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魔獣使いのおっさん魔術師  作者: ニット坊
第1章 師匠と弟子
7/13

第7話「僕のこれから」

短いです

 赤い封筒が届いたとき、アルツェンはこの上なく嬉しかった。

毎日医学書を読み漁り、実習をして、朝から晩まで病院の中で完結する毎日にピリオドをうてることが一番大きかったのかもしれない。勿論医療魔術師になりたくないわけではない。むしろそれになることがアルツェン・シュバイツァーという青年の人生において、ひいてはシュバイツァー家にとって重要なことなのだ。


 しかし、どうやらそれは叶わないらしい。


アルツェンには医療魔術以外の才能がないことが、ジークとの最初の修行で判明した。魔術を実行するに()()()()()()、つまり医療魔術の修練で培った繊細な魔力コントロール力はあるとジークは見込んでアルツェンに赤い封筒を送った。そのジークも才能までは考慮していなかった。考慮しないことを浅はかだったと捉えるべきか、あるいは考える必要もないほど当たり前のことなのか。魔獣錬成の魔導書はほとんどの人間が適合する。誰でもできるが故にアルツェンにも当然この程度はこなせると思い込んでいたのだろう。


アルツェンは己の才能がないことに悲しみともいえない感情に襲われ、首をうなだれている。


「まぁまぁ、そう落ち込むなってアル、帰れなんて言わないよ。折角来てもらったんだからな」


部屋を移動し、小さな応接間のようなところでジークとアルツェンは佇んでいる。

ジークはジャケットを脱いで、ゆったりと椅子に座る。葉巻に今度は魔術で火を付け、一息吐いた。


「でも、僕は明日から何をすればいいんでしょう? 適合する魔導書がない以上、修行もできないし、ここに居続けても何か迷惑かけちゃいそうですし……」


 うーん、とジークは数分考え込む。数分後、何か思いついたような顔をしてアルに提案する。


「とりあえず今日考えるわ。もう特にやることないしアリアネの買い物の手伝いにでも行ってこい」


 どうやら思いついてはいなかったようだ。アルツェンはもうしばらくはここに居ることができると分かって少し安心した。つい数日前、家を出たばかりなのにもう戻って来るなんて恥ずかしいにもほどがある。


アルツェンは部屋を出て、キッチンに向かった。シンクを掃除していたアリアネにジークから今日の買い物の手伝いをするように言われた旨を伝えた。


「あら、アル私の買い物の手伝ってくれるのね。毎週買いだめするから重くて大変なの。助かるよ」


 2時間後玄関前で待ち合わせをし、そこから町へ出ることになった。


(アリアネと買い物かぁ、なんだかちょっとしたデートみたいだな……)

 

 さっきまでの落ち込みはどこへやら。そんなことを思い、少しニタニタしていたら後ろから強い殺気を感じた。


「おい、アル。もしも買い物行ってる最中アリアネに何かあったら……いやお前が何かしたら魔獣の餌にするからな? 分かってるよな、おい?」


 ジークは両隣に魔犬を連れ、威圧を込めた声で話す。もうこの瞬間餌にする気にしか見えない。


「だ、大丈夫ですよ師匠、ほら、僕落ち込んでるんでそんなことしてる気持ちの余裕もないですよ」


 なんとも意味不明な弁明であるが、ジークはそれで納得したのか魔犬を引っ込め自分の部屋に行ってしまった。

 

 アルツェンは今日買うもののメモを作ろうと先ほどまでいた応接間に戻る。部屋のテーブルの中央に黄色の正方形のメモ帳が置いてあることを覚えていた。部屋に入ると記憶通り、テーブルの上にメモ帳がある。上から3枚取ると、4枚目の紙に走り書きをしたような後があった。あまりに雑な字なので解読は難しそうだが、買い物まで時間があるので暇つぶしにアルツェンは読み解いてみることにした。


 小さな椅子に座り、じっくりと文字を眺めてみる。恐らくアルファベットだろうか。字の切れ目から考えるに6文字であることは間違いない。その文字の並びに上から赤い筆でバツと書かれている。紙越しに電球をみるようにして、強い光で紙を透けさせると多少読みやすくなった。最初の文字が「L」で次が「U」、途中は分からず最後が「A」。一体何を表しているのだろう。これ以上は解読できなさそうだったので紙を戻し、出発までの残りの時間は部屋で読書をして過ごすことにした。


   *


 暗い森の中、既に歩き始めて5時間以上は経過した。準備は万全、後はこの森を抜けるだけ。抜けた先には大勢の人が集まる場所に近いらしい。実に素晴らしい。自分の目的のものを探すのにはうってつけだ。魔力も十分余剰がある。黒い服を身にまとったある男は暗い森の中を音も立てずにただ一人で黙々と歩き続けた。けたたましい獣の鳴き声も耳に入らんとし、足が木の根に引っ掛かりそうなものなら木の根を魔術で消し飛ばした。誰にも邪魔させない。それは人であってもモノであってもだと言わんばかりの顔で、その歩みを止めない。


 それにしても最後に血を見たのはいつだったか、数週間前か。この男にとって人生における喜びは誰かを殺すこと。勿論、しっかりとした目的を持ってだ。目的のない殺しは殺人、目的のある殺人は()()だとかこの男は考えている。大人になるとき、好きなことを仕事にしようと考えた結果、今こうして充実した日々を送れている。人間が人間らしく生きるためには、やはり心の底からやりたいことを追求していくべきだ。



2年近く放棄してたのでしょうか……

また頑張って書いていきます

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