第30話「ヤマタノオロチ」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
「どいつも、こいつも、弱い弱い!」
「ちゃいますよ、兄やんが強過ぎるだけですわー」
「お前、上手いこと言うなぁ~、給料上げたろ」
「アザース! 兄やんに、一生ついて行きますわ!」
「ワレ、ストーカーかよ!」
ガハハハと、下品な笑いが室内に響いた。
ドライバー『オロチ』のGTWランクは、37位まで来ており、最早、玉座を手にするのも、時間の問題だと思われた。
そんな一方的な強さを見せつけていた或る日、戦場で絶好の相手を見つける。
――ランキング2位、ルイス・グラナド。
「えぇ、カモが居るやんけ! コイツを墜として、ワイは王に成るで!」
嬉々として、戦いを挑んだ相手は、自分がお得意様にしている機種のGTX。
「カッコだけの乗りモンで、ワイに勝てると思うなよ!」
オロチは、性能よりも変形というカッコ良さだけで選ばれる、そんなGTXが嫌いだった。
勿論、それを選ぶようなドライバーもだ。
そんな気持ちからか、闘いのコツを掴んだその日から、GTXに負けないようになっていた。
だが、ルイスの操るGTX555は、他のGTXとは明らかに違う動きを見せる。
「ちょこまか、ちょこまかと、ランク2位は、逃げて取ったんかーッ?」
圧倒的に、オロチの方が優勢かと思われたのだが、突然、ルイスの動きが変わる。
まるで今までは、ウォーミングアップだったと言わんばかりに、全ての攻撃が後手後手に回り、追いつけなくなった時、首を刎ねられ、呆気なく勝負が付いた。
「じ、GTXなんかに……ちくしょぉぉぉぉぉーーーッ!!」
オロチは、悔しさの余り、怒りで眩暈がするほどに叫んだ。
絶対の自信を持っていた機種に、しかも運不運やミスで負けた訳じゃなく、圧倒的な差を見せ付けられたのである。
オロチは、ルイスへの復讐を誓い、その悔しさを忘れない為に、ドライバーネームを変える。
「和也、オロチの名を預かってくれ!」
「えぇーッ! 俺、KAZで登録してるのに!」
「給料上げたるから、お願いや。ワイがルイスに勝つまで、預かってくれ!」
自信家でお調子者の兄やんが、俺にお願いするなんて……。
相当、悔しいんやろうなぁ。
「しゃーないなー。で、預かるんはえぇとして、兄やん、これから名前、どうすんの?」
「ワイは、一度死んだ。死んだ龍や……」
この日から、オロチは、スカルドラゴンとして生まれ変わる。
来る日も来る日も、打倒ルイスの研究を続けた。
テストプレイに明け暮れ、順位も落とした。
今まで乗って来たGTR3000の調整を繰り返していたものの、イマイチ手応えを感じれず、新機種の構想に踏み切りもした。
「兄やん! 俺、えぇ武器思いついた!」
そう言って、仕様と武器の絵を描かいたメモを手渡した。
「鞭か?」
「いいや、伸び縮みするワイヤーや! 鞭として使うことも出来るし、クルクル回せば盾にもなる」
「ほぉ~、で、どうやって伸び縮みさせるんや?」
それを聞いたのには訳が有る、ゲーム世界とはいえ、リアルで再現出来る物の方が、申請が通り易いからだ。
「オリハルコンで出来た武器で、なんでも一撃で斬れます」などと言われても、世界観はともかくとして、そんな物を実装したら、ゲームバランスが崩れてしまう。
和也は、更に仕様を詰めて行き、運営を唸らせるようなギリギリのバランスを狙う。
この武器の伸縮は、蛇腹構造と伸縮式釣竿の構造を併せ持ち、耐久は剣なら1回、銃なら同じ箇所に2回の攻撃で切断されるが、切断されても、武器そのものが消える事はない。
「もっと、耐久値上げた方が、えぇんとちゃうんか?」
「いいや、これでえぇんよ。武器が消えへん事が、この武器の味噌なんよ」
「そうか! 斬られても、短いままで使えるってことか!」
「流石、兄やんその通り。それとな、同じ箇所って言葉が重要なんよ。銃で同じ箇所に、二度当てるなんて、まぁ無理や」
「和也! お前……賢いやないか!」
「でも、これ通ればの話やで」
こうして、和也は新しい機体と武器の申請を出し、数日後、結果が出る。
「兄やん、通ったで!」
「でかした!」
しかし、改めて申請が通った仕様を見て、スカルドラゴンは首を傾げる。
「あれ? 和也、武器、ワイヤーだけになっとるぞ? あれ? 盾もあらへんやんけ」
「武器も盾も無くした。ワイヤーに爪つけたし、あと、8本持つ為には、仕方なかったんや」
「8本?」
「そうや、ヤマタノオロチや!」
「おぉ! お前、嬉しいこと言ってくれるやんけ! あれ? でも、武器の名前、ドラゴンズクローやな」
「あぁ、俺もな、爪よりも、口にしたかったんやけどさぁ~。ドラゴンズマウスって、ダサいやろ?」
「お前……牙って、英語知らんのか?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
読んでくれて、ありがとう。




