第36話「ゲームの申し子」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
「なんで両足を? アイツに足を狙われたから?」
以前の雅なら、妹の助言を素直に受け入れられずに「それは結果論でしょ!」と言ってしまうところだが、今は違う。
たった20分だが、あれだけ凄いプレイを見せられたのだ、きっと訳があるに違いないと考えるようになっていた。
「足を狙われたのは、結果論だよ。切れば勝ってたとかじゃなくて、このゲームってさ、割りとリアルに作られてる部分が多くって、変形したら空気抵抗受けて遅くなるじゃん。機体のバランスが悪いままで闘いを続けるのは、このゲームでは不利なんだよ」
確かに、その通りだ。
あの時、負けたくない一心で、足を切った。
勿論、その後、闘うつもりでいたけど……、
逃げれて、一瞬、安心してしまったのかな?
否、そもそも、両足切る考えは、アタシには無かった。
凄いなぁ、飛鳥、腕もだけど、発想も……。
ゲームの神様に愛されてるって感じだわ。
「ねぇねぇ、飛鳥ちゃん。もし、あの時、オペレーターしてたら、どうしてた?」
「え? まだ慣れてないから、よく解らないけど……1対1の勝負だったから、8本の足を見てたと思う」
8本監視すると答えた飛鳥に、雅が質問する。
「ねぇ、飛鳥なら、1本斬ったら、残り7本って思う?」
「思わないよ。さっきも言ったけど、このゲームって、変にリアルなトコあるじゃん。敵の武器とか盾とか使えるから、無くならない限り、使えるんだよ」
「あ、そっかー、なるほど。でも、アンタ凄いわね。まだ2週間も経ってないのに、そこまで理解してるなんて」
「えへへへ」
「ねぇねぇ、ちなみに1対1じゃなかったら違うの?」
「他にも敵が居るだろうから、敵の射程内のヤツだけ、お姉ちゃんに教えるかな?」
「あのさー、雅。不本意かもしれないけど、少しの間、飛鳥ちゃんのオペレーターとして使って欲しい。私が強くなる為にね。飛鳥ちゃんから、色々学びたいの」
「そうね、アタシも飛鳥から学ばないと……一緒に強くなろう」
「でもね、雅。アイツだけは、二人で倒そう」
「そうね、アイツだけは!」
こうして、色々な戦場に出向いて、色々な戦い方を雅も、紗奈も学んで行く。
飛鳥に索敵だけをお願いしたこともあって、堕とされることもあったが、日に日に、腕もランクも上がり、合宿が終わる頃には、77位まで来ていた。
「お姉ちゃん! 今ね、ラルさんから連絡あって、お姉ちゃんの筐体置く場所が決まったってさ」
「え? 何処?」
「学校だって」
「学校?」
「うん、桃李」
「ということは……部活にしないと、遅くまで出来そうにないわね」
「そうね、確か、部にするには、5人必要なんだっけ? あと二人かぁ……」
「私に心当たりあるから、声掛けてみるよ」
「ありがとう、紗奈、お願いするわ」
場所の問題が片付いたところで、もう一つの疑問が頭を過ぎる。
「アンタ、ラルさんって、もしかして、ラルフ・メイフィールドだよね? あれから、ずっと連絡取ってたの?」
「ずっとじゃないよ、たま~に電話掛かってくるの。まだ色決めてるのにさー、ラルさん、ゲームしろしろって、五月蝿くてさー。ステッカーだって、貼りたいっていうのにぃ!」
「え! アンタ、まだ色着けやってんの?」
「あとちょっと、もうちょっとカッコ良くしたいんだぁ。なのにラルさん、取り上げるぞ!って言うんだよ。全く、デリカシーないよねー」
「アンタ、今、何位なの?」
すると、飛鳥はスマートフォンでインベイドのアプリを起動し、順位の確認をする。
「えーっと、今は……せん、さんびゃくぅ……」
「アンタ、すぐやりなさい!」
「えー、お姉ちゃんまで!」
シリコンバレーに在るインベイド本社、データ解析室。
突然鳴った警報に、特別データ解析班は、その対応をする為、或る者は目を覚ます為に顔を叩き、或る者はグッと背を伸ばし、或る者は必要最低限の準備だけして、トイレへ駆け込んだ。
「ジョー、やっと動いたわよ。シリアルキラー」
「やっとか……社長に知らせてくる」
主任のジョージ・メイブリックは、仮眠しているであろう社長の下へと走る。
すると、数分もしない内に、大きな欠伸を伴って、ラルフが入って来た。
「どうだ?」
ラルフは、シリアルキラーの監視をしているニコル・パーカーに話し掛けた。
「順調に倒して、順位を戻してますよ。このペースを保てれば、2時間後には1000を切りそうですね」
「全く、あの馬鹿、こっちの気も知らないで……」
「でも、副社長やサーベルタイガーのように、テストプレイヤーの社員にしてしまえば、良かったのでは?」
「いいや、駄目だ。そんなことしてみろ、アイツのことだ。今度はステッカーが!とか言い出しかねない」
読んでくれて、ありがとう。




