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第64話「校風」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。

 桃李成蹊とうりせいけい女学院の敷地面積は、凡そ7000万平方メートルと、大学並みの広さが在る。

 それは、一学年AからZまでの計26クラスも在る為だ。

 しかし、それはマンモス校という訳ではなく、一般的な学校のクラス人数(50名ほど)とは異なり、1クラスの定員が20名なのだ。

 その定員数とは、進学塾などが提唱する『生徒が十分に学べる、教師と生徒の比率、教師1名に対してする生徒の最大12名』から、一学科教師を2人体制にすることによって、導き出された生徒数だった。

 創設時は、1クラス60名の生徒で教師4人体制を行っていたのだが、授業に付いて行けない生徒の為のサポートである筈の教師が、まるで監視役のようになってしまい、成績は良いもののストレスを抱える生徒が多く出たことを受け、5年の時を経て、ようやく現状の体制に落ち着く。

 とはいえ、未だに現状をベストとは考えておらず、日々、生徒の為に体制は進化させて行く、授業を録画し、いつでも観れる状態にしたり、生徒の精神面でのサポートも率先的に行っている為、いじめに関しても、早期の段階で見つけ、解決に導けたりもした。


 だが、ここまで生徒第一主義な学校であるにも関わらず、その受験倍率はというと、それほど高くは無い。

 それは、何故か?

 至って簡単な理由で、授業料が異常に高いのだ。

 これが『お嬢様学校』と呼ばれてしまう、所以ゆえんである。

 しかし、まだまだ先の話になるのだが、後にこの学院、ENで通えるようになる。

 そう、東儀姉妹率いるゲーム部が、後に大きく貢献することになるからだ。



「吉田先生」


「なんでしょう?」


「すみません、ちょっと東儀飛鳥についてなんですが……」


 刀真は、まず、飛鳥の情報を得る前に、担任の承諾を得ようとした。

 それは、本来担任の仕事である筈の行為を、担任でもない刀真が行おうとしているからだ。


「ほぉ、虎塚先生、お目が高い」


「はい?」


「確かに、姉ほど完成された美しさではありませんが、彼女もまた、その資質を感じます」


「あの~、そう言う事ではなく、成績の話なんですが……」


「私も、そのつもりですが?」


「え?」


「美を保つ、また、美を目指すという事は……」


 あ、そうだ、この人、美術教師だった……。


「ご覧なさい、皆、こうして美しく成長するのです」


 見せられたタブレットには、生徒たちの写真が綺麗に撮られ、中には水着も入っていた。


「こ、これはマズくないですか?」


 水着写真を指差す刀真に、吉田は激高する。


「何を言ってるんですか! 貴方は、私が生徒を性的対象にしていると思っているんですかーッ! 私は生徒に許可を得た上で、写真を撮り、美しく成長したことを褒めたり、ここの肉を落としなさいとか、歩き方が悪いのを注意したりしているのです。しかも、写真は、私とその生徒以外は所持しません」


「す、すみませんでした」


 謝罪したにも関わらず、懇々《こんこん》と説教をされ、更に釘まで刺される。


「全く……生徒が18になるのを待って、結婚を迫るような教師にだけは、ならないでくださいね!」


「それは大丈夫です。あの~、話を戻しますが、東儀飛鳥の成績が気になりますので、担当教員ではありませんが、調べさせてもらっても、宜しいでしょうか?」


 その言葉に、吉田の頬がピクッと動いた。


「貴方ね、まだ入学から一ヶ月も経ってないのですよ。判断するには、時期尚早です!」


「先生の仰る通りです。ですが、生徒に対して遅いという判断はあっても、早いということは決してないと考えます!」


 しまった、勢い余って言ってしまった。

 これじゃ、吉田先生の判断が遅いと言ってるようなモンじゃないか……。


 だが、この発言に吉田はニッコリと微笑んだ。


「素晴らしい、貴方に教育の美学を見ました。流石、校長が連れて来られただけのことはありますね。いいでしょう、虎塚先生、お好きなようにしてください」


「ありがとうございます」


 あぁ、面倒臭かったー。


 その後、刀真は安西美羽あんざいみうの担任とも接触を試み、そちらはすんなりと承諾を得れた。

 調べた結果、美羽と数学を除いた飛鳥の成績は、苦手意識から来るものだと判断できた。


「単純計算での間違いは、全く無いんだが、公式に入ると、空欄が目立つな……何処で引っ掛かってるんだ?」


「虎塚先生、これを」


 飛鳥の数学担当教員である佐藤がタブレットを差し出し見せたのは、受験での飛鳥の答案。


「これは……」


 三角形の一つの角度を求める問題で、直角三角形の絵に90度と60度が書かれてあり、残りの角度はという問題。


「始めこれを見た時は、意味が解らなかったんですが、角度を測って驚きましたよ、合ってるんです! 先生もご存知でしょうが、ウチの試験はタブレットで行うため、筆記用具の所持を認めないんですよね。分度器を隠し持っていたのかとも考えましたが、通常の分度器では、小数点以下2桁は出せないんです」


「よく、調べましたね」


「当然です。受験は、生徒の一生問題ですからね。不正していないのに、不正を犯したとして不合格を言い渡すことは出来ません」


「ありがとうございます、これで謎は解けました」


「え? 何か解ったんですか?」


「はい。あいつは……ただの頑固者なんですよ」

読んでくれて、ありがとう。

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