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モノクロの世界に

作者: アーヤ
掲載日:2023/03/25

※「モノクロの世界で( https://ncode.syosetu.com/n6049ic/)」のアナザーストーリーです。

 先に上記の作品を読了することをお勧めします。

「あーあ、また落ちたか」


 現在、真っ白なキャンバスを持っている成瀬凍夜。キャンバスには何にも描かれていないから、全く面白くない。


 今日も講義が終わって、人が少なくなった室内で頭を抱えている。

 そんな彼に、とっておきのプレゼントを持ってきた。


「おっ、困ってんね~」


 適当に声をかけてみると、彼はネコのように首を引っ込めようとした。手にはグチャグチャになった封筒と綺麗な紙が握られている。自分の大切な時間を奪われた、と言わんばかりの顔で睨みつける。


 まあ、私に反応してるんだから、このまま巻き込んでいけば、上手く丸め込めるだろう。さあ、巻き込むぞ。


「ねえねえ、これ行かない?」


 私は『シンデレラ』に出てくる魔女みたいに、チケットをひらひらと見せると、顔は怖いが、興味はあるようでチケットを受け取ってくれた。


「えっと、『モノクロの世界で』って何だこれ。真っ黒な紙切れに白い文字って……コレ、大丈夫か?」


 大丈夫だよ、と言いたいところだけど……ここで詳細を言うと、先入観が入ってしまう。ここは情報は何も与えず、なおかつゴリ押しで、一緒に行くように約束を取り付けるようにしよう。


 凍夜は上目遣いに弱いことを知っている。以前、ファッション誌で紹介されていたバッグも、ショーウィンドで一目惚れしたコーデも、ぜ~んぶ買ってくれたからね。


「うん。ほら、行こうよ」


 凍夜の隣の椅子に座って、また上目遣いしてみる。私の目をじっと見て、じっくり考えていた。


「はいはい、行くよ」


 やっぱりオチた。






「んー、まあ、おしゃれはしたいよね。一応、凍夜だって男子だしね」


 毛先をゆる~く巻いて、おしゃれして、完成っと。待ち合わせの駅前の広場に行くと、凍夜が立っていた。露出多めの明るい髪色の子に絡まれている。どうしたらいいのか分からなくて、何を言おうか考えているようだ。


「お、おはよー」


 私が近づくと、凍夜は軽く手を振る。


「ん? この子、友達?」


「え、いや……」


「あ、すみません! ちょっと道を聞いてただけなんです。教えてくれてありがとーございましたー!」


 そう言って、女の子は足早に去っていった。


「感謝しなよー?」


「ああ、うん。どうも」


「ほら、行こう」






 会場に連れて行って、チケットを見せる。可愛い顔のスタッフの人が担当してくれるらしい。この人、顔はかわいいけど、ネクタイはズレてるし、髪もおさげにしてるけど左右で高さが少し違うから、きっと大雑把な人なんだろうな。


 そして、この人は、私たちを白い部屋に連れて行ってくれた。


 ゴーグルをつけた後、私は体験内容を知っていたから思うがままに色を付けた。分かりやすく言うなら、ピカソみたいな『子供っぽい塗り方』をした。


 ゴーグルを外すと、スタッフの人がゴーグルを回収してくれた。そして、チラッと凍夜を見る。昨日は曇っていた表情が、今は晴れやかな表情になっている。


「好きなもの、好きなこと、好きな言葉。『好き』の全て。色を付けるのはあなた」

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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