5話
フレッドが威勢よく
「こうなったら全員で新人歓迎会するぞ!!」
と言った。どうやらこの街のギルドは此処ともう1箇所あり、ほとんどの冒険者がそちらに流れ込むため、このギルドの収入の為にも、ギルドを盛り上げて人を呼ぶためにも新人が来た時は歓迎会をするらしい。
奢ってくれると言うのならせっかくだし、とフレッドに乗せられることにする。
全く金もないし、こういう時に食べさせてもらわないと今後生きていけないだろう。
酒に酔った冒険者が僕にウザ絡みして来る。
人に話しかけられたらどうも逃げることができない僕は適当に話に合わせて彼らと会話をする。
ほとんどの内容は能力やフレッドの話。フレッドはこの辺りでは有名な冒険者らしく、とても強く、気のいいことで有名だそう。
何故仲がいいのかと問い出された。
いやお前らはあいつの元カノか!!!
正直分からないことを聞かれても困るだけだ。
正直言って滅茶苦茶疲れるし。自分の悪いところだ。
同級生に仕事を押し付けられていたのもこれが原因なのだと改めて実感した。
僕はこの世界に来ても変われていないらしい。そんなことを思いつつ、適当に受け答えする。
そして。
「お前あの女と仲良いのか?そうじゃなかったら近づかない方がいいぜ、あの女........」
「おっと、そこまでだぞお前ら」
フレッドだった。
「宿も取っておいた、アストはとりあえず今日は休め」
正直、少し助かった。あの女、とはシトラの事だろう。なにを伝えようとしていたのか気になるが、少しフレッドの顔が険しいように感じ、口を出すのは辞めておいた。
よくよく見ると、ギルドの中にはシトラの姿が見られない。
「なぁフレッド、シトラは?」
恐る恐る聞いてみると、
「嬢ちゃんの事か?嬢ちゃんなら外で休んでるぞ、中が静かになったら入ってくるって」
なるほど。最初出会ったところが森の中だったのはシトラが静かなところが好きだということなのだろう。だからあそこにいたのだ。
「宿までほんとありがとう」
「いいってことよ。どうせ今度から俺も仲間になるんだし」
こいつはどこかちゃっかりしているなぁ......そんな事を思いつつ。
「部屋は上だ。さっきの受付嬢が案内してくれっから」
「ありがとう」
改めてあいつはお人好しだな、と少し心配になる。破産しないように、とさっきの酔っ払いに逆に絡みに行くフレッドの背中を見つめ、受付嬢に部屋まで案内してもらった。
不思議とこの世界では死にたいという感覚が薄れているように感じる。いや、もしかしたら1度全てを崩したからだろうか。
またここから積み上げていく。といっても人に頼られるような人になろうとは思えない。
でも、僕に優しくしてくれた2人のことは助けたい。
矛盾だろう。でも、それが本音なのだ。久しぶりのわがままなのだ。どこかこの世界に胸の高まりが抑えられないでいる自分がいるのだ。
ずっとフレッドに頼る訳にもいけない。何か自分で出来ることを探そう。
それがいつか、2人への恩返しになるのならば。