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天才に雨を  作者: 有泥
9/15

驚いて

 誰も一言も話さず、それぞれ帰っていった。宮嶋もふらりと帰ろうとして、部室の鍵を閉めなくてはならないことをハッと思い出し、部室に戻り、鍵を手に取り、鍵を鍵穴に挿すと、ぼうっとした。鍵を挿したままの手を見つめながら、ぼうっとしていたら、硬い手に肩をぽんと叩かれた。

「宮嶋君。」

 深谷先生が穏やかに微笑んでいた。

「あの、なんで今日、一回も僕は注意されなかったんでしょう。」

 宮嶋は自分に問いかけるように言った。宮嶋は深谷先生を認識していなかった。

「宮嶋君は十分上手でしたよ。」

 なだめるように深谷先生は言ったが、宮嶋の目を見て、落ち込んでるのではないと分かり、言い直した。

「曲の中での役割です。私は、あの曲の中で、サックスは、こう、自由な感じだろうと思いました。」

「妖精ですか。」

「妖精?」

「いやっ、あ、なんでもないです。」

「それが宮嶋君のイメージでしたか。もう少し詳しく教えてほしいですね。」

「あ・・・。」

 深谷先生は微笑んでいた。宮嶋にはその表情が好奇心を含むように感じられた。

「・・・鍵を、職員室に置いてきます。失礼します。」

「さようなら。」

「さようなら。」

 職員室にに鍵を置いたあと、宮嶋はやっぱりぼうっとして帰った。時々、妖精と言ってしまったことをはっと思い出して、恥ずかしくなったりしたが、それでもやっぱりぼうっとして帰った。

 家までの道は長かった。


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