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儀式内容の実態を知ったアンジェは、しばらくいつもどおりの生活を送りながら何度も悩み、少し心を穏やかにする時間を設けた。時折ナナリーに神聖魔法についてを改めて話を聞いたり、今までどんな事に使ったのか、回復魔法以外には何ができて、どれほどの人の為になるのかを聞いた。
時には自分にかけてもらったりして、どういうものなのかを改めて認識し直す期間となった。
「神様は私達に試練を与えるけれど、でも傷を癒したり…誰かの気持ちや士気を高ぶらせたりするための代償だけれど、私はそれ相応の物だと思うの」
「…はい」
今日の昼間の聖堂は、休日という事もあって誰も入ってこない。休みの為もちろん二人共シンプルなワンピースの普段着だ。
聖堂の参列者用のベンチに横に並んで座ると、あれからずっと落ち込んだ様子のアンジェにナナリーは少し困った顔をして頭を撫でた。いつもならば頭を撫でられると嬉しいのに、この時は子供扱いをされている気持ちで少し不服そうに、愛らしい顔が綺麗に歪む。
「痛くて受けたくないのであれば、別に無理に神聖魔法を授かる必要はないんじゃ――」
「違います!」
「……何が違うの?」
逃げの道もあるのだと言うとそれに被せるように、少し声を荒らげて反論するアンジェの想定外な反応に呆気に取られつつ尋ねる。
「確かに最初は身を焼く行為に少し抵抗はありました…。でも、今はそれだけの力を手に入れるんだと思えばそれは仕方のない事、それは重々わかっています。ただ…」
言葉を続けるのに躊躇うアンジェは、膝に置いた両手が普段着のシンプルなグリーンのワンピースのスカートを強く握る。
少し震えているのは、この言葉を言ってナナリーを傷つけはしないか、覚悟を持って行った彼女に失礼ではないだろうか。そういう不安があった。
「大丈夫、私は何も言わないわ」
「……怖くないのですか?神の力を授かった自分が、いつか良くない事に使われるかもしれないとか」
「そうね、少しは思うけれど、この国ではマザー・シスター、王宮の人間や王族の人たちですら全員が受ける物だから、私は特別ではないもの。ガレンディアでも加護はあるのよ。力の内容は違えどここだけの話ではないわ」
不安から教えてもらった事が所々抜け落ちていたが、それでもやはり普通の人とは違う力を持つ事により万が一事があってはと不安になるのは人として当然の恐怖だった。
しかし、今までそれで何か問題が起きたかと言われるとそうでもない。
しかし、幼く未熟な心から何か歯止めになっていたが、少しずつナナリーと話す事により絆されていく。
次第に、〝困った人を、お世話になった人たちの為に生きたい〟という気持ちになり、モヤモヤとした物が少しずつ晴れていった。
案外単純な心をもっていたものだと自嘲気味に胸に手を当てる。
「……、…さい」
「アンジェ?」
「神の力を…、儀式を受けさせてください」
今度は逃げない。そう決意して真っ直ぐと灰色のナナリーの瞳を見つめると、よく決心したと頷いて目尻に涙を浮かべた。
成人式といい、最近のナナリーは涙腺が弱い。まるで母親が娘の成長をみて喜んでいるようだった。
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2019/05/10済




