1「非日常の始まり」
前から書きたかった魔法なしのデスゲーム物。
文字数はギリギリを狙っています。
よろしくお願いします。
その日、日本に衝撃が走った。
「えー、私が神です。はい」
見慣れた総理大臣の隣に、全く場違いな、年端もいかぬ少女が立っていた。
「私、神なので――」
少女は可愛らしい声で言う。
「――総理大臣やろっかなって思うんです。はい」
あまりに意味不明すぎる宣言だった。
神が冗談だとしても意味不明だ。
そもそも日本の法律では25歳以上じゃないと総理大臣にはなれない。
少女はどう見ても高校生……下手したら中学生という年の頃だった。
「で、所詮ひょーめー演説? だっけ?」
隣の総理が、「所信表明演説です」と小声で言う。
「そうそう、初心表明演説ね。総理大臣ってみんなそれやるらしいじゃん? だから私もやっておこっかな~って思うわけ……です、はい」
少女は言う。
「私、思うんです! 日本って何かつまんなくない!? って。私生まれてきて16年になりますけど、抑圧されてる感じ? 分かる? 平和なのはいいけど、平和すぎてもつまんないでしょ。みんなも……皆さんもそう思いますでしょ? ね?」
少女は、冗談みたいな感情論をぶつけてくる。
というか、神じゃなかったのか。16歳って……
なんて思った奴は俺以外にも死ぬほどいると思う。
――けれどあれから一ヶ月経った今、少女の発言は冗談とは捉えられてない。その一言一言から意味を見いだそうと、専門家が分析している。
「――だから私は考えました! ドン! 『月一デスゲーム法』です。はい。一ヶ月に一度、最大1万人の人権を無視できるっていう素晴らしい法律です。はい」
そして、『月一デスゲーム法』は施行された。
真っ赤な手紙――『デスゲーム宣告状』が日本中1万の家庭に届けられた。
俺の家にもそれは届いていた。