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エリーゼの部屋に招かれ、アンジェとエリーゼは部屋の片隅に置かれた座り心地のいいソファに向かい合うように座り、大きなテーブルを挟んで色とりどりのお菓子やお茶を用意してもらった。


「……人払いを」

「かしこまりました」


準備をした侍女へ指示をすると、恭しく礼をして部屋を出て行く。


すると、外からは物音がしなくなり、廊下には見張りの為にジェイムスを立たせていた。どうやらアンジェが緊張している事が見抜かれていたようで、リラックスできる環境を用意してくれたのだろうと理解した。


「すみま…、申し訳ございません。気を遣っていただいて」

「この場では慣れた言葉で構いませんよ」


優しい声色でそう促すと、アンジェはぺこりと頭を下げた。


「何から何までありがとうございます」

「さっきからそればかりね。叔母としては…こう、もう少し初めての身内の対面を楽しみたいのだけれど?」


エリーゼはウインクをして見せ、アンジェはその妖艶さを含んだ綺麗な笑みに少し顔が熱くなった。こんな絶世の美女が存在するのかと平民暮らしのアンジェにとっては刺激の強いものだった。


「まずは、自己紹介ね。アストレリア王国女王、エリーゼ・ヘルベラ・フォン・アストレリアよ。ミドルネームのヘルベラはガーベラの別称と言われていてね、花言葉は希望。代々王位継承権一位に授けられる物なの。それで二人きりの時は好きに呼んでくれて構わないわ。謁見の間ではあまり話をしたくなかったからさっさと終わらせたかったのよ」

「……見に来ていた貴族の方ですか」

「あの人達はね、貴女をいじめる為に来たのよ。だから、変な事されないように長居はしない方がいいのよ」


頬に悩ましげに手を添え、アンジェはそういう物だろうかと回答に困り、とりあえずそうなんですかと頷いた。


「それじゃ、何かお話しましょうか…。じゃあ、私の本音を聞いてもらおうかしら。誰にも話した事ないのよ」


本音?と首を傾げると、頷いて有無を言わないアンジェを無視してそのまま問答無用に語り出した。


「私はね、長女じゃなかったらよかったのにってずっと思っていたのよ。だってエリーゼって名前も格好良過ぎでしょう?」


ころころと笑いながら言われ、よく分からないと困り顔でまた首を傾げる。緊張で乾いた喉を潤す為に、用意された目の前の紅茶を口に運ぶ。じんわりと口の中に広がる紅茶の風味は林檎のようだ。


好きなフレーバーにもう一口含んで、エリーゼの話の続きを待った。


「それに、ガレンディアの第一王子は初恋の相手だったのよ」

「ブッ」

「あら、ふふふ。淑女でしょ?綺麗に飲まないといけないわ」


驚きのあまり吹き出してしまった。


面白そうにエリーゼは、ハンカチを取り出してアンジェの口の周りを拭ってくれた。紅茶が少しかかってしまった膝の上のドレスに拭ったハンカチを広げて隠すように置く。


「お、驚いてしまって…。初恋だったのですか?」

「貴女、口数は少ないのに恋のお話に興味津々なのね」

「…少しだけ、憧れで」

「それで政略結婚の話を受けたのかしら?」


唐突に踏み入るような質問に切り替え、ぴたりと時間が止まったような気がした。


アンジェは、何か失礼な事を言ってしまっただろうかと狼狽しながら考えたが、そもそも元からそういう話をするつもりでここまで来たのだから自分の考えている事を、エリーゼへ伝えなければいけないと座っていたソファを座りなおし、改めて向き直った。


「そ、れは違います。私は、教会で色んな沢山の方にお世話になりました。街の人々と関わっているうちにこの国が好きになりました。最初は、親に捨てられた自分が出来る事なんて何もないと考えて、それが引け目になっていて…。だからまずは神聖魔法を身に付けて少しでも何か出来ないかと考えていました」


一生懸命伝えるアンジェに、ゆっくり頷いて同じく紅茶を口に含んで味わいながら飲むエリーゼ。そして飲み込んだあと、目を妖艶に細めた。


「素敵な心がけね」

「はい、でも一度は怖気づきました」

「…儀式が怖かったのかしら?」


相槌を優しく打ってくれるエリーゼに甘んじて話を続けた。


「自己犠牲で誰かを守れるならと最初は思ったのですが、神聖魔法を使う人の印を見て自分に刻まれた分それだけの事を神に誓って返せるのかと思うと怖くて。それで、自分の犠牲でそれ相応の事が出来るのかとか、そんな事を考えている自分が浅ましくて憎くて悔しくて仕方がなくて保留にしたのです」

「……そう」


保留にしたと言うと、少し落胆気味に返答を返す。


あからさまな態度に、自分がまだ儀式を受ける勇気がないのだと思われてしまっているようだった。


「先日、女王陛下からお呼びがかかった頃に改めて決意をして勉強をしていた所だったのです」

「そうだったの。…でもまだなのね」


アンジェの背を覗くように体を傾け見るがドレスで隠れて見えない。


実は、あれから儀式を行うタイミングが合わず結局受けられずじまいだった。


王宮でも儀式は受けられるとナナリアから聞いていた事もあり、エリーゼとゆっくり話せるようならついでに頼んでみるといいと言われていた。


今がチャンスじゃないかと思い返す。


「女王陛下、この話の流れで図々しいお願いなのですが――」

「えぇ、もちろんよ」


――最後まで言わせて欲しい。


不服を少し言いたげにアンジェは口を尖らせた。



◇◇◇

2019/05/11済

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