10「天笠愛翔4」
私は、始め、祐子からその説明を受けたとき、耳を疑った。
頭がおかしい。
明らかに狂った方法だった。しかし――
祐子の言った必勝法。それは――信頼し合う二人じゃないとできないが、互いに信頼していれば、最強の方法でもあった。
私はライフを祐子に送った。
「ほら、死なないでしょ?」
「確かに」
自分の命に等しいライフを送った。
スマホに表示された私のライフ数は、0と表示されている。
確かにルールにはこう書かれていた。
(ルール引用)
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・どのようなタイミングであれ、所持ライフが0となった場合プレイヤーは死亡する。
~~~~~~~~~~~~
しかし、その下にこう書かれている。
(ルール引用)
~~~~~~~~~~~~
・以上が○×ゲーム内のルールである。
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そう。別に○×ゲームをしなければ、死なない。
ただ、First Stageが終わるまでにライフを2つ獲得しないといけないのは事実。
ライフが0の状態で、○×ゲームに参加したら、参加した瞬間に死ぬ。
なので、ライフを0にする行為は実質的に自殺となんら変わらない。
ただもし――信頼し合う相手がいれば、別だった。
ライフを2つ持った状態でも、他人のために自分の命のリスクを冒せる人間。
それは私の目の前にいた。
川岸祐子、自分の命に等しいライフを削って私を助けてくれた命の恩人。
私は躊躇しなかった。
必勝法は30分もせずに完了した。
祐子は○×ゲームに参加して、2連続引き分け。しかしその意味は、私の連続引き分けとは、全く違った。
私のスマホには、ライフ数2と表示されている。
祐子のスマホにも、ライフ数2と表示されている。
「引き分けになれば、元の状態に戻る。それはプレイヤーだけの話」
祐子は言った。
「愛翔が○×ゲーム中に受け取ったライフは消えていた。なら逆が発生するのは当然のこと。ゲーム中に送ったライフは――プレイヤー視点では戻るのに、受け取った参加者視点では消えない」
一戦目、祐子がライフを1つ私に送った。
すると、祐子のライフが1、私のライフが1になる。
この状況で引き分けると祐子のライフだけが戻る。
よって、祐子のライフは2に戻り、私のライフだけが1つ増えている。
2戦目も同じことすれば、ともにライフが2つになる。
祐子は頭を下げる。
「ありがとう、私を信用してくれて」
頭を下げるべきは私の方なのに――
「それは私のセリフだ!」
私は感謝を伝えたい。
「本気でありがとう! そんでもって、一緒にデスゲームを突破するんだ! 元の日常に戻ったら、祐子の欲しい物は好きなだけ買ってやる!!」
「うん、私も愛翔と一緒に突破したいよ」
祐子は言う。
「だから特訓しようね。愛翔は地頭は良いのに、こういうゲームに対する考え方が分かっていないから――」
――このままだと、100人の中に入れないから。
と。
そして私の地獄の特訓は始まった。