13話
シトラがナイフで人差し指を切りつけ、ドラゴンの核をなぞる。すると、例の能力解析のときに発したのと同じような眩い光がシトラとドラゴンを包んだ。その直後。
紫に濁っていた宝石が綺麗な黄緑色に変わった。
「ねっね?綺麗でしょ?」
「すごい......」
ドラゴンは大人しくへりくだった態度を取っている。まあ主人に抵抗すればほぼ死ぬんだしそりゃそうだろう。シトラは嬉しそうに頭を撫でている。うーん、美少女からのなでなで。ペットの特権。羨ましい。
「にしてもアストすげーじゃん、よく逃げなかったよなお前」
「正直死を覚悟したよね、あはは......」
フレッドに笑いながら笑い事じゃねーんだわ!と背中を叩かれる。お前も笑ってんじゃねーか。ずしっと背中に広がる感覚。地味に痛いがそれを受け入れている自分がいた。
もしかしたら、死ねるとか思っていたのかもしれない。
でも、そんな勿体ない。やっと自分を理解してくれるかもしれない人達を見つけたのだから。だから抵抗したのだろう。
口元が緩む。もしかしたらこいつらとならやっていけるかもしれないという思いが強かった。
「まあ、結果良ければ全てよしって訳だな、ところでだがさっき核は宝石だって話をしたろ?」
「う、うん。突然だな」
「これは生きていくためのポイントだからな。お前平和ボケしてるし、魔物殺すのも初めてっぽいし」
「痛いとこつくなぁ、その通りだけどね」
そこまで言うと聞いて驚け?と何故かドヤ顔のフレッド。
「魔物を倒すと必ずアイテムが落ちる。そのアイテムだが、えーと」
とフレッドはなにやらゴソゴソと地面を漁り始める。すると横から「キュビィ!!」と先程のドラゴンが顔を出してきたので反射的にフレッドの後ろに隠れてしまった。
「おい何やってんだお前、そいつはもう手ェ出してこねっつの」
「いやだって怖いもんは怖いし......」
そりゃあロマンはあるさ。だってドラゴンだよ?恐竜だって見てみたい。でもリアルと妄想は別物だ。グッとドラゴンを睨むとちろり、と舌を伸ばしてきた。
「ねぇフレッドやっぱこいつ僕のこと食べるつもりだよどうしよ」
「なわけねーだろ......ん?」
何かに気づいた様子でフレッドはドラゴンに近づく。そしておもむろに舌を掴んだ。
「ちょ!?フレッド何して!?」
「まーまー、落ち着け」
そう言ってこちらにさしだしてきたのは小さな小さな紫の宝石だった。舌を掴んだのではなく宝石を掴んだらしい。唾液でグチョグチョになっている。よく触れるなこいつ。
「ドラコに探してくるように命令したの」
「そんなことできるの!?てかドラコってなに?」
「そのドラゴンのことだよ?」
そう言ってシトラはドラゴンを撫でる。なんというか......ドラゴンを好んだりネーミングセンスといい、どこかズレている気もするが知らないふりをしておこう......
「これは魔晶石っていうアイテムで交換すると金になったり、魔法の補助に使ったり。まあ色々できる。基本はこれ以外のものといえば素材になる動物の皮とか肉とか......爪や牙、骨なんかも使えるな。まあスライムだし他は基本的に落ちないけど」
「ふーん......武器とか鎧手に入ったりしないの?」
そう言うと「は?」と言わんばかりのジト目でこちらを睨み、
「もちろん装備してくるタイプの魔物なら落ちるが丸腰の魔物が武器なんて落とすわけないだろ?」
「ウーン、ですよね!!!」
落ちるわけないないだろう?、と言われる。ゲーム脳でいくと身を滅ぼしそう。勉強した。