表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
橋ノ上物語  作者: 六眼 李
3/27

夜咄 第一話

ん?と思うと思います。

「へー!お姉さん、ここの人じゃないんだ!」

「…うん、本当は南東側の都市に住んでたの」

戦争…学問…分野に関わらず沢山の話をした。拙い会話ではあるが、私は憂鬱とした気持ちが少し楽になった。

実は、私も人とまともに会話をするのは久しぶりだった。

だからか、まれに言葉に詰まる時がある。それでも、耳を傾けてくれるアルフをみると幸せだった日々を思い出す。 


あの少年もそうだった。

茶髪で瞳の色は深緑色、小柄な体形だけど私より少し身長が高くて朗らかな表情で話しかけてくれた大好きだった少年。

アルフに似ているようにみえたが、多分、気のせいだろう。

アルフの髪は白銀だし髪を一束にして括っていなかった。歳も私と同い年な訳だから有り得ない。


ーでも、胸が熱くなるのは、なぜだろうか。






▶▷▶▷▶▷ 



僕は橋の上にいた。素敵な夜だ。

ー月明かりが差し、静寂に包まれるいつもの土曜日…だが、不格好な自分だけが浮いている様な気がして、落胆した。

ふと僕と同じ様に橋の上に立っている少女を見つけた。薄汚れた夏服に栗色の長髪…そして碧眼の切れ長の目。

ー目を見開く。その少女はよいしょっと橋の手すりの上に立った。

危ない!僕は咄嗟に駆け寄り声をかけた。

「お姉さん、何をしてるの?」と。


僕は、彼女の気持ちを少しでも汲み取れる様に世間話をしようと持ちかけた。

彼女は渋々話に乗ってくれたが、会話をしていくうちに彼女の表情は明るくなった。

さっきの苦渋の表情が嘘の様だった。嬉しい…僕は心の底からそう思う。

死ぬなんて…そんなのも虚偽だったんじゃないか…僕は期待を寄せる。

「ねぇ…お姉さんは…本当に死んじゃうの?」

僕は、アイネイアスに聞いた。焦っている心情が顔に出ていないかヒヤヒヤしながら彼女の瞳を見ようとする。

だが、彼女は俯き表情が読めない。


「ここにいても苦しいだけだもの…我慢してたのよ、でもね…此の世の不条理に腹が立って仕方ないの…私の愛しい人達は皆死んでしまった…きっとね、生きてる意味が分からなくなったてしまったんだと思う」

彼女は弱々しく声を震わせる。

「それに…」

不意に、アイネイアスは服を脱ごうとボタンを外す。突然の事に僕は目を丸くした。

途端、背中の肌が露わになる。ミルクのような白い肌は月に照らされて更に美しさを増す。

ーだが

至るところに痣や火傷の後があった。痛々しくて、僕は思わず目を背けた。

「子供には刺激が強いかしら」

一瞬、顔を歪めたが、そんな隙は無かったように気丈に振る舞う。

全く強情なんだから…

「そ…そんなことないよ!それより女の子なのにはしたない…お嫁に行けな…あ」

アイネイアスは死ぬ為に此処にいるのだから、誰かの嫁になんか行く訳が無い。

それ以前に、傷モノはあまり望まれない。

「…傷の事には触れないのね」

「だって、お姉さん…辛そうな顔してたよ」

「いいわよ…聞いて頂戴…どうせ過ぎた事だもの」そう言って彼女は微笑んだ。


アイネイアスは、ぽつりと話を始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ