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「しゃ、社長!?」
慌てて社長室に飛び込んで叫ぶと、元トップアイドル『波多野まり』、そして伝説のVTuver『光コウ』の中の人でもある、リンライク現社長――光野晃がこちらを見てけらけらと笑っていた。
「配信中に視聴者置いて飛び出すのは駄目でしょー?」
「え、いや、打ち合わせとかしてませんよね!? どうするつもりなんですか!?」
「なんか見てたらちょっとコメント打ちたくなっちゃっただけなんだけど……」
悪気など一切なさそうな顔で返され、思わずこめかみを押さえる。虎尾さんの気持ちが分かってきたよ。この社長、マジで何なんだ。
「ちょっとって……一応リンライク社員ってことは誤魔化す方向性だったのに……」
「でもさー、最大手VTuverプロデュース企業の社員が実は個人でVTuverやってましたって、結構面白くない?」
「お、面白いと思いますけどぉ!?」
「ユーシさんの中にはみにえるをこうしたいってのが結構あったみたいだから口出しはしないようにしてたんだけど、エイト君は割と好きなようにやりたいタイプじゃん?」
「否定は、しませんが……!」
「ならやってみようよ、色々さ。ほらほら、戻って戻って。視聴者が待ってるよー」
「…………はいっ!」
社長が何を考えてるか、さっぱり分からない。けどそんなもの、誰でも同じだ。
俺は――父が、速水有志がどう考えて大天使みにえるに魂を吹き込んでいたのか、何も知らない。話したこともないし、聞いたこともないから。
それなのに、勝手に、許可も得ず中の人をやっているんだ。だから、今更何を怖がることがあるんだろう。
収録ブースに戻り、深呼吸してからマイクをオンにする。




