第88話「告白」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
両親が共にオタクだった影響もあり、物心付く頃から、漫画やアニメ、ゲームに触れていた。
記憶にはないが、アルバムを開けると、コスプレさせられた私の写真が幾つも出てくる。
そんな我が家には、数え切れないほどの漫画やゲームの棚が幾つも並んでいて、今年17を迎える今でも、読めてない本や、電源すら入れたことのないゲームで溢れ返っている。
しかし、現状でも減らしたらしく、結婚前に被っていた漫画やゲームは売りに行ったり、オークションに出したりしたそうで、もし、親が『読む用・保存用』なんてことをやるタイプだったら、私の部屋はなかったかもしれない。
まぁ、それでも、17年もあって消費できてないのは、未だに両親、そして、私自身も買うから、キリがないのだ。
両方のお爺ちゃんお婆ちゃんから「やはり、受け継いでしまったか……」と、よく笑われる。
だけど、それはどちらも反対している訳ではなく、ただネタとして言ってるだけで、本心では「その方が良い」と思っている。
それはウチのお父さんが、特に変わった人だったからで、なんせ、お母さんをお嫁さんに欲しいと挨拶に行った際、如何に幸せにするかを熱弁したのだが、ポイントがズレてて可笑しかったと、お爺ちゃんからよく聞かされた。
「僕は、欲しい物が在るから働いています。欲しい物が無ければ、働きたくないと思うような人間です。しかし、お義父さん、お義母さん、ご安心ください。幸いなことに、僕の欲しい物は、年々、いや、月々、いやいや、日々増え続けているのです」
「そんなんで、貯金はできるのかね?」
「何を言っているんですか、お義父さん! 未来に、何が欲しくなるか解らないのですよ! 怖くて、貯金するに決まってるじゃないですか!」
「いやいや、そういう意味ではなくて、消費が多いと貯金できないだろ? ほら、食費削って、車買うヤツとか昔、居たんだよ。君も、そうならないとは限らないだろ?」
「アハハハハハ、お義父さん、ご冗談を。僕は、欲しい物の更に上を目指しているのです。決して、そんなことには、なりませんよ」
「君の年収は、そんなに高いのかね?」
「今は、400万です」
「ダメじゃないか。そんな一般的な収入で、贅沢なんかできんよ」
「お約束します。3年毎に、倍に上げてみせます」
「え? それは君の会社が決めることであって……」
「そうです、3年後には独立してみせます。でなければ、僕は欲しい物の半分も、手に入らないのです!」
「大丈夫かね?」
「ご安心ください、お義父さん、お義母さん。僕が今、一番欲しい物は、美奈子さんとの安定した幸せな生活なんですから」
父、耕太は、オタクであったことから『自分が欲しい物は、他人もきっと欲しいし、自分が不便に感じる物は、きっとみんなも不便に思っている』という発想から、次々に事業を展開し、本当にお爺ちゃんとの約束を守った。
もちろん、欲しい物も我慢しなかった。
今では「お前の父さんは、欲しい物を買って経済を回し、且つ、生活も安定させてる素晴らしい男だよ」と誇らしく言うくらいなのである。
そんなオタクの親だけあって、やるべきことや家のルールさえ守っていれば、ゲームを何時間やろうとも、アニメを何時間観ようとも、怒られるようなことはない。
やるべきことや家のルールといっても、周りで聞くような厳しいものではなく、宿題は先にしなさいであったり、小学生の間は、午後10時には寝ましょうであったりだった。
しかも、多少の誤差というか融通も利かせてくれて、RPGなんかでセーブできるところまでは許可してくれたりする。
誤解されることが多いのだが、こんな親だからといって、何でもかんでも買い与えてもらった訳じゃない。
お小遣いは貰えたが、お父さんの座右の銘が「働かざるもの喰うべからず」であることから、お手伝いや学業で、その額が変動する形をとっていた。
そんな所為もあって、成績も良くなり、欲しい物も買えるようになった、お父さんほどではないけど。
こうして、オタクの英才教育を受け、こんなに立派に育ったってわけ。
2017年頃から、世の中はeスポーツの旋風が吹き、ゲームが盛り上がっているように見えた。
しかし、それでも業界全体という訳でもなく、ゲームショップは潰れ、ゲームセンターも数多く街から姿を消していた。
そんな或る日、それを憂いた新進気鋭のゲーム会社の社長が、ゲーム雑誌のインタビューに答えた記事を目にする。
「ゲームセンターは、無くなってはいけない。それはゲームセンターこそが、カーレースで言うところのF1に当たるからだ。最新の技術で勝負し、競い合っていくことこそが、ゲームを進化させていく。現状のままでは、決められた小さな枠の中で、小さい開発しか出来ない。ゲームの最前線である、ゲームセンターの灯を消してはならない」
そして、2025年、その社長ラルフ・メイフィールドは、世の中にGTWを出したんだ。
その言葉を覚えていた私は、ワクワクしながら順番を待ち、ドキドキしながら乗り込んだ。
たった2分43秒しか味わえなかった世界だったが、手の震えが止まらないような感動を味わった。
この時は、まだドライバーで、プロになってやるって思ってたなぁ。
でも、雅と会って、その才能とカリスマって言えばいいのかな?
を感じて、この親友をずっと支えたいと思うようになった。
そう、オペレーターとして。
今日は、特別な特訓をすると虎塚に言われ、私と雅だけ実験機のある階へと連れて来られた。
「お前は、ドライバーに戻らないのか?」
誰がなんと言おうと、私の意志は固まっている。
「私は、世界一のオペレーターを目指します」
「そうか」
「先生も、いつか抜いてやりますからね!」
そう言うと、虎塚は笑い雅の顔を見る。
すると、雅もそれに応えるように微笑み返し――、
ちょ、ちょっと!
いつから、そんな関係に!
まさか……こ、この前、雅が気分を悪くした時に、虎塚の毒牙に!
「もう、言っても良いですよね?」
な、なにが?
ま、まさか、アタシたち付き合ってますとか言うんじゃないでしょうね!
「あのね紗奈……」
「ちょ、ちょっと、こ、心の準備を」
3回ほど深呼吸したあと「ど、どうぞ」と、手を差し出した。
雅は、不思議そうに首を傾げたあと、私の知らなかった真実を告げる。
「先生はオペレーターじゃなくて、ドライバーなのよ」
「なんだ、そんなこと……え? ドライバー?」
「サーベルタイガーなの」
「えぇぇぇぇぇーーーーーッ!」
「実はね、先生が飛鳥と戦うにしても、アタシと紗奈だけは、先に知っておいた方が良いだろうって」
「ほ、本当に、さ、サーベルタイガーなんですか?」
「あぁ、そうだ。インベイドの副社長タイガーは、俺の叔父だ。虎塚の虎から来ている」
あ、虎塚、刀真……。
「は、恥ずかしい……」
名探偵気取りで、先生を追い込んだ自分を思い出し、その余りの恥ずかしさに、手で顔を隠したものの、耳までは隠せないでいた。
「さて、お前たちを呼んだのは、他でもない」
「いよいよ、飛鳥と戦うんですか?」
「いいや」
「じゃ、何を?」
「言ったろ? 本当に、お前たちを鍛えるためだ」
読んでくれて、ありがとう。




