10話
「魔物っていうのは呼び名に魔ってつくだけあって魔力を体内に貯蔵している。まあつまり、お前が攻撃して接触する事でアイツらの体内の魔力を消し飛ばせるって算段だ。」
僕は今、フレッドとシトラと共にだだっ広い平原に来ている......と言っても、自分たちが寝泊まりした宿から数分のところにある場所だ。
後々聞いた話だが、宿がある町はへレードという地名らしい。不思議なことにこの世界の言語は通じるのに文字は読めないのである。不便なものだ。
とまあ、その事はいいとして。この平原はフレッド曰く、初心者のレベリングには丁度いい場所、らしい。雑魚スライムしか出ないとか何とか。
「まあ、ここはそんなに強い魔物は出ないから安心しとけ。殆どはスライムだから」
「それをフラグって言うんだよなぁ」
「??フラグ?」
「いやこっちの話!!!」
頭にはてなを浮かべるフレッドとシトラを横に、殆どは、と言う言葉に引っ掛かりを覚える。
つまりは低確率だが何かしら強いものが出る可能性があるという訳である。フレッドとシトラからしたら倒せる範囲かもしれないが、何より僕は丸腰同然である。正直スライムと渡り合えるかすらわからない。
うーむ、と1人で唸っていると、「アスト、あれあれ」とシトラが何かを指さしている。
透明で、様々な色合いの謎の丸っぽい何かがそこにはいた。
「あれがスライムだよ。色ごとに属性が違うの......って、これはアストからしたら関係ないね」
形容するならゼリー。それに楕円の目がついている。正直かわいい。
「えっ!?あれ倒さないといけないの!??」
「そうだけど......もしかして気持ち悪いか?」
「あーいや、そうじゃなくて......」
えーい、ままよ!と心の中で謝りながらスライムに近づき、短剣を刺す。ジーザス。
すると刺した瞬間は弾力を感じたものの、直後には空気が抜けるように縮み、最後にはでろっと謎の液体が短剣につき、スライムは消滅した。
......前言撤回気持ち悪い!!!
うっと顔を顰めるとシトラが「大丈夫?」と心配そうに見つめてくる。それなりに大丈夫ではあるがなかなかに視覚情報がグロテスク。
溶けた砂糖のようにドロドロと剣についたスライムの体液(?)を適当にその辺に生えている草で拭い、短剣の切れ味を確かめる。しっかりと研がれているようでするりと葉を切る事ができた。
これを続けるのか......とも思ったが、何より回数を重ねればきっと慣れるだろう、というか出てくるのが真っ赤な血とかじゃなくて良かった、と心のどこかで感じた。
と、その時。ザァッと強い風が吹いたかと思うと、
「伏せろアスト!!!」
というフレッドの声が聞こえた。その瞬間シトラに屈めと言わんばかりに頭を下に押さえつけられる。何が起きたのか分からず、強風の中薄く目を開ける。
驚愕するのと同時に、「だからフラグって言ったじゃん」、と心のどこかで思った。そこに居たのは所謂、
ドラゴン、だった。