家の鍵を閉め忘れたとある大学生の話
私は、跳ね起きた。時計を見ると、午前九時。一限はすでに始まっている時間だ。歯磨きも顔洗いも割愛し、最低限の荷物だけを持って家を飛び出した。パジャマの上からそれっぽい服を羽織った、ほぼ着の身着のままスタイルだ。
アパートの脇へ回り、ハンドルの部分にかけてあるヘルメットをかぶり、原付のエンジンをかける。しかし、鍵がどこを探しても、見当たらない。私は青ざめた。実は、私は遅刻常習犯である。今日の授業も遅刻してしまうと、単位が危ない。必修なので、進級も危ない。
家の鍵と原付の鍵は一緒にしてあるため、原付の鍵がないということは、家の鍵もないということで、それは家の鍵もかけ忘れている、ということになる。素直に白状すると、私は、戸締り忘れ常習犯でもある。このあまりにも痛すぎる時間のロスに、私は歯噛みしながら自分の部屋へ戻る。
ドアノブは、動かない。部屋の扉にはしっかりと鍵がかけられていた。