第66話「Miu」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/08/29 5:54 誤字修正。
「ポイント223864に、転送物体確認! 識別番号004。Miu、ヤバイ! ガーゴイルよ! 退いて!」
ガーゴイルとは、ゴーゴル社会長ローレンス・ミハイロフ率いる、メンバー数と資金力を兼ね備えた、インベイド界一のワークスだった。
「退けだって? 冗談じゃない! ランクアップには、丁度良い相手でしょーが!」
オペレーターの少女の言葉を無視して、Miuと呼ばれた少女は、出現するポイントへと向かう。
突如として、前方に巨大な戦艦が現れ、そこから1体の戦闘用人型ロボットGTMが降りて来た。
「仕方ないわね、GTM壊さないでよ、高いんだからさ」
「あいよー」
戦場へ新たに現れたGTMを撃墜すべく、Miuは自らが搭乗する蒼いGTMを走らせる。
「ん? あれ、何、ちょっとデカくない?」
「Miu、気をつけて! そいつ、5分前に申請が通ったばかりみたい。大きさは、さ、30m!?」
通常のGTMのサイズは、平均15m、大きい物でも18mだった。
「30m?」
「たぶん、実践テストにランク53位のアンタを選んだんでしょうね」
「それはそれは、光栄な事で!」
その時、戦場に居た他のGTMたちが、我先にとローレンスへと近づく。
「退け! そいつは、アタシの獲物だーッ!」
や、やばい……そーっと、此処から出ないと……。
しかし、刀真は机の角に足をぶつけてしまい、ギギギーッと音を鳴らしてしまう。
その音に気づいた、Miu……否、安西美羽は、筐体から顔を出し、侵入者を確認した。
「お、おぅ、安西……早かったじゃないか~」
蛸かと思うくらい耳まで真っ赤になった美羽が、刀真に問い詰める。
「ど、どこから、き、聞いて、た、た、たんですか、か、か?」
「え、いや、その……俺は、なにも……き、聞いてない、ぞ?」
大嘘である「ポイント223864」という台詞から、一人芝居『エアGTW』を聞いてしまっていたのである。
「ほ、ホントに?」
「あぁ、ホントだとも」
このままだと、いつボロが出るとも限らない、危険を感じた刀真は、少し話の視点をズラした。
「と、ところでだ、安西。お前は、ドライバーに成りたいのか?」
仮に台詞を聞いていなかったとしても、筐体から出て来たのだから、この質問自体に不自然さはない。
「え? いや、その……」
少し俯き、悲しそうに首を振る。
「そうか、お前にはドライバーの素質があると思ったんだがな」
「え! ホントですか!」
その表情は、明らかに嬉しそうなものだったので、刀真は改めて問う。
「本当の事を言ってくれ、お前、本当はドライバーに成りたいんじゃないのか?」
「ドライバーやってみたいけど、アタシ、雅先輩や飛鳥ちゃんみたいに、才能ないし……」
そう言って、肩を落とす美羽に、刀真は笑って、美羽の勘違いを指摘する。
「何言ってんだ安西。ゲームは才能でやるんじゃない、楽しいからするもんだ」
「でも……」
「ラルフは……インベイドの社長、ラルフ・メイフィールドは、誰でも平等に楽しくプレイ出来るように、無料にしているんだ。才能があろうが無かろうが、そんなことは関係ない。プレイして、誰にお前を責める権利がある? それにな、じゃ、東儀姉妹だけがドライバーだとしよう。そうなると、あいつらが卒業したら、このクラブは解散か?」
「でも他に、プロに成れる人なんて……」
「お前が居るじゃないか」
「え? アタシでも、プロに成れますか?」
「素質が有るって言ったじゃないか、それとも、言い直そうか? ローレンスの参謀である俺が保障してやる、お前はプロに成れる」
すると、美羽は余程嬉しかったのか、泣いて抱きついてきた。
「おいおい、そんなに喜ぶことか?」
おっと、不味い。
こんな所を他の誰かに見られたら、変な誤解を……。
そう思い入り口に目をやると、目を細くして、厳しい視線を送る二つの影。
刀真は、慌てて美羽を引き剥がし、焦ったせいもあって、まるで言い訳のような真実を雅と紗奈に語りだした。
「いやな、安西が、ドライバーしたいって言ってな」
「ドライバーしたいって言ったら、抱きつくんですかぁ? 怖いわー、いつかアタシや飛鳥も、抱きつかれるのかしら?」
「いやいや、何を言ってるんだ東儀、そうじゃない! 安西にも、思うところが有ってだな」
「へぇ~」と、明らかに疑う、4つの瞳。
「安西、お前からも説明を」
「先生が、お前をプロにしてやるって」
へ?
安西さん、ちょっとニュアンスが違いますよ?
「はぁ? プロにしてやるから、嫌がる安西さんに関係を迫ったと?」
「ちげーよ、北川! 誤解だ!」
「だって、泣いてるじゃないですか!」
いつも、変なトコだけ鋭いな北川ーッ!
刀真は、神に祈るような思いで手を合わせ、美羽に懇願する。
「なぁ、安西、お願いだから、本当の事を言ってやってくれ! ほら、あんなに楽しくドライバーやってたじゃないか!」
つい口が滑り、一人芝居を聞いてたことを明かしてしまう。
すると、美羽は恥ずかしさも相俟って号泣。
睨みながら、刀真へと詰め寄る、雅と紗奈。
「違う! 違うんだ! 違うんだってばぁぁぁーーーッ!」
読んでくれて、ありがとう。




