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早いこと王子と会いたいですね。



教会にアストルフォが来て三日が経過し、女王エリーゼとの謁見の目処がたった知らせが届いた。


その知らせと共に、アンジェの為に謁見用のドレスや、まだ平民としての立場もある為、悪目立ちのしない簡易な装飾品を父親からのせめてものプレゼントだと贈られた。


ドレスは、母であるナナリアの好きな桃色を貴重とした、流行りのフリルやレースが移動の際に邪魔にならない程度についていてシンプルに可愛らしい出来となっている。成人をして女性らしい体つきになったアンジェは、初めてちゃんとしたコルセットを着けて少し窮屈そうに眉を顰めた。


アストルフォからは、装飾品もアストレリア王国の象徴色でもある林檎のモチーフに赤いルビーが付いたネックレスが贈られた。


「良く似合ってるわ。アンジェ」

「ありがとうございます。お母様」


謁見の当日、アンジェは贈られた品々を身に纏い、聖堂で迎えの馬車を待っていた。


長く伸びた波打つ金の髪と、翡翠の瞳も相俟って、磨き上げられたアンジェはすっかり貴族の娘かそれ以上だ。その姿に、慈善活動に来ていた令嬢達もその可愛らしさと美しさに嘆息が漏れる。


「アンジェが第三王女様の娘だなんて、私不敬な事しなかったかしら…」

「私も…」


口々にふと思い返す自分たちの行動に何か問題はなかったかを必死に考え顔を青くする彼女達に、面白かったのかアンジェはふふっと自然と笑いをこらえながら首を横に振った。


「いつもお世話になっているお姉様方に、私が何か嫌な事思うわけありません。ここまで面倒を見てくれてありがとうございます」


恭しく頭を下げると「王族の方がそんな事やめてください!」と怒られてしまった。


「今まで通りに接して欲しいです。急に態度を変えられると、なんというか――」

「アンジェがそれでいいなら私達は従うわ」

「そうね、ガレンディアにお嫁ぎになるなら私が侍女として着いて行くのはありだったかも知れないわね…」

「ずるいわジェシカ、わたくしだって……」


口々にいつも通り茶化した会話をしていると、先程まで緊張していたアンジェの表情もだいぶ穏やかになった様な気がする。


とはいっても、もともと平常では無表情なのは変わりない為、付き合いが長くないとその違いもわからない。これでは嫁いだ先で誤解が生じて離縁になったり、第二王女を差し出した時に拒否されたりなんて事があるやも知れないと心の内で心配もした。


あえて口に出さなかったのは、アンジェの自然な微笑みの価値が損なわれてしまう可能性を考えての事だ。これ以上、無駄な心配や不安をかけさせてはいけない。


穏やかな空気の中、外で馬車を待っていたマザー・シスターが入ってきた。


「王家の馬車が来られましたよ」

「ではアンジェ、くれぐれも姉上に……、その…」

「……?」

「姉上達はきっと優しいから私達の事は何も聞いてこないと思うけれど、他の貴族達もいると思うわ。何かを要求したり、ましてや私達の事を言ってはダメよ。必要になったら自分から行きます」


ナナリア自身もまだこの状況に決別する決意がない様に思える。


それに後から聞くと、彼女は平民として騎士のアスフォルトと結婚を済ませている為、王家の認可が下りていないが、ほぼ王女としての立場は捨てているのだ。仮に過激な貴族達にここにいる事を知られてしまったら匿っている教会がどうなるかもわからない。


下手な事は言わないで大人しく聞いてうんうんと頷いていればいいだろうと令嬢達の助言もありそう考えていた為、アンジェは特に気にする事もなくこくりと頷いた。


「行って参ります」


十五年間も世話になった聖堂や人々をぐるりと見渡し、淑女の礼を済ませる。


迎えに来たアストルフォにエスコートをされながら聖堂を出た。


馬車に揺られ、遠ざかる聖堂と人達。少しどころか、目尻には涙が浮かぶ程寂しい思いをしながら、自分の決意に手をぎゅっと握りしめた。


「しっかり……しないと…いけないわ」


馬車の速度で足早に離れていく聖堂を横目に、視線を変えれば少しずつ近付き大きくなって行くアストレリア王国の王宮を窓から眺め一人馬車の中で、改めて気持ちを切り替えた。



◇◇◇

2019/05/11済

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