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一方的に、昔からの片想いであった事をレオンから告げられ、頭の整理もつかないままそのまま唐突に距離を置くという措置を取られてしまってから三日が経過した。


流石のアンジェも三日経過すれば頭の整理もつくが、あの朝日を見た日からレオンの事を心の片隅にしようにも忘れられるわけもなく、ずっとあれから胸の高鳴りとともに襲いかかる熱い感情を持ってしまったせいもあり、先日の事は随分傷付いてしまった。


仲良くなれると思っていたからこその絶望的な展開だった。


最初は自分の発言権を貰えず、無理にでも止めればよかったのに、下手に口出しをして嫌われたくないと弱った自分に苛立ち、レオンが出ていく直前に何か言おうとしたのに問答無用。聞く耳持たずでさっさと消えてしまう。


それよりもなによりも、呼び止めて自分は一体何を言おうとしたのかを改めて考えると頭の中が真っ白になった。


傍で見ていたナージェは、思い悩む目の前の主を見てまるで子供の喧嘩を見ているようだと吐息をし、いつも通り紅茶を淹れた。


「ナージェ、私の相談に乗ってほしいのです」

「レオン様の事でしょうか?」


 察しが良いというよりは、ずっとその事で悩んでいたアンジェを見ていればどういう話題かは想像がつく。


「はい、この前はあんな事言われてしまいましたが、きっとお願いすれば話を聞いてもらえるはずです。でも……」


――何を話せばいいのだろう


アンジェは悩んでいた。


初めて自分に対して恋愛感情を持って接していた人間に会い。そして、その気持ちを過去話として打ち明けられた。それだけで十分過ぎる程のレオンの気持ちを受け取ったつもりだったが、では逆に自分はどうなのだと言われると首を傾げた。


確かにアストレリアで寝込んでいたときに、誰かに頭を撫でられ、安心してまた眠れたのはレオンだったが、レオンじゃ無くても良かったのではないかと言われてしまえば返す言葉が見つからない。


しかし、拉致されて救い出してくれた時のレオンも。不器用ながらに気遣ってくれたのも彼なりの優しさを絞り出したものかも知れない。


アーサーのようにスマートに行かなくても彼なりの優しさは誰でも伝わったはずだ。


ガレンディアに到着した時の、異様な発言で周りの目玉を落としかけた程の事もしている。あれは冷静に考えると、もしかしたら長旅にお疲れという物だったが発言の判断力が鈍ってしまったのかもしれないと推測できた。


恋愛は拗らせるとあらぬ方向へと行くのだとナナリアがいつか言っていた。


まだ自分の気持ちがはっきりしないが、自分が今後に恋愛感情を抱く可能性を考えてこれからも歩み寄る必要があるのだと考えた。


しかし、うまく逃げられず彼を丸め込むにはどうすればいいのか、それが悩みだった。


「そうですね…。レオン様に時間を作って頂いてなにか日課を作るとかはいかがですか?」

「日課ですか……」


ティーカップの中を覗き込み、ゆらゆらと揺れるあとわずかの紅茶を眺めた。


何か考えるときに紅茶を眺めるのはアンジェの癖だ。水溜りや、湖などを眺めたりするのも好きだった。余計な事を考えず一つの事を集中的に考えられるからだ。


その為、入浴も少し長い。一度のぼせかけてナージェに時間制限を設けられるほどだった。


「そう言えば先日、お二人で朝日を一緒に見られておりましたね」

「――それだわ」


カップをテーブルに置いてふと立ち上がった。


すると、突然戸棚からペンと紙を取り出して何かを書き始めた。なんだろうとナージェはそれを後ろから覗き込み、内容を見て口元が緩んだ。


「名案ですわ、アンジェ様」


ナージェの太鼓判を貰い、満足そうに目を細めるアンジェは、それを一度読み返し、差出人と宛先の名前が間違えていないかも確認をしてもらって折りたたみ、それを渡した。


「できれば、レオン様にすぐに見つかる所に置いてきて欲しいです。中身は見られてしまっても構いませんので、側近の方に渡しても構いません」

「かしこまりました」


恭しく例をして手紙を大事そうに受け取り、隣のレオンの部屋へ向かった。


きっと自分から行くと見つかったとき更に避けられてしまう、だから他人に任せたほうが最善だと判断した。


その日の夜、レオンの側近のエリックが訪れ手紙が届いた。なんだろうと受け取ると、そこにはあの無骨そうな性格から想像もつかない程綺麗な字で書かれた返事に口を両手で隠した。


〝明後日の朝にベランダで待つ。〟


「果たし状みたい…」

「果たし状…?」


ぼそっと言ったナージェに、アンジェは首を傾げたが、この際どうでもいいと思った。



◇◇◇

2019/05/12済

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