11「河野英善1」
私は天才実業家、河野英善。
御年46歳、ダンディーな独身貴族である。
私の人生、すべて成功してきた。
それがつまらなくなったのはいつからだろうか……
不満はないが、満足もしていない。
そんな時に、『デスゲーム宣告状』が届いた。
――この河野英善の人権を剥奪するだと!?
頭にきた。
多額の税金を納めてきたこの河野英善に、そのようなこと。恩を仇で返すという次元ではなかった。
だが、流石の河野英善と言えど、一国家相手にどうこうできるわけではない。
――まあいい、最近は刺激が足りなくて、飽き飽きしていたところだ。愚民共と戯れてやるのも、悪くない。
冷静になって、事実を受け止めてみると、思ったより前向きに捉えられた。
自宅に黒服がやって来た。
視界のない中、長い距離、運ばれた。
与えられた個室は狭かったが、意外と安物は使っていなかった。
一同に集められた私たちは、圧倒的な若さで総理となった謎の少女から、説明を受けた。
そして――First Stageが始まった。
まず私はルールを頭に叩き込むことにした。
自室に戻り、スマホを真剣に読んでいく。読んで、考えて、読む。
大丈夫だ、First Stageは24時間ある。
この河野英善ならば楽勝だ。
そう言い聞かせながら、1時間ルールを読み込んだ。
会場に戻りさらに1時間、観戦をする。
観戦しているのは、1試合当たり数人程度か。多くとも20人は超えない。
ゲーム開始から2時間。
参加者たちは○×ゲームについて理解が深い奴しか残っていない。
もっと早い段階でエントリーしていれば、理解の浅い奴を狩ることが出来た。
でも別に良い。それは問題ない。
ビジネスでもそうだが、先行者利益があるのは当然のこと。
ただし、この河野英善、死んだら終わりのデスゲームでリスクを取ることなんてしない。
ルールを読み込み、それが正しいか、たくさんの観戦を行い、検証した。
そうして気付く。
○×ゲームに対して、参加者は皆一様に理解が深い。
一方、First Stage全体というデスゲームに対しては――
――あまりに理解していない者が多すぎる。
私はその一部の者たちを見た。
まだ20にもなってないような女の子二人組が、手を合わせて、楽しそうに喜び合っている。
――察するに、“錬金術”の使い手か。
このゲームに存在する錬金術。
一人では決して出来ないのが難点ではあるが、そこさえクリアできれば無限にライフを増やすことが出来る。
――是非、英善カンパニーの一員になってほしいものだ
私は思った。
高校生の身で気付くとは、なかなかに見込みがある。
英善カンパニーでその才を磨けば一流になることだって夢じゃない。二人がデスゲームを突破できることを祈ることとしよう。
私、河野英善は紛れもなく、一流の人間である。
一流とは何か――○×ゲームでどうやって勝つか、という思考をしている時点でそれは三流だ。
目的はFirst Stage突破なはずだろう。間違っても○×ゲームで勝つことではない。
しかし現に『First Stageというデスゲーム』についてのプレイングをしている者はほとんどいないようにも見受けられる。
さて、河野英善による、リスクゼロの攻略法をお見せするとしようか。