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第9話「ゲーム禁止」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。

 インベイド社のデータ解析部門は、興奮冷めやらぬ熱気に包まれ、社員たちは仕事が手に付かず、赤いGTX1000のドライバーの話題で持ち切りになっていた。


「次のログインは、いつになるんだ?」


「プロじゃないから、下手すると2時間後、否、国によっては、6時間後ってことも……」


「どこの国なんだ?」


「日本だな……と言うことは、6時間以上だな、交代時間かぁ~」


 インベイド社のデーターセンターは、6時間勤務の4交替制を取っている。

 次のログインが来る前に、勤務時間は終了していると予測された。


「まぁ、良いじゃないか、録画はされるんだからさ」


 正確には、録画ではなく、動作データが保存されており、色々な視点から観る事が出来るようになっていた。


 時は過ぎて、6時間後。


「DID:68033242、もうログインしてきませんね」


「今日は、1回で止めたか……それよりも、何でIDで呼ぶ? ハンドルネームは?」


「それが未だ、登録されてないんです」


 プロトタイプは、事前登録が出来るようになっている。

 だがそれは、初日に起こった失敗から改善されたものだった。

 筐体に入り、網膜を撮影し、あとは機体を選ぶだけの作業に、20分も30分も悩むユーザーが続出したことを受け、たった4時間余りで、ラルフはスマートフォン用の事前登録アプリを完成させる。


 完成するや否や、アプリをデジタルコンテンツ配信サービスへ申請を出し、更にそれを運営するボスに、直接、電話を掛けた。

 

「ローレンス、アプリの申請を出した。すぐ通してくれ!」


「お前は馬鹿か! 審査もせずに通せるものか!」


「大したことはしていない、今度のヤツの事前登録するだけの代物だ」


「駄目だ、こればかりは! 優先はしてやるが、審査はさせてもらう!」


 すると20分後、ローレンスから電話が鳴る。


「通ったか?」


「馬鹿か、お前は! 網膜撮れるカメラ実装したスマートフォン持ってる奴なんて、世の中に3割も居ねーんだぞ! 顔認証に変えろ! 筐体に乗ってから、合致した顔に網膜データを上書きするんだ!」


 言われた通りに修正作業を行い、ようやくアプリの申請が通ったのは、公開ロケテストを発表してから、僅か7時間後だった。

 後の自伝本においてラルフは「この時の対応の早さで、如何に私がこの事業に本気であったかを世間や株主に伝えられたのだと思う」と語っている。

 その後、アプリはバージョンを重ね、今となっては、ハンドルネームの登録、機体のカラーリング変更、武器の変更の他、自分のランキング、戦闘履歴、戦闘動画も閲覧できるようになって行った。



 時は、今より少し遡って、2025年元日。

 インベイドが世界に向け、新年のあいさつと共に、インベイドのレンタル事業テストを発表する。

 しかも、すでに世界各地に1万台も配置されており、更にプレイ料金が無料で、今からプレイできるのだと言う。

 配置されたエリアは、欧州、北南米、日本、中東、香港、韓国、台湾にあるインベイド社および協賛企業の施設で、詳しくは公式サイトにて住所が公開される。


飛鳥あすかーッ! 何処行くの!」


 東儀雅とうぎみやびは、聞かなくても解る答えを、敢えて妹に問う。


「え? ちょ、ちょっと……ちょっとだけ……」


「ダメに決まってるでしょ!」


「だってぇ~」


「アンタ、受験生なのよ!」


「今日だけ、今日だけ、正月なんだしぃ~」


「その台詞は、今の放送前に、聞・き・ま・し・た!」


 この時より、2時間前。


「飛鳥も受験勉強に励んで来たんだから、正月なんだし、2時間くらい好きなゲームの放送を観させても良いじゃないか?」


 雅は、妹に甘い父親をキッ!と睨みながらも、そこまで鬼になるのもと思い、渋々認めた2時間だった。


「だってさぁ~、もう在るんだよ! しかも、インベイドのビルって、割りと近くじゃん。やらないから、ちょっと行って見たら帰ってくるから!」


「解ったわ」


「ホント!」


「待ちなさい! 何処行くの!」


「え? 今、解ったって!」


「私が見てくるから、飛鳥は勉強してなさい」


「えぇ~、お姉ちゃんズルイ!!」


「高校落ちたら、来年もゲーム出来ないのよ。それでも良いの?」


「うぅぅぅぅぅ~!!」


「撮影出来るようなら、撮って来てあげるから」


「今からって、もう午前2時だぞ!」


「という訳だから、父さん送って」


「へ? 自転車がぁ~」


「嫁入り前の娘を深夜2時に出して、心配じゃないの?」


「それ、自分で言いますかね? 行かなきゃいいだけの……」


「はい、お父さん、寒いだろうからコート。行ってらっしゃい」


「母さんまで……解ったよ、解りましたよ」


 父は、長女を後ろに乗せ、自転車を漕ぐのであった。

 そう、二人の父である東儀和正とうぎかずまさは、車はおろか、免許すら持って無かったのである。


読んでくれて、ありがとう。

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