2「斉藤学1」
その赤い手紙が来て、俺の日常は終わった。
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斉藤 学 様
あなたは『第一回 デスゲーム杯』に参加することが決定いたしました。
つきましては、2020年11月7日に係の者が招待に上がります。
諸注意として、上記日付より、貴方様は特殊人権放棄法、通称『月一デスゲーム法』の対象となります。抵抗をなさるのは賢明ではないことを、先にお伝え申し上げておきます。
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何度読み返しても変わらない。自分の名前が書いてある。
「はぁ……」
ため息をついて俺は、その赤い紙を投げ捨て、ベッドに潜り込んだ。
この行動も、もう何度目か。
「はぁ……」
※
「学、今日学校来なかったみたいじゃん。お~い、起きてる?」
「……今起きた」
いつの間にか寝ていたようだ。
気がつくと、幼馴染の増井恵麻が、いつものように遠慮なく俺の部屋に入ってきていた。
「……何しに来た」
「何それ! ひどくない? 人がせっかく心配して来てあげたのに」
「……」
恵麻は俺の布団をバサッと取り上げる。
「……何するんだ」
「風邪をひいてたわけじゃなさそうね。ズル休み?」
「……」
俺はまた黙る。
視線を下げていると、制服姿のJK恵麻の生足が目に入った。
「元気なさそうね。でも風邪ではないんでしょ?」
「……そうだな」
「どうしたの? いつもの調子じゃないじゃん」
「……まあな」
「そうだ! 知ってる? 昨日ついに『デスゲーム宣告状』が配られたらしいよ! 貰った人は明日に集められて、明後日からついにデスゲームが始まるんじゃないかって――」
楽しそうに話す恵麻を見て――
――俺は感情が制御しきれなかった。
ぐわんぐわんと、熱量を持った感情が、心の中でうねった。
「……ま、学?」
恵麻の少し怯えたような声が聞こえた。
俺の両手が、恵麻の女の子な両肩を強く握っている。
恵麻が怯えるのは当然だろう。
でも、やめるつもりはなかった。
――明日、死ぬかもしれない。それならいっそ……
「恵麻って意外といい体してるよな」
この無防備な幼馴染に男の怖さを教えてやることにした。
※
次の日、ぞろぞろと黒服の男たちが家の前に現れた。俺は抵抗しなかった。そんな権利は、もう既になかったから。
昨日恵麻にひどいことをした。
恵麻は泣きながら、帰って行った。
甘美だった――それ以上に、心がつらかった。
黒服に拘束された俺は、目隠しまでされたまま、ずっとどこかの道を走っていた。途中で真っ暗闇の中、別の場所に放り込まれ、また運ばれていった。正直人間の扱いじゃなかったと思う。
でもそれが俺にはちょうど良かった。
昨日からずっと寝ていない。