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違和感が無いように侍女としてレオンの部屋へ一度入り、ベランダを通じてアンジェの部屋を覗き込むとまだ何も騒動は起きていない様子で安堵し、ファルティリの部屋も危険だと判断され今日の所はレオンの部屋で眠る事になった。


レオンの部屋から侍女が出てこない事を怪しまれては困る為、エシリアが侍女の部屋の窓から渾身の体力を活かして外壁の出っ張り部分を伝ってベランダに入り、レオンの部屋へと侵入したおかげで、外からはレオンの部屋には侍女がいない状態の扱いになっている。


レオンの部屋からエシリアが出てきたのは兵士も少し怪しんでいたが、ファルティリの部屋での騒動の事で気を取られており細かい事は気にならなかったようだ。


レオンとナージェの姿のアンジェは、それぞれ順番に湯浴みを済ませたが、アンジェが異性の部屋で眠る事自体が落ち着かず、狼狽しながらやはり侍女の部屋で眠ると言おうとしたが、エリックにあまりうろうろするとアンジェの部屋の護衛の兵士に怪しまれると上手く丸め込まれ苦渋の決断をしたかのように諦めてレオンのベッドへ入ったえし。


先程の騒動も相まって、ドキドキとうるさい鼓動をどう我慢すれば良いのか分からず、とりあえず邪魔だとでも思われたら自分の心がどうにかなりそうだと思い、レオンの側に行かないように少し離れたところで横になった。


「……腕輪を外してくれ」

「え?…ですが……」

「侍女の姿のお前と寝るつもりはない……」


つまるところ、この見た目だと落ち着かないからせめてアンジェの姿で寝て欲しいと言う事なのだろうと察すると腕輪を外し赤い髪は金色に変化し、瞳も翡翠に戻った。


その姿を見てレオンは直視出来なかったのか、突然後ろを向いてしまった。


落ち着かない気持ちが余計に悪化したアンジェは、ちらりと初めて入るレオンの部屋を布団の中から見渡す。


無駄のない調度品とシンプルな壁紙、そしてアストレリアの林檎畑の絵画が飾られている。彼も林檎が好きなのだろうか。


少し話をしてみようかとレオンの方を向くと、眠ってしまったのか、規則正しく体が上下していた。流石に眠るの早くないかと敬意を示すほどだ。


落ち着かずそわそわとしていると、突然横で眠る男がこちらを向いた。


「……眠れないのか?」

「……は、い……。男性と寝るのは初めてなので…」


素直に述べると、それが少し嬉しかったのか、ひと一人分空いた二人の間の枕にぽんっと手を置いてこちらへ来いと促す。


それを悟ったアンジェは、おずおずと少しだけ近寄り、それをよしとしたレオンも少しだけ身を寄せると二人は至近距離になる。


すぐそばに居るアンジェの小さい体を、そっと腕で引き寄せると、動揺しているのか驚いているのかぎこちなく彼女は体を強ばらせた。


逃げられないと安心してそっと腕の中に閉じ込めると、背中に回した手は優しくとんとんと同じテンポであやすように叩く。体の力を抜いたのか少し重みを感じるようになったが、それと同時に不服そうにアンジェはレオンを見上げていた。


「私は子供ではありませんよ」

「あぁ、そうだったな」


そう言いながらも背中を優しく叩くのをやめないレオンに、珍しくアンジェは頬を少し膨らませながら広い胸板に手と頬を当てて身を委ねてじんわりと訪れる眠気に包まれ始めた。


ようやく穏やかな空気が流れたが…――


――ゴトンッ


それを壊すように隣の部屋からする物音に、眠気でふわふわしていた頭が一気に覚醒して起き上がった。


「今の音…っ」

「……お前の寝室からだ」


その後、ガタガタと物音がしてベランダの方へ物音は移動し、そのまま物音は消え沈黙が始まる。


ベッドにアンジェを置いて、ゆっくりベランダ側のカーテンの隙間に指を入れて外を覗き込むと人がベランダから人らしきものを抱えて飛び降りる所を発見し、カーテンから手を離した。


「……やはり、向こうも今日決行の日だったか」

「ナージェが……」

「俺はこれから追いかける、お前はここで――」

「お願いします!私も連れて行ってください!」


不安で今にも泣き出しそうなアンジェは、ベッドから飛び降りてレオンの腕を両手で掴んで見上げる。


その姿にぐっと無碍にできないと判断して渋々了承したが、着替える時間が惜しいためせめてガウンを羽織らせた。



◇◇◇

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