6「斉藤学4」
リングから降りる。
本当に眠い、足下がふらつく。多分それだけじゃない。死へのストレスも疲労の原因だろう。
「きゃー学くん、かっこいー!」「ねぇ、私といいことしない?」「えーずるいって! 学くんは私が狙ってたのに!」
なんだ?
いきなり女が寄ってくる。
「学くん、この体、好きにしたいと思わない?」「不細工は引っ込んでろ! 私はアイドルもやったことがあるのよ!」「年増が!」「えっとぉわたしぃ、17歳JKですぅ。処女ですぅ」「自称処女は処女じゃない」「援交で稼いでるのに処女とか」「ぶりっ子死ね」「えっと、私ミスコンなんだけど」
「一体何が起きているんだ……」
女の匂いとおっぱいに囲まれる。
誘惑に耐えながら聞いていると、どうやら『ライフ譲渡』が狙いらしい。
俺は今、3つのライフを持っている。
彼女たちは1つのライフしか持っていない。
First Stageを突破するためには、2つのライフがあればいい。
ということは……
「つまり援交狙いってことか」
そうやって言うと、否定する女たち。曰く、あのハゲたおっさん相手だったらこんなことしない。学くんがタイプだったからうんぬんかんぬん。
薄っぺらだと思った。
けど俺の脳は2徹でイカれている。
こんな誘惑に耐えきれるわけなかった。
「おい、そこのお前。お前を買ってやる」
「え、わ、私ですか?」
「そうだ、行くぞ」
少し離れたところにいた女の子の手を引いて、俺はその子を自室に連れ込んだ。
参加者にはそれぞれ与えられた個室がある。
ほとんどさっき振りの個室であるが、死線をくぐり抜けたからか、女の子がいるからかは分からないが、全く別の部屋のように思えた。
「はぁ……」
少しだけ冷静になって、自分が自分で嫌になった。
その子を選んだ理由は、雰囲気がなんとなく恵麻に似ている気がしたから。以上。
よく見ると、本当に雰囲気だけって感じだ。
「ごめんなさい! やっぱり私、初めては好きな人がいいんです! 実は、援交するつもりじゃなくて……ただなんとなく眺めただけなんです!」
「そうか」
「だから、帰りますね。また、会えるかは分かりませんが」
その子が援交狙いじゃないというのは、なんとなくそんな気はしていた。
「君、名前と番号は?」
「え?」
「いいから」
「川岸祐子、7840番です」
「そっか、じゃあな」
「え、あ、はい。えっと、じゃあね」
そう言って彼女がドアを閉めるのを見た。
その後、俺は、彼女の番号を入力し、ライフを一つ送った。
理由は……なんとなく恵麻に似ていたからだった。