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その6!机上のロリコン

なんて日だ!


〜バイキング小峠〜

虎は荒野を行く。

例え孤独でも。

どんなにボロボロになろうとも。

脇目も振らずにただ真っ直ぐに。


お前は、虎になれ。

どんな不条理にも、どんな逆風にも負けない。

孤高の獣のように、気高く生きろ。


それが、最高にかっこいい男になるための心構えだ。


「その言葉を聞いた時、俺はあの人に一生ついて行こうと思った」

、ぁ、ぃゃ、兄貴さんがそんな事を……」


 おやおや?舎弟さんが何かいい話し風に語ってるぞ!


 やばいやばいマジやばいって。今あの人のカッコいい話しとか聞いたらマジ笑っちゃうから。本当に下腹部に響くから!アイアムアンダーお腹ベリベリー痛いアユオケー?だってほら、結論から言えばあれでしょ?虎だと思っていた人は実は豚で、現在、(国家の)犬のお世話になってるわけでしょ?本当の気持ち隠してるカメレオンでも大声で笑うわ!


「今ポークとか言いかけた?なぁ言いかけたよな?」

「言いがかりです」

「勃ちゃあ猫くらいにはなるかもしれねーだろ!?」

「せめて受け入れてあげよ!?あるがままのサイズを」


 そういう期待が本番に響く人だって、いると思う。

 と、そこでパチンパチンと乾いた音が2回響いた。


「はいはい、無駄に体力使うやりとり中止」


 丸之内さんが手を叩きながら、僕と舎弟さんの間に割って入った。


「タチとかネコとか攻めとか受けとか、そんな事で言い争うのは後にして!」

「「そんな事では言い争ってねーよ!!」」



閑話休題



「とにかく俺が鉄骨を渡るから、大丈夫そうならお前ら後から続け!いいな?」

「おけおけ」


 そんなこんなで鉄骨を渡り始めた舎弟さん。

 意外にも順調に事は進み、ゴールまで残り少し、といった所で事件は発生した。


「!?」


 突然の暗転。天井がスクリーンと化し、どこかのオフィスと思わしき情景が映し出される。ああ、これはあれか。ポークビッツ輩先やキザイケメンの時と同じやつ。そういえばこのステージは、漏らすまで落ち続けて、漏らしたら転移するんだっけか。そうだよ、忘れてたけどOLさんの公開処刑まだ出てないじゃん!


「大丈夫ですかー!!?」


 丸之内さんが舎弟さんの安否を確認するため、声を張り上げる。


「クソが!俺が渡りきるまで待てねえのかよ!」

「この闇の中で動くのは危ない!終わるまで待つしかないよ!」

「ああ、わかってるよ畜生!」


 僕の安否確認に返事ができるだけ、まだ余裕がありそうで安心した。BBAに続いて野郎の放尿シーンなんて死んでも見たくないからね!あ、これは別にあいちゃんのなら見てもいいとか、そういう意味じゃないよ!おい、画面の前のお前。そんな目で僕を見るな。


『あばばばばばばばば』


 スクリーンの中に泡を吹いて床に倒れ込むOLさんが現れる。

 そして、地獄のショータイムが開幕のベルを鳴らし始まるのであった。













「いやぁ、嫌なものを見ちゃったよね」

「ちょっとかわいそうでした」


 暗転が解かれた部屋の中、女性陣がゲッソリとした表情で話しているのを横目に見ながら僕は思った。


 あれ?なんか時、飛んでない?


「どうしたの?土方?」


「あ、あぁ丸之内さん。さっきOLさんが落ちて暗転したと思ったら知らない間に明るくなってたんだ!ちょっと何を言っているかわからないかもしれないけど、僕も何が起きたのかよくわかってなくて。頭がおかしくなりそうだよ!催眠術とか超能力みたいなチャチなものじゃない、何か恐ろしい事が起こったに違いないってこれ!!」


「え?土方も一緒に見てたじゃん、叫びながら」

「叫びながら!?」

「しかも途中からヘドバンし始めて」

「馬鹿な!?」


 そんな記憶はまったくないぞ!?

 大人の事情でカットされたんじゃないのか!?


「あの後、OLさんが会社の同僚さん達と密かに狙ってた後輩くんの前でガニ股ポーズで固まったまま」


「あ、あの。おねーちゃん」


「あっ!あいちゃんはお耳を塞いで向こうで待っててね!それでね、土方。OLさんが」


「ろくのすけさん、立ちながら気絶してるよ?」


「えっ」


 説明しよう。土方六乃助はとある一定の年齢を超えた女性のあまり美しくない話しを聞くと、心が負荷に耐えきれず気絶してしまうのである。これはあくまで、六乃助本人の趣向の問題であって、どこかの女性団体に喧嘩を売っている訳ではない事をあらかじめ説明させてもらおう!







「あれ?丸之内さん。なんか時、飛んでない?」


「もういいわ。思い出さない方がOLさんも救われると思うから」


 丸之内さんは、何故だか知らないけれど大きな溜め息を吐き出した。僕が首を傾げていると、対岸から舎弟さんの声が反響して僕の耳に届いた。


「おーい!お前ら!見てたか俺の勇姿を!気合いで鉄骨渡りきったぜ!」


 え、どうしよう。全然見てなかった。

 僕は丸之内さんとあいちゃんにこっそりと目配せする。

 彼女達は小さく顔を横に振った。


 ……誰も見てなかったっぽい。


「あ、はっ、はい勿論です!すごいですね!いやぁー、実に格好良かった!」


「へへっ!これが虎の意地ってヤツだい!ざまぁみさらせ黒幕野郎!」


 適当に褒めておいた。女性陣二人は調子の良い奴め、と言わんばかりの目で僕を見ているけれど気にしない。事実すこぶる調子が良い。まるで、嫌な記憶が頭の中から抜け落ちたようだ。


「お前らもさっさと渡って来いよ!」


 と、舎弟さんに言われて少し考える。改めて目視してみると、対岸まではそこそこの距離がある。万全な体調ならともかく、ダムクラッシュ寸前の現状、底なしの闇に架かる1本の鉄骨に足を踏み出す勇気はなかなか湧いてこない。てか怖い。あの人に出来たからと言って僕達に出来るとは限らないのだ。


 なんだか調子が悪くなってきた。


「丸之内さんは運動部だから余裕だよね!お先にどうぞ」

「は?今それ関係なくない?土方が行きなよ」

「いやいや、レディファーストだから」

「こんな時ばかり!男子だったら先陣を突っ走るくらいしてもいいんじゃないの!?」

「何イライラしてるのさ!?生理か、生理なのか?僕、生理が来てる女の子とは仲良くなれない!」

「死ね!ロリコン!!」


 もともと顔見知りという事もあり、切迫した状況にストレスを抱えきれなくなった僕達は口論を始めてしまった。それがよくなかった。


「うぅ、けんか、よくないですよぉ」


 あいちゃんが今にも泣き出しそうな目で僕達を見ている。いや、僕を見ている!僕だけを!!きっと!!!おっといけない、発病してしまった。自重自重っと。いや、それは今どうでもよくて。


「わ〜、あいちゃんごめんね!」

「僕達が無神経だったよ!」


 二人してあいちゃんを宥める。


「ううん、大丈夫。ふたりの気持ちもわかるもん。あいもあの棒、わたるのこわい」


 そうだ。僕達だって怖いんだ。あいちゃんが怖くない訳がない!何やってるんだ僕のくそったれ!早くあいちゃんを安全に対岸まで送り届けないと!!そうだ、僕はきっとあいちゃんを救うためにこの場所に呼ばれたんだ、いや、この日のためにこの世に生を受けたに違いない!


「待ってて、あいちゃん!」


 僕は前の部屋に戻り、ジャグの置いてあった四脚テーブルを横倒しにして脇に抱える。


「ちょ、ちょっと土方どうしたの!?気でも狂った!?」


 丸之内さんが僕を心配してくれる。……心配してるんだよね?ディスりたいだけじゃないよね?そんな言葉に答えを返す事もなく、僕は馬号のもとに駆け寄り、残った二台を時間差をつけて起動させる。


「え、ちょっと土方?」


 丸之内さん、わかってるよ。僕は馬号に乗りたい訳じゃない。馬号に乗ってもこいつは振り落としにかかってくる。けどこいつが大きく揺れるのは、人が乗る上の部分だけなんだ。つまり縦に並んで動き出した二台の馬号の土台、そこに脚を上にした反対の向きでテーブルを乗せれば……。


「完成だよ!さあ、あいちゃん乗って!あ、ついでに丸之内さんも」


 そう。3、4人なら平気で乗れる簡易馬車の出来上がりである。


「す、すご〜い!」

「や、やるじゃん」


 あいちゃんは嬉しそうにテーブル馬車に乗り込む。丸之内さんは少し不服そうだけど、どこか安心しているようにも見えた。


 こうして僕達は無事、何事もなく対岸へと辿り着いたのであった。


「おい」


「あ、舎弟さん!お待たせしました!」


「俺、これ自力で渡る必要あったか?」






 三人は静かに目を反らした。



 

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