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プロローグ
終わるまでかなり短いですが、楽しんで下さったら幸いです。
リディーン邸は大騒ぎだった。
一人娘のエリザベスが、いきなり突拍子もないことを言い出したからである。
「どうしたって言うんだ、リズ!!」
驚きに満ちた声でそう言ったのは、この邸の主であり、彼女の父でもあるリディーン公爵だ。だが、本人は驚かれても叫ばれても決心を変える気はなかった。
「言った通りよ、お父様。わたくしはあの方と婚約解消いたします。それからしばらくはお祖母様のところへ参りますわ。あの方には決して言わないでちょうだいね。言ったらわたくしお父様と二度と口を聞きませんわ」
エリザベス――リズは混乱している父に向かって立て続けにまくしたて、僅かな荷物を持って家を出ていった。
「まったく、いきなりどうしたと言うのだ……」
未だに戸惑いと驚きの最中にいるリディーン家の人々は、ただ閉まったドアを見つめるばかりだった。