赤ちゃんかえりとは、違うけど
赤ちゃんかえり、って言葉があるなら、うちの下はいま、コロナ前の年齢に遡ってる。
春休み前から少しずつギャアギャアが落ち着いたな、と思ってたら、今度は自信を喪失していた。
新しい環境になじめない(たんに制限されていた小学校時代しか知らない)
だから、戸惑ってる。まわりは馴染めるのに、うちの子には、マスク越しじゃない声がかなりこたえる音量なだけで、そのせいで、自分がまわりと違うと感じ始めたらしい。
よく口にするようになった。
ー◯◯はなにもできない。説明書通りにうまく作れない。
えっ?作ってたよね?
ママやねぇねーやYouTubeみたいに作れない。
ママもよく失敗して毎回、最初から組み直してるよ?
最後のいちばん肝心なパーツを切ってセロテープでくっつけたのは、記憶に新しい。
そしてなにより気になった。
ー◯◯はどうせできないから。
それはたしか去年、久しぶりにあった子から、きいたセリフで、あまりにあきらめた表情をしたから、言葉を失った記憶がある。
ひたすら発想をおばちゃんにはできないと褒めた。
ほんとうにできない発想だからだけど、信じてくれなかっただろう。
同じセリフをうちの下が言って気がついた。
ー成長したんじゃない。
ただうちの子には、伝え方が難しい。とにかく、できることを、楽しくできる遊びを。
ー欲しがったのは、保育園で遊ぶやつだった。
コロナ期に卒園式が短縮され、入学式も延期になった世代だ。
小学校すべての記憶と経験がコロナとともにある。下がコロナに感染して療養先のホテルに、無感染だったママが同伴したとき、下はたぶんママがうつたら、は、あったはずだ。
子供にずっと大人のひえたお弁当は辛かったはずで、願いを叶えられたのは、前からやりたがってたYouTubeアップだけだった。
下のためにアップしたYouだ。隔離先で当たり前に差し入れはいろんな制限があったけど、かなり子供だから、配慮してくださっていた。
お湯だけは沸かせたから、スープやインスタントに感謝してた。差し入れには制限があった。
うちは初日だけ高熱だけど、幸いに解熱剤がきいた。
いちばん怖くて仕方なかったのは、コロナであるかは、わからないけど、高熱による脳へのダメージだった。
うちの子はただでさえ、いまの医学ではわからないけど、おそらく小さな麻痺があると言われてる。また来年も手術をする。
生まれてからずっと下がみてる視界を、私たちはわからない。
下も正常な視界を知らないから、わからない。
上は三歳まで健康優良児だった。マイコプラズマ肺炎で抵抗力が弱ってた。そこから一気に発症しただけだ。
いまでも、
ー違う病院を知ってたら、その症状に正しい知識をいれていたら。
とは、思うけど、それは、あとからのおもいだけで、単なる後悔だとは、知ってる。
わたしのまわりには、同じ病気でもきれいに治る子の方が多い。インフルエンザとかは、代表的な例だ。
だからこそ、コロナは自分自身で判断すると決めた。
あんな後悔は二度といやだった。あまりに情報に振り回されてた、もある。
ー子供達はわからないが、一応ママは子供達を愛してるらしい。
自分より大切な存在ってなんだって?子供を産みたい動機の最大理由だった。
ただ不思議な存在で、いちばんわけわからないし、いちばん、理解してあげなきゃならない、のに、わからないから、なやんだ。
たんに、
ー親ならわかるはず。
いやわからないよ?経験ないから。
子供と一緒に学んでいくだけだ。だって経験ないよ?
って、いまならわかる。わかりながら、
ー言わせた。
ギャアギャアがなくなったというより、
ー自信をなくしたんだ。
ただ遡って、遊ばせ、褒めてる。
ーいまの子は大変じゃなあ。
って最近、老医師の言葉がリフレインするママがいる。
ママには他人の老医師がいた。
ー逃げ場があったんだ。
もっとゆっくりしたら、よかろうもん。なんでそげんかこつ、自分でおいつめなきゃ、いかんとね?ゆっくりすれば、よかろうもん。
注射してすぐに学校に戻らないといけないと思う背中にいつも声がかけられてた。
ーいまの子は大変じゃな。もっと、ゆっくりしてよかろうもん。
先生の方が絶対に大変だったはずだよ?
って思ってた。
ただリフレインする言葉がある。
ーいまの子は大変じゃな、もっとゆっくりしてよかろもん。




