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橋ノ上物語  作者: 六眼 李
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出会う

(はぁ…)溜息を吐く。

終わるのか…こんな呆気なく。涙よりも溜息が溢れる。



「お姉さん、何してるの?」背後から声が聴こえた。あどけない澄んだ声。


「え?…」

振り返ると、人影がみえた。私が目の前に立っているせいで顔が見えない。


「危ないから、降りた方が良いと思うよ」

えぇ…あえて危ない所にいるのよ…とその人影を睨んだ。余計な事はしないでさっさと行きなさいよと強い念を送った。


「ねぇ」

「…なによ。」少年を睨みつつ、仕方なく、橋の上に降りる。

「お姉さん何歳?…僕は十二歳なんだ!」月の光に当てられみえた少年は瞳をキラキラさせていた。そんな事聞いて何の利益になるか分からず、首を傾げる。

(まぁ…子どもってそんなものか)

「十八よ」

「へー…そうなんだ、てっきり一つ上ぐらいかな〜と…だってお姉さん胸に肉がな」

「何を言ってるの、クソガキ」

拳を振り上げる。そして、そのクソガキの頭上に向かって落とされる…が、寸でで、少年は素早く右に避けた。チッと舌打ちをして拳をおさめた。


偉いわ、私。


「な…何でもないよ!えっとね、そうだ!名前…僕の名前は…アルフだよ」

ニコリと笑う。私は改めてアルフという少年をまじまじとみた。

ひょろりと痩せこけて蒼白い顔をしている。多分、ここらの子供だろう。

十分に食べ物を与えられていないことに違いない。

だが、温和な柔らかな表情で端正な顔立ち、もっと歳を重ねれば、磨かれ、美貌な青年になる。

まさしく、こんな処には勿体無い顔であった。珍しい白銀色の髪に花緑青色の瞳…世の女性を魅了する魔性の少年と言っても過言じゃないかも。

「な…何?僕の顔なんか見て…惚れたの?」

「ガキに惚れる趣味なんて持ち合わせてないわ」

実際、顔から目が離せなかったなんて死んでも言わないわ。

「で、子供が何でこんなとこにいるわけ?」

「じゃあ、何でお姉さんは手すりの上に立っていたわけ?」

「何であんたなんかに言わなきゃいけないわけ?」

「じゃあ、何でお姉さんなんかに言わなきゃいけないわけ?」

「…」

(負けた。子供なんかに…)

少年はニコニコと微笑を浮かべる。全く、憎たらしいわ。

「自殺しようとしてたのよ…私、死にたかったの…いや…今も死にたいの」

「うん、知ってる。僕は聞いているのはその理由」

「言わないわよ」

当然だ。

見ず知らずの人に自分が死ぬ理由なんて話すわけ無いわよ。

身内ならまだしも(これは遺言状という形だが)、死ぬ前に他人に《今からこういう理由があって死にたいと思ってます、ではさよなら》って死ぬ人にとっては意味ないし、聞く側としては、はた迷惑なだけじゃない!

「無理なら…暇つぶしにさ、話をしよう?僕、久しぶりに人と話すんだ。世間話でもいいからさ」

可哀想な少年だ。多分酷い扱いを受けているのだろう。まぁ…私は、同情の憐れんだ表情なんて死んでもしないけれど。

「いいわ、話して頂戴」

少し、話を聴くのもいいだろう。餞だと思ったら良い最期だわ。


ーそして、少年の話が始まる。


この話が彼女にとって、いや…少年にとって絡まる縁の糸が紡がれてく奇妙な一夜の始まりだったとは…気づくはずもないだろう


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