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め
わたげを飛ばす時には耳を塞いで
そうしないと
わたげが耳の中に入ってしまって
いつか芽を出してしまうから
僕にそう教えてくれた人は
既にわたげの苗床に
なり果ててしまいました
きっとずっとずっとずっと
わたげを飛ばし続けた僕の
たくさんたくさん飛ばしたわたげが
少しずつ少しずつ入っていって
芽を出してしまったんです
わたげと一緒に飛ばした言葉は
耳を塞いだ手を通り越して
より奥へ奥へと入っていって
わたげよりも一足早く
頭の奥で芽吹いたのです
種は
どんなものを運びましたか
好きという気持ちと
嫌いという気持ちと
他にどんなものを運びましたか
著しく湿った場所も
著しく乾いた場所も
きっとなくて
だからすくすくと育ったのですね
だんだんと蝕まれていったのですね
僕は今
わたげを吹くたび耳を塞ぎます
僕の言葉は
手を超えて僕には届きません
だってあなたのわたげが
耳に詰まっていますから