誰かに似ている自分になりたかった
誰かに似ている自分になりたかった。
漠然とした憧れの中で生きてきた。
形容詞だらけの世界で、はっきりした名詞もなく今を生きている。
独りぼっちは嫌だ。誰かといるのも嫌だった。
一人でいる午前4時、自分はどういう人間なのか考えてしまう。
その時間に答えなどありはしないのに。
歌いだすと止まらなくなる。自分の言葉ではない歌を歌う。
誰かは自分の気持ちを知っている。自分がまだ知らない間に。
まだ存在しない何かを探している。
そんなものはあるのだろうか。
首を鳴らす音が妙に心地いい。寝違えて痛いときもある。
机に飾った花がしおれて、ドライフラワーになるのを待つ。
葉っぱだけが元気。もう水は変えない。
終わらない課題、問題、責任に内なる辞書を捨てる。
新しい辞書を入れて再出発。
窓際に葉書を貼った。美術館で買った葉書。
色あせてしまうと知りながら。
たくさんある今を見ないふり。
カーテン代わりの白い布。
自分で作った棚。
壊れないかなと見る。壊れるかなと触る。
先に壊れそうなのは自分のほう。
すでに壊れている気さえした。
気、があれば十分立証されている。
もう壊れてしまった自分を治す職人を目指している。
忙しくて鉛筆は丸いまま。
犠牲になったボールペン。
黒が嫌だからほかの色。
もうほかの他はない。
後戻りできないのは知っていた。
みかんが食べたかった。
剥くことは嫌だ。爪が黄色くなる。
チャンスはいつも逃げていく。
少しくらい遠慮すればいいのに。
逃がせば逃げる、正直者。
私はそんな人間にはならない。
なっている。