第54話「チェス・プロブレム」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/08/13 加筆修正。
GTWには、デザインコンテストが在る。
ドライバーの使用数が票に直結され、その数の多い作品が賞に選ばれるシステムだ。
最優秀作品には、30億円が贈られ、賞金総額は100億円となっている。
飛鳥は、そんなデザインコンテストに投稿されているステッカー群から、GTX1000に合う物がないかを探していた。
しかし、ゲームをしている訳では無い事と、投稿数もかなり多い事から、若干飽きてきた飛鳥は、ラルフにアプリ内通話を掛ける。
「一つ聞いていいか? お前、時差って知ってる?」
「ねぇねぇ、ラルさん」
「質問に答えろ! そして、フを付けろ!」
「ルイスってさー、オペレーター居るの?」
「あぁ、居るぞ」
AIってのは、内緒だがな。
「ふぅーん」
「なんだ? オペレーターの必要性を感じてるのか?」
「んー、独りで遣りたいんだけどさー、ヨハンのレーザーが避けれないんだよねー。突然、バッて来るからさー。オペレーター居たら、避けれるんでしょ?」
「そう思っている内は、ヨハンには勝てんぞ」
「え?」
「勘違いしてるかもしれんから言うが、ヨハンはあんな手を使わなくても、5位には入れる実力がある」
「え! だったら、なんであんなことしてるの?」
「ヤツが誰よりも、プロフェッショナルだからさ」
「はぁ? 何それ? 意味わかんないだけど!」
「あ、お前、あれから3回も負けてるのか!」
「なに調べてんのよーッ!」
「お前、ちったー気をつけろよ。このまま負け続けたら、筐体取り上げるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! ステッカーさえ出来れば、あんな奴、やっつけてやるんだから!」
「それマジで言ってんのか? そんなんで勝てないのは、解ってんだろ?」
「あ! そうそう、ローレンスって居るじゃん」
「話し変えんな」
「それはもう、い・い・か・ら・聞・い・て!」
「はいはい、で、ローレンスがなんだ?」
「ウチの学校に、スパイ送り込んでたのよ!」
「はぁ? ローレンスがか?」
「そう! 全くもぅ、そこまでする、普通? しかもさぁ、アタシたちのゲーム部の顧問になってたのよ」
ん? 確か、刀真がゲーム部の顧問になったって、タイガーが言ってたよーな?
疑問に思ったラルフは、刀真に急いでメッセージを送る。
[ お前、いつからローレンスの手下になったんだ? ]
[ 東儀飛鳥と話してるのか? 済まない、話を合わせといてくれ。事情は、後で説明する。 ]
「でね、それが判ったのに、お姉ちゃんたち、そいつに教わるって言うのよ」
「そいつの名前は、なんて言うんだ?」
「虎塚刀真」
「あぁ、あいつか……」
「知ってるの?」
「お前も教わってみたら、どうだ?」
「嫌よ、スパイなんかに、敵じゃない!」
「ヨハンに、勝てるかもしれんぞ」
「え?」
「虎塚は、凄い優秀な奴だ。虎塚に教われば、間違いなくヨハンに勝てるだろうな。もしかしたら、ルイスにも勝てるかもな」
「サーベルタイガーは?」
「それは判らん」
「え? ルイスよりも強いの?」
「戦わなくなって半年以上経つからな、今は判らんが……俺はそれでも、サーベルタイガーの方が上だと思ってる。じゃなかったら『倒したら1億』なんて言わねーよ。あぁそうだ、お前に一つ教えといてやる」
「なに?」
「サーベルタイガーに、オペレーターは居ない」
「え!」
「そして、間違いなく、対戦すればヨハンにも勝つだろうな」
「どうして? サーベルタイガーなら、避けれるって言うの?」
「問題ないだろうな。奴は視野が広いからな」
「視野が広い?」
「そうだ。サーベルタイガーは、オペレーター並の視野を広げるため、そこそこ動き回ってるんだ。そして、ヨハンのチェスプロブレムには、付き合わない」
「チェスプロブレム?」
「あぁ、詰め将棋のことさ。ルイスが言ってたんだがな、ヨハンはチェスプロブレムをしてるんだそうだ」
「……」
「ん? どうした?」
「解ったわ、ありがとう、ラルさん」
「だから、フを付けろ! おいコラ! まだ続きが! 切りやがった……」
――奴には、クイーンが居る。
それは、ヨハンのクレームの山が毎日のように続き、自分の判断が間違っているかどうかを確認する為、会議を開いた時にルイスが言った、ヨハンの強さだった。
「ヨハンについて、お前たちの見解を聞きたい?」
まず、口火を切ったのはローレンスだったのだが、その答えは意外なものだった。
「俺は、ヨハンと戦ったことが無いんだ。だから、この会議に参加する資格が無いと思う」
「え? お前ほど、戦績あるのに、戦ったこと無いのか? 何故だ、ヨハンがローレンスを狙わない理由でもあるのか?」
その質問に、ルイスは笑って答える。
「簡単な理由さ。奴は、このゲームでチェスプロブレムをやってるんだよ」
「チェスプロブレム?」
「そうだ。タイガー、お前も、このゲームで『詰め将棋』を持ち込む感じだよな?」
「敢えて言い換えるということは……ヨハンのは、成らないということか?」
「そうだ、流石だなタイガー」
帯牙の仕掛ける戦術は、ベースはあるものの、戦局によって臨機応変に対応する為、場合によっては『歩』が『と』に成ることがある。
「それでなんで、俺を避ける?」
「お前んトコには、優秀なオペレーターが1000人も居るだろ。奴からしたら、チェスのプロが1000人居るようなもんだ。幾らチェスに自信があっても、アマ3段程度がだ、プロ1000人相手にやるか?」
「なるほどな」
「奴は、ポーンをポーンとしてしか使わん。ただ、時にはその中にナイトやルーク、ビショップも混ざっている事があるんだ。だが、それは大した問題じゃない。問題なのは、奴にクイーンが居る事だ」
読んでくれて、ありがとう。




