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アンジェがなにか思い出して慌てふためいていると、騒ぎ声を聞きつけて現れた第二王子のユーロが何事かと現れ、入って来た驚きよりも、ガレンディアの王族がタイミング良く現れたという事のほうが頭の中で勝った。


「ユーロ様、野党の方々から話は聞いたのですか?」

「え?あぁ…、事情聴取は終えたが……」


何かあったのかとアンジェを見下ろしていたが、何事だと説明を求める視線を侍女達へ向ける。しかし、分かるはずもなく首を横に振るしかできない。


眉間に皺を寄せ見えない話の中身を早く話して欲しいと訴えかけるように視線を合わせて問うた。


「アンジェ王女、すまないが私は人の意図を読む事が苦手だ。何か言いたい事があるならはっきり言ってくれないか」

「…も、申し訳ございません。彼らは私をどこへ連れて行くと仰っていましたか?」


自分の悪い予感が当たっていては大変だという事に頭がいっぱいで、その様子に困惑するユーロへ謝罪を述べたあとすぐに気になっている事を尋ねた。


その質問に何かあるのだろうかと少し考えたが、事情聴取をした報告書の内容を思い出して顎に手を添え、ぽりぽりと顎をかいた。


「……そこだけは一切吐かなかった。まさか――」

「ーージャカルト帝国です。捕らえられてその中の一人が〝ジャカルトへ行くんだ〟と言っていました。それで、連行した野党の中に髭の濃い殿方がおりませんでしたか?」

「髭の男……?」


手を祈る時のように組み、涙目になりながら尋ねると、その騒ぎを聞きつけてまた誰かがこの部屋を訪れた。


――コンコンッ


「俺だ」

「レオン様!」


扉越しに聞こえる声は今朝聞いたばかりの声で、偶然こちらへ来たのかユーロと同様にただ事ではない騒ぎを聞いて扉を叩いたようだ。


どこか心なしかほっとする声にアンジェは縋るように扉を開くと、驚きの表情でレオンが立っていた。しかし、すぐ部屋の外にほかの人間がいないかどうかを確認して目の前の彼の手を掴み無理のない程度に引き、扉を閉めた。


「何事なんだこれは」


訳のわからない事に巻き込まれたと言いたげに、不機嫌な感情を剥き出しにしたレオンは、どさりとソファに腰をかけてアンジェに事情の説明を求める。


ユーロは、もう気付いているのかアンジェが説明にまごついているのを見て代行して説明するべく前に出た。


「アンジェ王女を誘拐した野党がどこへ向かっていたかという話をしていた。そこで、奴らはジャカルト帝国へ向かおうとしていたんだ」

「ジャカルト帝国だと……?」


ジャカルト帝国とは、最近広がりを続けているフォールデント大陸で唯一の帝国だ。アストレリア王国とは和平協定を結んでいたはずだが、アストレリアの嫁入り前の王女を誘拐を企てたと言う事はつまり裏切り行為という風にみなされても過言ではなかった。


「ジャカルト帝国と言えば、アストレリアの第二王女が嫁いだ先ではないか」

「そう言えば第二王女が嫁ぐ事で、アストレリアへの襲撃は行わないとう約束で送り出したはずだったな」


つまりは第二王女に何かあったのか、はたまたそれでは足りないという事だろうか、何にしても何の前触れもなく襲撃をして誘拐を働き、アストレリア王国とガレンディア王国の和平を阻むという事は許される事ではない。


何か目的があるのかと考えたが、まずは国王へ報告しなければとユーロとレオンはアンジェの部屋を後にした。


自分も行くとアンジェはついて行こうとしたが、まずはガレンディアで話をしてから今後の事を決めたいと言われてしまい、そこまで言われてしまっては首を突っ込むわけには行かない為、渋々了承した。


「まだ…聞いていない事が……」

「アンジェ様、ひとまず昼食をとって心を落ち着けましょう。なにもすぐにどうなるという事もないでしょうから」


気を落としたアンジェに励ましの言葉を投げかけるナージェ。テーブルに並べられた昼食は少し時間が経過してしまいぬるくなっている。


しかし、せっかく用意して貰った物を無下にするわけにも行かないと席に着いて食事を済ませたが、考える事が多すぎて食べていても全く味がしなかった。


食後も胸騒ぎがおさまらず、余りにも普段のアンジェからは想像もつかない狼狽っぷりに侍女達はかけられる言葉が見つからず、傍にいてあげられる事しかできなかった。



◇◇◇

2019/05/11済

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