していたからだと思うけどね」
訓練でランクアップしたなんて言うと、依怙贔屓と言われかねんからな。
「そ、そうなんだ……」
残念そうな声を出すマリアンヌさんだったが、三人は微妙な表情だ。頭が悪い子供のくせに生意気だ。
「ということで、明日はギルドへ行って問題がなければ他の宿屋も回って、井戸の改修を行わなければならねーからな。昼飯を食べたら今日は自由行動ってことでいいよな?」
アーノルドに向って言うと「あ、あぁ……」と返事をした。
「じゃあ、俺は外で食べてくるから、みんなはここで仲良く食べてな」
そう言って俺は店の外へ出ていくと、誰かが俺を追いかけてきた。誰だ? 追いかけてくる奴は。
取り敢えず追いかけてくる奴は無視して、ここの井戸を改修でもするか。
宿屋の裏に回って井戸の方へ向かい、メニュー画面を開いて鍛冶を選択し手押しポンプを量産させるてストレージ内に入れる。
メニューにあるストレージはアイテムがマジックバックよりも入るし、【手押しポンプ 10個】と表示される。ギルドから貰ったストレージやマジックバックだと、数が表示されずに物が並べられてしまう。
仕舞った手押しポンプを一つ取り出し井戸に設置して、井戸から水が出るか試してみると、問題なく水が出てきた。先ずは一つ。その後、何件か宿屋をまわって設置を繰り返した。残り数件。
「あとは明日にするかな。で、先ほどから覗いている奴は誰だ?」
陰から隠れている奴がおり何件か前から付いてきていた。
「バレちゃいましたか……」
ようやく出てきたが、まったく見たことのない小太りの男が出てきた。
「誰だ? お前」
「ヒッヒヒー……。私はこの近くでお店を開いているものです。私のところも井戸が壊されてしまいましてね、貴方に直してもらえないか聞きに来たのですよ……」
「近くで店を? どこかの宿屋の店主か?」
「ヒヒヒ……宿屋ではありませんが新鮮な商品を仕入れておりますが、新鮮さゆえに水が大事なんですよ……」
変な笑い方をする奴だ。それに新鮮な商品と言っていたな……。魚か何かか?
「貴方は冒険者とお見受けいたしました、是非お力を貸していただけないでしょうか……」
「確認だが、水を欲するということは商品は生き物なのか?」
「はい~……生き物ですぅ。報酬はお支払いいたしますので現場を確認するだけでもしていただけないでしょうか?」
「まぁ、確認して直せそうなら改修してもいいけど、無理だったら諦めてくれよ」
「はい~それで構いません。店はこちらの方になりますぅ……ヒーヒッヒッヒィ……」
変な笑いをする小太りの男。身なりが整っているし、高級そうな杖を突きながら歩いている。いったい何者だろうか……。
しばらく後を付いていくのだが人っ気が少ない場所までやってきた。まさか嘘でもついたのか?
「大変申し訳ありません、もうしばらくで到着いたしますので……ほら、あそこになります!」
小太りの男が指差す方を見ると、大きな建物が見えてきた。水が必要であそこまで大きい建物は水族館か?
少し歩いて到着し、井戸のある場所まで案内されるとかなりひどく壊されていた。
「かなりひどく壊されているな……」
「直せますでしょうか……」
男はもじもじしながら聞いてくる。
「多少形が変わるかもしれないが、それでも良いか? 取り付けるものは同じだけどな」
「はいぃ……構いません。お願いいたしますぅ!」
「完成したら呼びに行くから、店の中で待っていてくれ」
小太りの男は礼を言って店の中へ戻っていくのを見届け、俺は積みあがっていた井戸枠が崩されているため井戸枠を取り除き、新しく枠を組み上げ鉄板で補強し錆びないようアルミで枠を組み上げ、ポンプを設置して水が出るか試す。問題なく水が出てきているため店主を呼びに店のドアをノックした。
しばらく待っているとドアが開いたのだが、開けてきたのは小太りの男ではなく屈強な男だった。
「あ……いや、井戸の改修が終わったから……店主に報告してもらえます?」
「……」
屈強な男は首で中に入るように合図を送ってきたため、俺は恐る恐る中へ入っていく。中は薄暗くカビに似た匂いがしている。水族館の裏側ってこんな感じなのだろうか……。
周りを見渡しながら男に付いていくと男が扉の前で立ち止まった。この扉の中に小太りの男がいるのだろうか……。
ドアをゆっくり開けると中は光が差し込んでいて眩しく、そう感じるのは先ほどまで薄暗かったためだろう。
「おやおや、もう作業が完了したんですか?」
「まぁ、そんな感じです……。一応……完了確認を行ってもらえます?」
「わかりましたぁ! おい……」
男が手を叩くと、隣の部屋から美人な女性が出てきた。
「ヒヒヒ……シノミヤ様と一緒に井戸の確認してこい。終わったら報告するんだ」
美人の女性はゆっくりと頭を下げると、今度は俺の方を見てから頭を下げる。結構薄着のため胸が見えそうになるが、髪の毛が邪魔して見えなかった。
女性の後を付いていき外へ出ると井戸の方へ向かった。新しくなった井戸を見て女性は少し驚いた顔をしたが、すぐに元へ戻り水が出るかハンドルを握って水を出してみると、今までよりも簡単に水が出るようになって驚いた顔をしていた。
「ありがとうございます」
すごく透き通った声でお礼を言われ俺はドギマギしてしまい、裏返った声で「い、いえ……」としか言えなかった。
それから店の中へ戻って先ほど案内された部屋の前にたどり着くと、女性はドアをノックして声が返ってくるまで待つ。返事がくると、女性がドアを開けて中へ入っていくので、俺も眩しい部屋の中に入っていた。
「どうだった?」
小太りの男が女性に聞いてきた。自分で確認すれば良いのに。
「井戸は新しくなっており、水はくむというよりも出てくるといった方が表現がよいのかもしれません」
先ほどの透き通った声とは違い、今は少し怯えたような声で小太りの男に報告した。何を怯えているのだろうか……。
「わかったわかった、もう下がってよい……。シノミヤ様、この度はありがとうございます。これで商品に水をあたえることができますぅ……」
「お礼の言葉はいらないが、一つ聞きたいことがある」
「ヒィーヒッヒッヒィ……何を聞きたいのでしょうか?」
「なんでアンタは俺が誰だと知っているんだ? 初めて会ったときは俺のことを冒険者とお見受けしたと言っていたよな。そして、この部屋であったときはシノミヤと言った。どうやって俺の素性を調べたんだ?」
最初に会った時から怪しかったが、ここにきてさらに怪しくなった。こいつはいったい何者だ?
「それは企業秘密ですぅ。お礼に関してはまた今度にさせていただきますぅ……。おい! シノミヤ様がお帰りだ!!」
小太りの男が言うと、後ろのドアが開き先ほど案内してくれた屈強な男が入ってきて、俺の腕を掴んできた。抵抗するのは楽だが今はアーノルドたちとパーティを組んでいる。
それから俺は外に放り出されるような形で建物を出ていき、後味が悪いままみんなが待つ宿屋へ戻った。
泊まっている宿屋の近くへ戻ってくると建物の前にだれか待っており、俺は陰に隠れながら宿屋に近づいた。まさかカレンが俺の宿を突き止めたのか?
ゆっくりと覗いてみると入り口の前に立っていたのはマリアンヌさんで、俺はホッと息を吐いて宿屋の入り口に近づくと彼女が俺に気が付いた。
「あ! キョースケさん! おかえりなさい!」
「ただいま戻りました。そんなとこに立ってどうしたんですか?」
「キョースケさんが戻ってくるのを待ってました」
「へ? どういうことですか?」
「私、今のパーティを抜けようかと思ってるんです……」
へ? 何を言っているの?




