第13話 ランクアップ
朝食を食べ終え、俺とマリアンヌさんの二人は今だに寝ている三人を叩き起こし、朝食を食べさせた。
マリアンヌさんは髪先をいじりながらアーノルドに「リーダーなんだからしっかりしてよ!」と恥ずかしそうに言い、アーノルドは俯きながら朝食を食べていた。
朝食を食べている三人に、この後の予定を告げると、三人はどうして商業ギルドへ行くのか聞いてきた。
「この店の店主から聞いたんだが井戸の修繕は商業ギルドに依頼したんだとさ。そこから誰が井戸の修繕をしたのか確認する。あとは他の井戸を直さない理由も聞かなきゃならないし、新しい宿もさがさなきゃならないだろ? 先ずは聞き込みから始める」
俺の言葉に三人は納得した表情をしていたが、マリアンヌさんは少し違った目をしていたのが気になる。
正直言うと簡単に納得しないでもらいたい。四つも頭があるんだから、もう少し考えて意見を出し合って目的を決めるものじゃないのか? 俺に頼り過ぎてパーティがバラバラにならないか不安である。
先に宿のチェックアウトを済ませ三人が食事を終えるのを待ち、移動を開始する。
「先ずは商業ギルドだ」
俺が言うとマリアンヌさんが元気よく返事をしたが、三人は無言だった。お前たちの仕事を片付けるのにお前たちが動かなきゃ意味がないだろ。
マリアンヌさんが俺の隣を歩き、三人は後ろから付いてくる形で商業ギルドへやって来て、中へ入った。
先ずは商業ギルドの受け付けカウンターに向かい、受付嬢から話を聞こうとしたら、俺のギルドカードを見せるよう言われ、俺はギルドカードを提示する。
「ご提示ありがとうございますシノミヤ様。それで、聞きたいこととは?」
「一週間ほど前に宿屋の人から井戸の修繕依頼があったと思うんですが、修繕は誰に依頼したんですか?」
一週間も前の話でしかも担当した人が別の人だったらしく受付嬢は記録が保管されている本を取り出して調べ始めた。少ししてから記録が見つかったらしく話し始めた。
「その件でしたら、商業ギルドから冒険者ギルドへ依頼しております」
やはりね。
「完了報告は冒険者ギルドの職員からですか?」
「記録ではそうなっていますね」
「話は変わるけど、新たに井戸が使えなくなったのは報告来てますか?」
「えっと、はい……来ておりますが、直したばかりで同じことが起きているため、冒険者ギルドへ調査依頼を出してますね」
「犯人探しではなくって、調査ですか?」
マリアンヌさんが横から聞いてきた。その際、シャンプーの匂いがしてきた。少し興奮するね。
「はい、調査依頼になります」
宿屋の店主も調査って言っていたのを思い出した。
「我々は冒険者ギルドから犯人捜しをしろと言われて調査しているんですけど、そこまで調査をしなくても良いということですか?」
マリアンヌさんが早口で受付嬢に聞く。かなり口調は強いな。
「できるなら犯人を見つけていただけると助かりますが、難しいようでしたら修繕と対策案を冒険者ギルドに提出並びに報告していただければ、依頼完了とさせていただきます。こちらから冒険者ギルドへ話を通しておきます」
少し怒り気味のマリアンヌさんに対し、受付嬢はすました顔をしている。こういうのは慣れているんだろうな。きっと……。
「わかりました、対策案と修繕ですよね! すぐに考えて報告しに行きますので、早く冒険者ギルドに話を通してください! みんな行くよ!!」
怒ったマリアンヌさんは、三人を引き連れて商業ギルドを後にする。俺はまだ話があるので付いてはいかない。
「すいませんでした、商業ギルドではだれが作業したのかって報告はありましたか?」
俺の質問に受付嬢は首を横に振って「わかりません。作業が完了したという話しか報告がないみたいですね」と返ってきた。機嫌を悪くしてなくて助かった。
お礼を言って商業ギルドを後にすると、入り口から少し離れた場所でマリアンヌさんが蹲って頭を押さえていた。あんだけ暴走すればそうなるだろうが、気にせず冒険者ギルドへ行こう。
マリアンヌさんが蹲っている横を知らん振りしながら歩いていくと、ビンセントが引き留めてきた。
「ちょ、ちょっとまってくれ! どこへ行くんだ!」
「どこって、冒険者ギルドだけど?」
「マリアンヌがどうしようって……」
「それはマリアンヌさんの問題であって、俺の問題ではないよ。対策案を考えて報告すればいい」
俺の言葉にビンセントは何も言えなくなって立ち尽くす。俺はそんなのに構っている暇はないので先を急ぐことにした。
先ずは状況を整理してみよう。
1、最初に井戸のロープが切られたのは一週間前。
2、宿屋の店主は商業ギルドへ修繕の依頼をだした。
3、商業ギルドは冒険者ギルドに依頼をだした。
4番目から先は冒険者ギルドに確認しなきゃならないところだろう。商業ギルドからは冒険者が修繕したと言っていたが、宿屋の店主はギルドの者が来たと言っていた。
ここで話がおかしいのは、商業ギルドの言っていることと宿屋の店主が言っていることが食い違っていることだろう。
そんなことを考えているうちに冒険者ギルドへ到着し、中へ入ろうとしたらマリアンヌさんたちが息を切らせて追いついた。息を切らせていることから全力疾走でもしたのだろうか?
「どうしようキョースケさん!」
焦った表情でマリアンヌさんが言う。君が勝手に暴走するから悪い。
「対策案なんて思いつかない!」
俺に言われても……。
「とにかく、それは四人で考えてくれる? 俺は聞き込みをしてくるから」
四人を置いて俺は冒険者ギルドの中へ入っていく。今は時間を無駄にしたくない。
中へ入り周りを見渡す。今はカレンたちに構っている暇はないので、できれば会いたくない。
そう思いながら各テーブルや掲示板がある方を見るが、カレンたち姿はなかった。
ギルドのカウンターへ向かい受付嬢に理由を説明すると、受付嬢はすぐに理解をしてくれて資料を取りに行く。少し待っていると俺を売ったオッサンがやってきた。
「おう、久しぶりだな。さ、ギルドプレートを出しな」
いきなりやってきて、ギルドプレートを出せとな。
「今さら俺の身分証明をする必要もないでしょ?」
「ちげーよ。今回の訓練で成績優秀者である、お前さんのランクアップさせろと上からのお達しだ」
張り紙にはそのようなことが書かれていたな。俺だけ丸太だもんな。
「そういう話なら、是非お願いします」
ギルドプレートを取り外し、オッサンにプレートを渡した。
オッサンが裏に戻ったタイミングで先ほど話た受付嬢が資料を持って戻ってきた。
「シノミヤ様がお話していただいた件ですが、ピエッツアという人が修繕しておりますね。この件に関してはこちらの方で調査いたしますので、井戸の修繕だけお願いできないでしょうか?」
この受付嬢は物分かりが早くて助かる。
「分かりました。ですが、商業ギルドから対策案も考えてくれと言われてまして……。多分、後で商業ギルドの人がやってきて対策案と修繕をって言ってきます」
「さようでございますか……。では、対策案と修繕をお願いできますでしょうか?」
「対策案はすでに宿屋ヒリュウ亭の井戸で実証済みなので、確認してもらえないですか?」
「分かりました。明日、もう一度ギルドへ来てください。確認ができて問題がなさそうであれば、他の井戸もお願いできないでしょうか?」
「分かりました。そのことをリーダーのアーノルドに伝えておきます」
話が終わったタイミングでオッサンが戻ってくると、オッサンは不思議そうな顔をしていたので受付嬢が簡単に説明すると、オッサンは後で細かい内容を報告するよう受付嬢に言い、受付嬢は頭を下げてほかの冒険者の対応を始めた。オッサンは意外と偉い人なのかもしれん。
「ずいぶん面白いことをやっているみたいじゃないか」
笑いながらオッサンは言う。
「笑い事じゃないですよ。子供のお守りをやっているほど暇じゃないんですよ」
「お嬢様の仲間になっているくせに言う台詞かよ」
「あの時とは状況が違うんですよ。ランクアップするまでの仲間だっただけでしたが、人生が長いエルダードワーフだったら、そのうちランクだって上がっているでしょ。俺はのんびりと暮らしたいだけですよ」
「そんなことを言っていると嫁さんを逃がしちまうぞ。もし暇だったら今から良いところを紹介してやろうか?」
「それは今度にしてもらえますか。今は少し忙しいのと、その『お嬢様』に会いたくないから身を潜めます」
俺は早々にオッサンのそばから離れようとした。カレンに見つかったら大変だからね。
「ちょい待ち、忘れもんだぜ」
そう言ってオッサンは何かを投げてきたので俺はそれを受け取ってみると、ブロンズプレートだった。そういえばギルドランクが上がっていたな。
俺はお礼を言って外で待っているアーノルドたちと合流したのだった。




