SS 生徒会
とある日。
私は生徒会室の前で、ドアを少しあけて、中をのぞく女子生徒を数名見つける。
手には差し入れらしいラッピングされたお菓子がある。
ー女子、数名。
下級生っぽいから、誰が目当てかは、わかった。
ー見た目は、いいもんね?
納得はするけど、
ー見た目は、いい。
ー中身は、あれは、人によりけり?
繰り返すが、見た目は、いい。
中身は、人によりけりだ。
ちなみに生徒会に入り浸りだけど、生徒会役員ではない。
ただ使い勝手がいいし、まあ、生徒会のとある女子の金魚のふん、みたいについてまわってる。
というか、連れて、歩いてる?
ー首輪ないのに、飼い主にぶんぶん尻尾振ってついてまわる犬を思い出す、
…飼い主だけに、尻尾ふる?かな。
飼い主以外が触ろうと近づいたら、ジリジリと後ずさりそうな子だ。
ー尻尾ふりながら、後ずさりそう。
その過去になにがあったかは、しらないし、飼い主もまったく違うようで、よく似てる。
私は女生徒たちに、バレないように距離をとり、中をのぞく。
そこには、ぐっすり眠る、犬、じゃなく、
ー村上春馬がいて、その脇で飼い主の柴原真央が本を読んでる。
本というか雑誌かなあ?
私もよく買うファッション誌だ。少し不思議に思うけど。
ー真央は、あまりファッション誌に興味あるように、みえない。
けど、表紙がみえて納得する。彼女たちの地元出身で、いまだに、
ー俺の彼女。
寝てる駄犬はそう吠えてる。どっちが持ち込んだかは、わからないけど。
その子が表紙だ。
真央は優しい目で雑誌をよんでる。
そして、ふと、眠っている村上をみた。
「ーまあ、いっかな?」
そうつぶやいて、スマホを手にとる。
「ーもしもし、いま、話できる?」
誰かに電話してる。
「そっか、忙しいね?ーうん、いや、いいけど、珍しいからさ?ついでに起こしてよ?」
そう言って、村上の耳にスマホをスピーカーに切り替えて、おしつけた。
スマホから、優しい声がする。
ーもしもし?春馬くん?
けど、村上はぐっすり眠ってる。
真央があきれた。
「寝てる」
ー春馬くん、一回寝ちゃうとなかなか起きないかも。
「おお!さすが彼女。寝顔は、見慣れてる?」
ースマホ先で、寝落ちしちゃうだけだよ?知ってるくせに。
ちょっと、すねたその声に、同性として、私は感動すらする。
ーいるんだなあ。こういう自然に可愛い子。
話ぶりから、遠距離恋愛の神城明日菜に似た子だろう。
ーあっ、よばれた。またね?真央。
「うん、またね?ちなみに村上の寝顔いるなら、送るけど?」
ー…いらない。だって、真央のスマホにとるんだよね?
「おくったあとデリートするよ?」
クスクスと真央が笑ってる。
「貴重だと思うけど?学校での村上の寝顔だよ?ちなみに私は、いま、となりで生でみてるよ?いまさら、めずらしくないけど?」
ー意地悪!あっ、すいません。いま行きます!真央、ごめん、バイバイ。
そうスマホが一方的にきられて、真央は、肩をすくめた。
そして勝手に机にある村上のスマホを手にとる。私たちもよく連絡する村上のスマホは、一応、ロックしてるはずだけど。
「ー相変わらず、ぬけてるなあ」
って、真央はスマホをいじって、カシャと村上の寝顔を撮った。
そして、メールで送信して、
「…デリートかあ」
どこかやるせなさそうに、スマホを操作すると、そのスマホで軽く村上をこずく。
村上はすぐにハッとして、起きた。
「あれ?柴原?」
「それだけ目覚めいいくせに、なんで、肝心な時に、はずすかなあ?」
「それが俺だ。って、いきなりなんだよ?」
「お客さんだよ?」
「へっ?」
「ついでに会長も、のぞく暇あるなら、会計報告書にサインください」
ーバレてたらしい。
とすると、あの電話は、わざとかあ。
後輩たちがどことなく、落ち込んでる。
私は不思議に思う。
ー真央はあんまり、他人にかまうタイプじゃない。
自分から敵に寄ってくタイプじゃない。
ー来るもの拒まず、去るもの追わず。
そんな真央が守りたい存在は、
ーだれ?
そう不思議だった。




