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「すみません…、少し混乱してきました」

「あはは、それもそうだね、私も最初はよくわからなかったから」


笑い事ではないと誰もが言いたいのをぐっと堪える。


とくにナージェは、話はわかっているが慕うアンジェを困らせる人間を許しはしないだろう。にこやかに浮かべた笑顔が怖い。隣のエシリアも、ある程度事情を把握したのか、未だに自分が呼ばれた理由が分からないと首を傾げている。


「つまりはね、神々の喧嘩を収める為にここで結婚式を挙げて、レオンと一緒にアストレリアに最終的には戻ってアストレリア王国女王として即位して欲しいんだよ。君は次の代の王位継承権一位の持ち主になったんだ。この件は、王族にしか知らない事なんだ、口外はしないで欲しい。君がどんな人物か分からなかったから出来るだけ隠させてもらったけどそれで沢山傷つけてしまったね。すまなかった」


申し訳なさそうに深々と頭を下げるなどアーサーに、頭を上げてくださいと告げる。


「口が軽い人間だと王宮機密に触れるからですね…。少しショックですが……」

「いや、本当に申し訳なかったよ。ははは……」


そういう事、とアーサーは乾いた笑いを返して話題を戻した。


「ジャカルトの動きが妙だったのは、ここに来るまでに襲撃で知ったから。戦力的にも勝っているガレンディアで何か騒動を起こす事もあまりないだろうしね、解決するまでは君を保護していた方がいいと言う事になったんだ。それまでにレオンと愛を育んでくれればいいと思っていたし、解決すれば婚約発表や婚姻式と結婚式の話も進めようと思っていたんだ」


神々に結婚式を見せつけてやれば満足するからと付け足す。ガレンディア王国で結婚式を行うのは必須条件のようだ。怒れる神ガレンディアに見せつけねばならないようだ。


そんな事で上手くいくのかは定かではないが、信託を下ったこの国王陛下がそういうのだからそうなのだろうと強引に納得する。


しかし、レオンが婿養子となる事に同意しているとは一体どういう事なのだろうかと考えたが、ここでは王位継承権は三位の為、ガレンディアの王座には興味がないのだろう。それでもまだレオンの快諾に関しては納得いかない。


「だから、レオンには……、うん、そうだね。レオン・アストレリアになって貰う事になるね」

「……っ!」


ずっと黙っていたエシリアが、さり気なく淹れ直してくれた紅茶を飲もうと口に含んだ瞬間アンジェが吹き出した。


慌ててナージェがハンカチを使って拭いてくれる。


「す、すみません……」

「へぇ、アンジェもちゃんとレオンの事想ってくれてるのか。感心だね。兄として嬉しいよ。街でのデートで何かあったのかな?」

「い、いえ……そんな…」


恥ずかしく顔を赤くして俯くアンジェに、微笑ましげにして部屋が一気に穏やかに空気に切り替わった。


しかしアーサーは、また真面目な表情に切り替え今後の事を話し出す。


「そして、二つ目の話。ジャカルトに関しては、以前も話したけど君には協力してもらわないといけない。そろそろ向こうも動き出す頃だ…、毒が効いていないんだからそりゃ――ね?」


意味ありげに話すアーサーにアンジェは理解できず首を傾げたが、コーティカルテの事が関係あるのだろうと考える。


紅茶を飲みすぎてお腹いっぱいになり、カップに見向きもしなくなった頃、アンジェは口を開いた。


「……私が囮になるという話でしたね」

「……そういう話だったんだけど、レオンとそこの怖い侍女に私がいつか暗殺されそうだから残念だけど別の方法をとる事になったよ」

「しかし、私も可能な限りお手伝いさせてください」


率先とアンジェは手をあげると、もちろんと笑うアーサーに、ナージェが立ち上がる。


突然立ち上がったナージェに何事かと見上げると、それはもう自信有りげに胸に手を当ててふんと鼻息を荒げた。こんなナージェはあまり見た事がない。


「私がしばらくアンジェ様に成り代わりましょう」


そんな申し出で、その日から試しに一週間成り代わるという作戦を開始した。



◇◇◇

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