16「伊南悠2」
気がつくと寝ていたようだ。
スマホで時間を確認する。
『残り21:08:31』
開始から3時間くらい経っている。
今も、残り時間はどんどん減っていく。
外に出てみることにした。
○×ゲームの会場に足を運んだ。
やっている。
いろんな人が、互いの命を懸けたゲームをしている。
その一つを覗いてみる。
【盤面】
☆○イ
回×☆
×○○
ちょうど引き分けが決まったらしい。
盤面を見るが、☆とかイとか、どういうことだろう?
今更ながらに、ルールを見ていないことを思い出した。
僕は近くにあったベンチに座り、ルールを確認することにした。
……なるほど、マークは○と×だけじゃないと。
その上、先攻なら○、後攻なら×なんて縛りもないようだ。
そこは理解した。
でもこのゲーム、どうやってクリアするんだ? そもそも――誰かを蹴落として、自分が生き残るなんてやる意味があるのだろうか、そんな風に思った。
他人を傷つけないように、ずっと生きてきた。
なのに、他人を傷つけ殺してまで生き残ったとしたら、それは本当の意味で僕じゃない気がした。
そんなことを考えながら、ルールを確認していると――
――――――パン――と発砲音が聞こえた。
遠目で倒れた人が目に映る。
まさか……
その方向へと行ってみる。
やはり、死んでいた。
真っ赤な血を流しながら、動かない。
うっ……と気分が悪くなる。
こんなの見ない方がいい。つらいだけだ。
なのに僕は目が離せなかった。
そこに、男が一人やってきた。
死体の傍に座り、漁り始める。男は死体から何かを抜き取った。
「――なんだテメェ」
男はそれだけ言って、去って行った。
しかし僕は男の手をしっかりと見ていた。
ゴム手袋をしていた。
スマホを持っていた。
僕は元にいたベンチに戻った。
そして、今一度ルールを読み返す。
「……そうか」
気付く。
死体のスマホには、ライフが残っている可能性があることを。
スマホは他人でも使えるかもしれないということを。
そして――死人のスマホからライフを譲渡できる可能性に。
「僕もそうしよう」
僕は死体を探すことにした。
だって、この方法なら人を傷つけることはないと思ったから。