3話
近くにある街に連れていってくれるらしく、森から歩いて外に向かう。その間に元の世界の話を教えてくれ、とせがまれた。
あまりいい思い出は無いのだが。そう思いつつも自分の居た世界を「まるで素晴らしい場所」のように彼女に説明するとほぉっと目を輝かせた。
そりゃそうだ。自分と違う世界の話なんて普通じゃ聞けないだろう。僕も全く聞いたことがない。
「とても素敵な場所なんだね」
「......うん、その通りだ」
全く自分には合わなかった世界だが、こうやって話してみると悪い所はあまりない。悪いのは人間の中身だ。
自分に言い聞かせていると、シトラが顔を覗き込んできた。
「顔色悪いよ、大丈夫......?」
どうも観察力の優れた少女だ。気づかなくてもいい事にも気づく。しかし、不思議と嫌だと感じなかった。
「ちょっと昔のこと思い出してただけ、大丈夫!」
そういって胸を張ってみせる。あながち間違っていない。どうせあの世界から僕は消えた。昔と言っても過言ではない。
シトラはそう、と言い、それ以上なにも聞いてこなかった。どうやらよっぽどしっかりとした教育をされてきたようだ。一緒にいて安心できる。
しばらく歩いていると、石でできた道に入る。よく整備された道だ。街は近いのだろう。
街まで入るとシトラはフードを深く被り、どこか怯えているようにみえる。
たまに歩いている人が見られるが、こちらを不思議なものを見るような目で見てくる。
恐らく服装だろうとは思った。周りはThe冒険者といったなりをしている。対して僕はブレザーだ。こんな動きにくそうな格好で森から現れるんだ、そりゃ不思議だろう。
シトラはこっちこっち、と行き場を示してくれる。ついて行くとそこには他と比べて頑丈そうな、レンガ作りの建物があった。
「ここが冒険者ギルド。登録すれば簡単な安全の保証がして貰えるよ」
シトラはそう早口で告げると、早く、と言わんばかりに僕の腕を掴み、冒険者ギルドの木製の大きなドアを開けた。