学校の友達?
学校は女子禁制。だが、私はその禁制を破り男装をして通っている。
さて、何故男装をしてまで学校に行かなければならなかったのか簡単に言えば…『今のうちに色んな人と交流した方が良い、だから学校に行け』との父の言動によってだ。
母は猛反対し、少し両親で口論になっていたが結局、父の案が通り私はこの通り男装する羽目になった。
髪は一束にくくり裾の長いスボンを履く。鏡に映る私はどう見ても男子だ。それに対して嫌悪感は無い。どちらかと言えばひらひらしているいつもの服より数十倍ましで気に入っている。動きやすいしね。
それに、まだこの年だと声変わりする男子はいないし、背の高い私は当然ばれることは無かった…はずだがー
私は聞こえてきた素っ頓狂な声にため息をつく。
「ネイアスー!!!!久しいな!」
「はて?誰でしたっけ?」
「俺だよ俺」
「俺だよ俺さんそこどいてくださいます?というか邪魔」
「ひっど〜!お嬢様がそんな口きいちゃ駄目じゃない〜」
「誰がお嬢様だよ…退けろ…そして失せろ」
そいつは私の耳に唇を寄せる。
ほんとのことだろ?…そう呟きクスクスと笑う。息が耳に掛かって気持ち悪い…反吐が出そう。
いかにもと言ったような不快感を示し蔑みの目を向ける。対して、俺だよ俺はニコニコしながら私の横に並ぶ。
「私は立派な紳士だよ…お嬢様なんか…お前の妄言だろう」
「妄言って何?…紳士はそんな酷い扱いしないと思うけど〜」
「生憎、私という紳士はお前なんかを親切にする気はなくてね」
「え〜」と言いながら私の頬に手を伸ばそうとする。私はその手をパシリッと叩き、払いのけた。まっったく…からかいもいい加減にっ!
ふと、ゴーンと鐘が鳴る。
「男女は黙っとけ!授業が始まる!急ぐぞ」
「男女とは失礼だな〜美しき顔の少年といいたまえ〜」
これは完全にノーコメントだ。
私は無視をしてさっさと教室に入った。
この数カ月分の学力を取り戻さなければ…
▶▷▶▷▶▷
俺はセオと言う名の商会の親父をもつ美少年である。
母に似た顔立ちのせいか並の同い年の少女よりたけていた。身長が低いのは少し劣等感を感じるが、この顔には満足がいった。
学校に行っても相変わらずで男子生徒にちやほやされていた。
ある日、見知らぬやつが教室に入ってきた。窓際に座ったそいつは頬杖をついて気だるそうに
外を眺める。
俺はそいつをまじまじと見た。
ーえ…女?
その少女の栗色の髪は日に当たって艷やかになり、切れ長の瞳には凛々しさがあった。
どこで、女だと分かったのか…
自分でも分からなかった。だって、どう見ても、男子にしか見えない…
「お前…女?」思わず俺はそいつに話かけた。すると、相手は目をまん丸にさせ顔を青白くして固まっていた。
「!?…………ち…違うわ…違うに決まっている!何だ!お前!失礼だぞ!」
「え…ほんとに女なの?」
「違うって言ってるだろうか!?」
ふと、木蓮の匂いがふわりと香る。
あぁ…成る程な…この匂いか…
男には無い匂いだ。ふわりと漂うその甘い匂い
にそう思ったのか。
「なーに…また馬鹿な事言ってるのぉー!またセオの馬鹿が何か言ってるよー」
「こ…こいつ誰だよ…」
「セオが学校さぼるのが悪いんだよ!この子はネイアス、こないだ編入してきた子だよ」
「編入?そんなの聞いてないな…あんたの名前ネイアスって言うの?」前に座っているネイアスに話しかける。
「あ…あぁ…あんたこそ名前は」
「俺はセオ、親父が世話になってるな…」
「え?」ネイアスは目をぱちくりとさせた。
「ほら…お前、グランディの伯爵家でしょ?」
「何で…分かった?」
「お前…三男のとこの一人娘?だってアイネイ」
「あーーーーー‼そうそう‼私はグランディの伯爵家の一人息子だ!」
そう言って、豪快に睨まれた。
(え…俺なんか悪いこと言ったかな)
疑問が浮かびつつ、それからと言うものネイアスという少年?は俺を避ける様になった。
月日は経つ。
我慢できず、無視している本人に話しかけた。
いつもなら話しかけようとするたび逃げるように教室から出ていったが、俺は何とかネイアスの腕を掴み強制的に外へ連れ出した。
「ネイアス…何故…無視する?」
「…無視なんて」ネイアスは後ろめたそうに目をふせる。
「俺がお前を女だと言ったから?」
「…じゃあ、もし私が女だとしたら…お前はどうするんだ」
「俺はどうもしないよ?逆に何?俺が何すると思った?」
「…先生に告発するとか、教室中にこの事を言うとか」
「無理だな」
「え?」
「そのもしが通用するなら、先生は無意味…まぁ…最初から知っていたり…または後から告発何かあった時なんかは丁重に包み隠してしまうだろうね…それ以前にネイアスの容姿だと気づかれる事も無いし」
「そう…」
「だいたいお前…何で俺が伯爵家の令嬢だって言ったとき一人息子なんて言ったんだ?」
「そりゃ…当主が長男で三男までは認知はあるかもしれないけども…病気がちで引き籠ってる一人娘なんて…だいたい…父に子供がいるなんてのも知られてないと思うし」
「そうか……それよりお前…俺を肯定している様な事言っているの気づいているのか?」セオはクククッと意地悪く笑った。
「!?貴様ぁあああ‼嵌めやがったな!?」
「なんのこと?」
「とぼけたこと言うなぁあああ!!!!!」
ーそれから数カ月
今日に至る。あれから少しずつ話をするようになった。
だが、彼女は渋い顔をして『お前の話題は嫌いだ』と言って打ち切られるのが毎日だ。
何がいけないのか…ちゃんと女がよく話す様な話題を出しているのに…
特に恋話なんかを話すと何それ?みたいな顔をする。鈍感なんだか…実はほんとに男だったとか…でも、純粋だからこそこんなにも彼女と一緒にいることが落ち着いて楽しく感じるのだと思う。
ふと思い出した。
『ーそれでさぁ…俺の顔面殴ってきたんだぞ!
周りのやつなんて俺に惚れ惚れしてそんなことしないのになぁ』
ふふっと妹は微笑を浮かべた。
『…何だよ、そんなに面白かったか?』
いつもそんなに笑わない妹がクスクスと笑っている。親も物珍しそうな顔をして顔を覗かした。
『だってお兄ちゃん!すっごく楽しそうに話すから!いつもは何だか作り笑いみたいだけど…そんなにその人こと大好きなんだね』
俺はそんなに楽しそうに話していたのか…
ー俺はネイアスが好きなのか
『両想いになれると良いね』
そう妹は言い残して同い年の友達のところへ遊びに行った。
俺は笑った。だって可笑しくて…女みたいな俺が男みたいな女を好きになるなんて
ー彼女は気づかないんだろうな…確実に
どうにかして気づかせないとな
セオはその彼女に会いに家を出た。