蓮
僕はソファーでうたた寝をしている、僕の世界でただひとり、特別な妻をみる。
僕らの間には、違う共通の特別な宝物がもう存在するけど、妻の真央は、やっぱり僕には違う宝物だ。
よく後輩は、
ー柴原(真央の旧姓)は、俺の国宝!
そう言うけど、真央を宝物とは言わない。
後輩には、後輩の宝物がいるからだ。
そしてその子は、きっと真央にも大切な宝物だろう。
ー神城明日菜。
国民的スターの彼女は、真央の中学時代からの親友で、後輩の初カノで、遠距離恋愛をへて、いまは奥さんになってる。
はじめて真央からきいた時は、
ーすごく困った。
うちの祖父が大ファンで、あれは、もはや恋だと思う。
それくらい大ファンだったから、会社の広告は見送られた。
ーあいたいが、ふつうのファンとしてあいたい。
まあ、その夢は、叶ったような?叶わなかたような?
ー孫に相手してもらえなくなった、おじいちゃん、みたいにも見えた。
孫もわりとシビアだ。
そんなことを思い出しながら、僕は新しいハーブ系の石鹸で手と腕をよく洗う。
タオルできれいに拭き、洗面台の鏡をみる。
ージャングルの王がいる。
後輩は僕の名前、池蓮をもじって、ふざけてるのか、本気か、イケメン先輩と僕をよぶ。
真央もそうたまに呼ぶが、真央は誰がみても美人で、じつは後輩の方がイケメンだ。
ただ、このふたりについては、
ーどうでもいい評価。
らしい。真央の場合、服を選んでコーディネートは、実は義母や姉、だったりする。
後輩は休みの日には、同じような服装をしてるから、
ー服の機能なら、着心地。
色すら選ばない。その事実を彼女のご両親には、コロナで会えにいけず、福岡にいた義姉にきいた時は驚いた。
どうりでプレゼントにも、無頓着だったはずだ。
歴代の彼氏からもらったプレゼントは、そのままひとつの箱にまとめて、実家に送ってる。
気にいってるなら、使うだけ。
って言うわりに、僕の前の元カレからのプレゼントを使用した所を見たことがない。
ープレゼントの意味がわからないから。
そう義姉から説明された。
昔から貸し借りがわからず、トラブルになる。
かして、あげる。
が、理解できなかったらしい。
あげるなら、くれた、と思うけど、相手はかしてる。
だから、わからないらしい。実際に元カレは返して欲しいと言うヤツもいたらしい。
真央が欲しいわけじゃなかった。相手の気持ちで、ただ、真央は受け入れただけ。
真央は、ねだったり、してないんだけどね?
平気そうに見えても、真央の世界は、その繰り返しで、時々、真央も後輩も、
ー疲れ切った無表情になる。
もともと真央も後輩も、あまり口数は多くない。
まあ、うちの課でよく話すのは、僕や課長、係長だ。
いつも僕らが話をしていた。真央と後輩の表情で、僕たちは見ている資料なんかを見直す。
ー嘘発見器、みたいな感じだ。
はっきり否定するほどじゃなく、けど、たぶん、違う意見だ。
そのまま進めていく事が多いけど。修正は途中でするけど、うちは外資だから、とりあえず進めていく。
いつまでも議論ばかりじゃ、前に進まない。
最初から、成功なんて、ありえない。
それがわからないほど、
ー楽観主義、じゃない。
いつまで経っても、前には進まないし、進まない事には、成功も失敗もない。
僕の知る限り、ここまで、政治のトップの入れ替わりと、政治家たちのむだな足の引っ張りあいが、災害時ですや激しい国が、経済発展をするんだろうか?
とは、思うが、僕自身は国籍が違う。
いずれは、選ぶだろうけど。いまの日本を僕の宝物は、えらぶだろうか?
そう思いながら真央を抱き上げたら、
「ジャングルに帰る気ですか?先輩」
…僕の国籍に、ジャングルはない。




