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第9話 新人冒険者訓練の件

 翌朝、少し遅めに目を覚まして頭を洗いに行くと、釣瓶式の井戸の紐が切れており水を汲むことができなくなっていた。

 昨日は屋台の串焼きを食べてから宿屋に戻ったため頭などを洗っていなく、できることなら体も洗いたかったが、こうなってしまってはどうしようも無い。

 宿屋の受け付けで井戸が壊れている子とを話すと、すでに知っているらしくギルドへ依頼を出しているとのことだった。

 あの程度なら俺でも直せると思いながら冒険者ギルドへ行き、カレンたちが居るのか入り口からさぐってみるたが、カレンたちの姿は無かったので、俺は安心しながら中へ入っていく。

 井戸の修理を出していると宿屋の人は言っていたので、その依頼があるのか探してみたのだが、依頼は見当たらない。誰かが依頼を受けたのだろうか?

 仕方がないので別の依頼を探していると、新人冒険者むけの訓練が行われると記載された張り紙を発見した。


「なになに……訓練期間は一週間で、成績優秀者は訓練終了後にランク一つアップ? どういうことなんだ?」


 一人で行動しているため独り言になってしまうが、ついつい言葉にしてしまった。


「それは貴族の偉い人からの申し出でな……」


 その言葉に振り返ると、俺が剣を売ったオッサンが立っていた。


「貴族……ですか?」


「そうだ、ここらの領地を(おさ)めている辺境伯からの依頼でな、新人冒険者がなるべく死なないようにしたいと仰有ってだな、Cランクのメタルプレートたちが教官となって、新人を鍛えることになったんだ。辺境伯が出資してくれることと、メタルプレート保持者が教官となってくれるなら、こちらとしてもありがたい話だからな、喜んで承けたわけだ」


 辺境伯?


「しかもメタルプレート保持者だけではなく、食事や宿、訓練場まで貴族様が用意してくれるんだ。ギルドとしては本当にありがたいよ」


 オッサンは嬉そうに話すが、俺は嫌な予感しかしない。


「山育ちでそこそこ動けるんだったら、お前も参加してみたらどうだ? もうそろそろ参加人数の上限に達してしまうぞ」


 たしかにこのステータスならCランクなんて楽勝だろうが、辺境伯が頭の片隅に引っかかる。だが、ランクアップすればゴブリン退治などの依頼を受けることが可能になるのは魅力だ。

 そんなことを考えながらオッサンの顔を見ていると、オッサンは少し気まずそうにして俺の前から姿を消した。何で気まずそうな顔をしているのかが引っかかり、俺は訓練を『受けない』ことを選択し、猪の肉を調達する依頼を受けてギルドハウスを後にした。

 町の外に出て気配察知で周囲に動物が居ないか探っていると、林がある方に気配を見つけて移動を開始する。

 昨日、宿屋に戻ってから改めてストレージ内を確認して、新しい武器を作成していたのだ。

 それは地球上で最強クラスの武器である『銃』だ。しかも作った銃はスナイパーライフルで、必中5と射程距離5を付与してある。

 ストレージから取り出してスコープを覗いてみると、ウサギが二匹草を食べていてこちらには気がついていない。まぁ一キロほど離れているから、相手も安心しきっているのだろう。

 その油断が命取りだ。俺は地面に寝そべりスコープを覗きながらトリガーを引くと、ウサギが一匹倒れる。それに気がついたもう一匹が、慌ててその場から離れていく。俺はもう一匹狙えないか試そうとしてみたのだが、ウサギは逃げてしまった。

 気配察知で獲物を探しながら仕留めたウサギの元へ行き、ウサギの屍をストレージの中へ仕舞い解体するのかメニュー画面に解体するのか聞かれたため、俺は「Yes!」と言いながら【はい】のボタンをおした。

 しばらくウサギ狩りをしながら林に近づいていくと、今日の目的である猪を発見したのでライフルで仕留める。これで依頼は達成だが、ほかに依頼があったような気がしてので追加で猪を数匹仕留めてから町へ戻った。

 ギルドに戻り依頼を達成したことを報告しに行くと、ギルドの受付嬢から少し待つように言われた。何かしたか少し考えたが、特に思いつかなかったのでランクアップでもしたのかと思っていたら、オッサンが眉間にシワを寄せてやってきた。


「依頼達成ご苦労さん……」


 怒られることをしたわけではないので俺は「ありがとうございます」と返したが、オッサンは一つ溜息を吐くと「こっちに来い」と言って、奥の部屋へ連れて行かされた。

 案内された部屋に入ると、オッサンは椅子に座るよう言ってきたので指示にしたがい、椅子に腰掛けた瞬間、何かが首を絞めてきた。


「だ、誰が!」


 驚きながら振り向くと、そこにはカレンが立っており怒りの表情で首を絞めていた。本気で絞めるのは止めて!

 カレンはもの凄い形相で「お前のために誰が……!」と言いながら、俺の首をへし折ろうと掴んでいる。俺はどうにかしてカレンの手を振りほどいて、カレンから距離をとった。


「ゲホゲホ……。何をするんですか!」


「何をするかだと! お前のために父上にお願いしてやったというのに!」


「ハァハァ……言っている意味が理解できない」


 俺が何をしたと言うんだ!


「――お嬢様はな、お前がランクアップするために今回の新人冒険者訓練を申し出てくれたんだよ」


 あきれた声でオッサンが言うが、話の意味を理解できない。


「どう言うことですか」


「今回の企画はな、全てお前のために仕組まれていたと言うことだ。察しろ」


「そんな無茶な!! お願いなんてしてないのに誰も察することなんかできねー!」


 言われなきゃ理解できねーよ!


「――募集した中でお前が久し振りの仲間だったのに!」


 もの凄い目でカレンは俺を睨み付けながら言ってくる。

 知らねーよ! 俺はのんびりとした生活がしたいだけだ!


「とにかく、明日からお前は新人冒険者の訓練に参加してもらう!」


 オッサンが腕を組みながら言う。勝手に決めないでもらいたい。


「受け付けは締め切ったはずですよね! 俺はのんびりとランクを上げたいのと、ゆったりとした生活をしたいんですよ!」


「お前が参加しないと支援金を打ち切ると言ってきているんだ! お前の意思なんて誰も聞いていない!!」


 俺が何を言ってもオッサンは首を横に振っており、俺はカレンに目を向けると、カレンは満面の笑みで俺を見ていやがったのだった……。

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