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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
騒乱 ルーン王国 編 
98/180

(8) アイディール学園の攻防

 クレマン・ラクロアは、今回のクーデターで戦力に己の私兵だけでなく、二束三文で呼び集めたゴロツキや盗賊、傭兵崩れなども動員していた。

 彼らへの成功報酬は、金や新たな体制の下での”身分”の保証。


 しかし、首謀者であるクレマンは拘束。

 彼の船に乗っていた私兵たちも、残らず騎士団に捕まってしまった。


 別ルートで王都に侵入していたゴロツキたちの大半も、行動を起こす前に警戒していた騎士団によって縄をかけられたのだが、中には経験と言う”嗅覚”で周りの異変を感じ取り、独自に行動を取る者たちがいた。


 あるものは、危険を察知し身の保身を図るために、王都から逃亡。


 そしてあるものは、多少の危険を冒してでも、”稼ぎ”を取りに行こうとしていた。



 学生区、アイディール学園正門前。


「ここだな?例の金持ち学校ってのは」

 お世辞にも綺麗とは言えない身なりの男たち三十人ほどが、手に剣や槍、斧といった凶器を持って、学園の中を覗いていた。


 先の同時多発テロとは違い、銃火器を所持するものは一人も居ない。

 これは、事件を受けて銃火器の一大生産国であるレヴォルツィオン帝国が、銃器の取り扱いを一層厳しくした結果である。


 さらに、ルーン王国内で出回っている銃は、所謂マスケット銃といわれる先込め式の物しかなく、精霊術を使った方が効果があるとして、ルーン王国では銃があまり普及していない要因にもなっている。

 

「あぁ、貴族どころか、王族まで通ってるって話だ。そこらの家を襲うより、よっぽどいいものが手に入るはずだぜ?」

 一人の言葉に、全員の目が妖しく光る。


 彼らは、混乱に乗じて、強盗を働こうと考えた者たちだ。


 他の者は、街中の宝石店などを襲撃しようと企てていたが、警戒している騎士団に呆気なく拘束されている。


 だから彼らは、比較的平穏を保っていた学生区。とりわけ、貴族学校といわれるアイディール学園に目をつけたのだった。


「まぁ、めぼしい物がなければ、王族や貴族のガキを攫えばいいさ!親を脅して身代金掠め取った後、奴隷商人にでも売っ払えば、二重に稼げる!!」

 現在、グラン・バース各国では奴隷制度が廃止される傾向にある。


 だが、需要がなくなったわけではなく、非合法な取引が今でも横行している。

 その中でも、貴族や王族の子女は様々な観点から高額で取引される”最高級品”と位置づけられていた。

 彼らは、あわよくば一攫千金を夢見る最低な集団だった。


「よっしゃ、いくぞ!!」

 意気揚々と学園の正門をくぐるゴロツキたち。

 

 校舎までの長い道を足早に進む彼らの前に、”壁”が立ちはだかった。


「本当に馬鹿どもが来たな」

 俊敏な動きを邪魔しない為に、最低限の部分にしか護られていない鎧を身に纏った女性が、ため息混じりに腰に下げた剣の柄に手を置いた。


「さすがは、祭事巫女様の予知。見事的中された」

 一団のなかで、もっとも高齢の男性が使い古された大きな鉞を肩に担ぐ。

 

「んだ?てめぇらは?」

 立ち止まったゴロツキたちは、目の前の一団を見て、すぐさま警戒するように腰を落とす。

「我々か?我々は、この学園の教師だよ」


 ゴロツキたちの前に立ちはだかったのは、アイディール学園高等部騎士クラスを受け持つ元騎士団所属の教師たちだった。

 そんな教師全員が、祭事巫女であるミユの予知を受け、現役時代使っていた装備一式を身に纏い、完全武装で待ち構えていたのだ。


「・・・・ふ、ふはははははは!!聞いたかよ、教師だってよ!」

「先生たちが生徒を護る為に頑張って出てきたってか!?感動して涙が出ちまうよ!」


 だが、ゴロツキたちが目の前の教師たちの正体を知る良しもなく、彼らの認識では言葉どおり「勇気を振り絞って出てきた先生」なのだった。

「しかも、たった十二人かよ!」

 しかも、自分たちの半分にも満たない人数に、その考えに拍車をかけている。


 そんなゴロツキたちの言葉に、短めの槍を両手に持った男性教師が、鼻で笑った。

「はっ、貴様ら小物程度、ここに居る者たちだけで十分なのさ」


 その言葉を受け、ゴロツキたちの目つきが変わる。

「・・・言ってくれるじゃねぇか・・・・・おい、お前ら!こいつら全員殺すなよ?こいつらの前で、ガキどもを無残な目に遭わせて殺し、自分たちの無力さを教えてから、殺してやる」


 殺気立つゴロツキたちを前に、教師たちは全員涼しい顔をしている。

「もう勝った気で居るのか?所詮は三流にもなれんゴロツキだな」

「吠え面掻くなよ!やっちまえ!」


 号砲一発。

 騎士クラス教師陣対ゴロツキたちの戦いの火蓋が切って落とされた時、それは現れた。


「?!なにっ!?」

 両陣営の間に割って入るように、複数の骸骨が突然現れた。

 その手には、これまた骨で出来た刺突剣が握られている。


「なんだ?こいつら?」

 竜の意匠を持つ骸骨―マギハが召喚した竜骨兵と呼ばれる魔物たちに、ゴロツキたちが武器を向けた瞬間、竜骨兵たちは一斉にゴロツキたちへ振り向き、手にした刺突剣を振りかざし襲い掛かった。


「ぎゃあ!!」

 凡そ人間の動きとは思えない、奇妙奇天烈な動きでゴロツキたちを肉薄し、滅多刺しにする骸骨たち。

「ま、まてよ・・・こいつらどこか・・ぐわっ!?」

 あまりの出来事に、後方に来たゴロツキが仲間を犠牲にして元来た道から逃げようと振り返ると、すでに正門から相当数の竜骨兵が侵入し、取り囲まれていた。


「ひ、ひぃぃ・・・た、たすけて・・・!!?」


 取り囲まれたゴロツキたちは、蟻にたかられる角砂糖のように襲われ、恐怖と絶望の中悲鳴だけを残し絶命した。


 ”旨み”の無くなったゴロツキたちに興味が失せたのか、竜骨兵たちが離れていく。


 その場に残ったのは、人間であったか分からないほど損壊した肉の塊だけだった。


 そして竜骨兵たちは、次の獲物に狙いを定める。


「・・・・皆、気を引き締めろ」

 自分たちが標的なったことを肌で感じ取り、教師たちは武器を構える。


「まさか、教師になって初めて命を賭ける場所に立つなんて・・・騎士団でもなかったのに」

 若い―とは言っても三十代前半―教師が、ため息混じりに短剣を構える。


「何を情けないことを!わしが若い頃なんて、それこそ戦場ばかりを駆けておったぞ!」

 鉞を担いだ老年の教師が、喝!とばかりに吠える。

「ゴート先生の時とは時代が違いますよ。この国は長い間、平和でしたから」


 目の前に広がる死地を前に、緊張していた教師たちから”固さ”が消えた。  

「来るぞ!!」


 竜骨兵たちが”津波”となって、一斉に教師たちへと駆け出す。

 圧倒的な物量の前に、武器を強く握り締める教師たち。


 そんな彼らの頭上に、影が落ちた。


「アクアレイン!!」


 迫り来る竜骨兵たちの頭上に水の膜が現れた瞬間、弾丸と化した雨が降り注いだ。

 粉々に撃ち砕かれる骸骨たちの傍に、何かを抱えた人影が舞い降りる、


「!!」

 抱えられた人物を見て、教師たちが息を飲んだ。

「ひ、姫様!?」

 そこに居たのは、学園内でも安全とされる演劇場や講堂に避難しているはずのフェリシアだった。


 フェリシアを抱えていたのは、昊斗そらとたちと同じデザインの戦闘服に身を包んだカグで、校舎の屋上から彼女を抱えて飛び降りてきたのだ。

 フェリシアを下ろし、唯一敷地に入れる正門に殺到する竜骨兵を威嚇するように睨むカグ。


 カグが魔物たちを抑えているのを確認し、地面に降り立ったフェリシアが、教師たちへと振り向く。


「先生方、助太刀にきました!」

 フェリシアの言葉に、全員が驚愕し、顎が外れそうになる。

「な、何を仰っているのです?!お下がりください!もし、万が一姫様の身に何かあれば・・・・」

 自国の姫を危険な目に遭わせられない、と教師たちが説得に入るが、フェリシアは居住まいを正した。


「”その身をもって国と民を護る”。ルーン王国国王が代々受け継いできた、信念です。いつかは、私もこの信念を背負う立場となります・・・・・いえ、私はこの信念をすでに背負っているものと考えています!」

「しかし・・・・・」

 揺るぎの無いフェリシアの眼に、言い淀む教師たち。


 すると、彼らの背後にある校舎の扉が開いた。

「”力と立場のある者は、責任を果たさなければならない”・・・・我が国の格言です・・・・。王族で〜ある以上〜〜それを〜行動で示さなければ〜〜・・・いけません〜」

 いつもの独特な言葉遣いで現れたアリエルと、二人の騎士を連れたヴィルヘルミナが教師たちの元へ歩いていく。

 

「あ、アリエル様!?」

「ヴィルヘルミナ様まで・・・・・」

「・・・・わたくしには、戦う力はございませんが、皇族として立たねばならない時は、弁えているつもりです」


 学園に居る姫君三人が、確固たる決意で今この場に立っていると知り、教師たちが言葉を詰まらせた。


「何を仰るのです、姫様。我々二人が、姫様の”剣”です」

「その通り!そして、我々だけでは無い!!」


 ペトラの声を受け、生徒たちが次々に外へと出て行こうとするが、学園長のメイが両手を広げて立ち塞がった。


「いけません。あなた方に何かあれば、親御さんから皆さんをお預かりしている者として、死んでも死に切れません」

 必死の形相で生徒を足止めするメイに、生徒会長のクレアが進み出た。

「先生・・・・・私たちは、フェリシア様たちの様な王族や皇族。そして貴族の子女であると同時に、この学園の生徒です。学園が危機に瀕している時に、じっとなどしていられません!」

 生徒会長のクレアの言葉を聞き、全員が肯く。


 騎士クラスや特別クラス。さらには志願した一般クラスなどの三年生が学園を護る為に、馳せ参じていた。


「クレアさん・・・それに、あなたたちまで」

 学園は、先の事件を受けて結界など守りを強化していた。


 だが、混乱のせいか騎士団と連絡がつかない今、もし校舎の結界が破られれば中の生徒たちはひとたまりも無い。

 ならば、騎士団と連絡が付き、救援がくるまで間、少しでも時間を稼ぐ必要がある。


 メイも、その事は十分に分かっていた。だが、そのために大切な生徒を危険な目に遭わせるわけにはいかない、と考えていたのだ。


 すると、騎士クラスの生徒たちが教官である、教師たちの元へと駆け寄る。

「教官殿!このような時のために、我々を鍛えてくださったのでは、ないのですか?!」

「教官たちの扱きは、何のためだったのですか?!教えてください!!」


 教え子たちの声を聞き、騎士クラスの教師たちは、自分たちは教え子を信じていなかった、と恥ずかしくなった。

 

「・・・・ふっ、そうだな。その通りだ!!お前たちを鍛えた我々が、お前たちを信じなくて誰が信じてやれるというのか!」

「!?」

 教師たちの言葉に、メイは二重の意味で言葉を失う。


 それは、学園長として先ほどクレア達に言った言葉が、”保身”のために言っていたことに気が付いたこと。そして、一教師として生徒たちを信じてあげられなくなっていた自分の変わり様にだ。

 いつから、自分はそんな考えになったのだろう、と視線を落とすメイ。


「ここは私たちが抑えます。先生方は騎士クラスや特別クラスの皆さんを連れて、演劇場や講堂の方をお願いします!」

 そんな中、フェリシアの提案に、全員が驚愕するが彼女の横に並んだ顔ぶれを見て、納得する。


 そこには、フェリシアを始めに、カグ―彼の場合は、昊斗そらとたちと同じデザインの戦闘服を着ているため、彼らの仲間だと周りから思われている―にヴィルヘルミナの騎士を務め、本国の帝国では軍人であるフローラとペトラ。さらに、精霊術でフェリシアに拮抗する点数を誇るアリエルに、回復系に定評のあるクレアの六人だった。


 現在考えうる、最高の布陣が学園正面に据えられる。


「・・・・・・分かりました。ですが姫様、危険だと感じた場合、すぐに逃げてください」

「分かっています」


 ペトラの担任である女性教師は、フェリシアの言葉を聞き、生徒たちの方へと視線を動かした。

「では、騎士クラスは演劇場へ!特別クラスの生徒は我々と、講堂の防衛へまわる!急げよ!!」

 指示を受け、生徒と教師たちが移動を開始する。


 だが、教師たちだけがメイの前で立ち止まった。

「申し訳ありません、学園長。この件が終わりましたら、如何様にも処分してください」

 頭を下げる教師たちに、メイは静かに首を横に振った。

「いいえ、全ては学園長である私が不甲斐ないばかりに、皆さんに決断させてしまいました・・・・・ごめんなさい。私も、一教師として生徒に恥じぬ行動をしましょう」

 そういうと、彼女の後ろに契約する火の精霊が現れる。彼女の精霊は、攻撃力を一切持たないのだが、創造主であるカクヅチの性格を色濃く受け継いでいた。


 人々の心を癒すともしび


 メイが教師時代、よく生徒から相談を受ける際に手伝って貰い、今ではほとんど出番がなくなっていた相棒に「もう一度、力を貸して」と頼む。

 精霊は、”いいよ”とゆっくりと頷いた。


 その様子を見ていたヴィルヘルミナが、フェリシアに近づく。

「姉さま。わたくしは学園長先生と共に、避難している初等部や中等部の方々の様子を見てまわります」

 自分に出来ることを、とヴィルヘルミナは初等部や中等部の校舎から避難してきている生徒を勇気づけることだ、と思い自ら買って出たのだ。


「お願いね、ヴィー!・・・・・カグ君」

 

 駆けていく妹分の背中を見送り、フェリシアはカグに声を掛けた。

「どうされましたか?」

 魔物たちを威嚇し続けるカグに、フェリシアは申し訳ない、と頭を下げる。

「ごめんなさい。無関係のあなたに、手伝ってとお願いするのは心苦しいのですが・・・・」

 実際、この学園においてこれ以上無い戦力が揃っているが、時間を追うごとに正門には、骸骨の化け物が溢れ返っている状況に、不安の拭えないフェリシアは、神であるカグに手伝って欲しいと考えてしまった。


 そんなフェリシアの心情を察して、カグが笑みをこぼす。

「お気になさらず、フェリシア姫。今の僕は、ルドラに代わって貴女の”精霊”なのです。それに・・・・・偽りの命を与えられた人形相手なら、僕も力が振える!」

 そういうと、カグは右手を前に出し、野球ボール大の火の玉を生み出し、正門に溢れる竜骨兵に向けて射出した。


 一瞬の内に先頭の竜骨兵へと到達し、火の玉が炸裂する。

 正門付近が吹き飛び、近くにいた骸骨たちが炎に包まれた。


 その攻撃力に、全員か感嘆の声が漏れる。 

 だが、竜骨兵はやられた仲間の屍を踏み越え、一斉に学園内へとなだれ込んできた。


「フェリシア様!来ましたよ!」 

「皆さん・・・行きましょう!!」

 フェリシアの号令と共に、戦闘が開始された。


 いつものように、ブースターを吹かせてバルディッシュを振るうペトラだが、敵の多さに顔を顰める。

「っ・・・こいつら、単体では大した事は無いが、こうも数が集まると!!」

 一体一体の戦闘力はそう高くない竜骨兵だが、数が集まると途端に攻略難易度が跳ね上がる。


 しかも、彼女らは召喚された数を知らないので、体感ではまさに無尽蔵に襲ってくると思えるものだった。

「泣き言を言わない!」

 両腕に装着した改造アサルトショットガンを巧みに操り、敵を吹き飛ばすフローラが弱音を吐く同僚をしかりつける。


 それでも、二人の息はぴったりと合い、お互いの死角にいる敵を倒している。


「さすがは〜・・・ミーナさんの〜騎士さんたちですね〜〜」

 地の精霊術で、敵を蹴散らしていたアリエルが、感心してペトラたちの方を見ていると、攻撃の手が緩んでしまった。

「アリエル様!?前!!」

 後方で回復役に徹していたクレアが悲鳴を上げる。

「あらあら〜?」

 すぐそこまで敵が迫るも、アリエルはいつもの調子を崩さない。


 あと一歩で竜骨兵の攻撃が届く距離になった時だ。

「!?」

 彼女の足元から、何本もの石柱が生え、骸骨たちを粉砕した。


 何が起きたのか分からないクレアが声を失っていると、アリエルの横に彼女の精霊が顕現した。

「申し遅れました〜〜・・・この子は〜私が〜契約している〜地の精霊の〜〜・・・ディアマンテです〜」


 現れたのは、雄々しい獅子だった。

 金色の鬣に、敵を射抜く鋭い眼光。百獣の王に相応しい体躯そして、四肢には名前の由来となった金剛石の爪を持つ精霊。


 それが、クレスト連邦の姫君アリエルが契約する精霊だった。


 アリエルは手馴れたように、ディアマンテの背に乗る。

「さぁ〜いきますよぉ〜!」

『GHAAAAAAAAAA!!』

 雄叫びとともに、契約者を背に乗せ、地の精霊ディアマンテが戦場を駆ける。


 敵の中へと飛び込んだディアマンテの足元から、先ほどの石柱がいくつも伸び、竜骨兵たちを粉砕していく。

 残った敵は、その爪と牙で叩き潰してまわる。

 

 そんな中、背中のアリエルも援護射撃とばかりに精霊術を連発する。


「・・・・・・・精霊って、契約者のイメージを元に、姿を得るんだよな?俺、アリエル様の精霊は、もっとおっとりしてるのを想像してた」

「わたしも・・・・・・それに、あんな楽しそうなアリエル様を見るのも、初めて」

「でも、さすがはフェリシア様たち!頑張ってください!!」

 眼下で行われている戦闘を見ながら、高等部の一・二年生たちが正体不明の敵を蹴散らすフェリシアたちに声援を送るのだった。



「だいぶ、数が減ったかな・・・・」

 結界に護られているおかげで、敵が正門からしか攻めてくる事が無いので、侵入してくる敵は膨大だが一定量だった。

 そんな侵入してくる敵の数が眼に見えて減った為、フェリシアは大きく息を吐く出した。


 近くに居ないとは言え、ルールーから霊力の供給は出来ているが、立地から町に被害を出しかねない高出力の上級精霊術や大規模精霊術が使えないフェリシアは、中級精霊術主体で戦っていた。

 

 だが、傍に居るカグが明後日の方を見たまま、首を振った

「そうとも言えませんね。王都の外にも、同じ魔物がまだ数万は居ますよ」

「そんなに?!」

 一体何が起きているのか、学園のことで頭が一杯で、王都の状況が分からないフェリシアは、アルバート城か騎士団本部に連絡を取らないと、と考えた矢先だった。


「こ、これは!?」

 その場に居た全員の身体を、柔らかな光が包み込んだ。


 気が付くと自分たちだけでなく、校舎の中に居る生徒たちにも同じ現象がおきていた。


「凄く優しい光・・・・それに、とても心強い力を感じ・・・これは、お父様?」

 フッと、フェリシアの脳裏に一抹の不安が過ぎり、真っ青な顔をしてアルバート城の方へと視線を向けた。


 彼女の目に、信じられない光景が飛び込んできた。


「あれは、ドラゴン?!」

 見慣れた城の周りを、何体ものドラゴンが飛び回っていた。

 自分たちを包む光が城から発生し、さらには飛び回るドラゴンを、小さな人影が打ち落としている。


「ドラグレア様!」

 フェリシアの様子を訝しげ、全員が彼女の見ているほうを見て、絶句した。

 何か、とんでもない事態が進行している。

 ここにきて、全員がその考えに至った。


「フェリシア姫、アルバート城へ行きましょう」

 ただ一人、冷静なカグがフェリシアに提案する。

「カグ君?!で、でも・・・・・」

 まるで、自分だけが皆を置いて逃げるような感覚に陥り、フェリシアは苦しげな表情を浮かべる。


 すると、敵を蹴散らしていたアリエルが精霊とともに、フェリシアの元に降り立つ。

「フェリシアさん・・・行ってください」

 アリエルの言葉に、近くで戦っていたフローラが声を上げる。

「アリエル様の言う通りです!フェリシア様、ここは我々にお任せを!」

 バルディッシュの刃を交換し終え、ペトラも首を縦に振る。

「そうです!それに、あんなドラゴンが居るところに飛び込むことを考えたら、ここで戦う方が気が楽だ!」

「あんたは、もう少し考えて物を言いなさいよ!」 

 いつもの調子で、戦闘中にケンカを始める帝国軍人の二人。


「普段は閉じられている裏門の錠の鍵です。正門を通るより、安全に外へ出られるはずです」

 クレアは、スカートのポケットから学園の校章が刻まれた鍵を取り出し、フェリシアに手渡す。

「クレアさん・・・・・・・皆さん、もう少し頑張ってください!騎士団のフォルト団長に連絡して、増援を送っていただけるように進言しますので!カグ君!」

「了解!」

 フェリシアが、裏門のある方へと駆け出す中、カグはアリエルの精霊であるディアマンテに、「頑張れ」と声を掛け、後を追っていった。


「よかったですね〜ディアマンテ。火の神様に〜声をかけていただいて〜〜」

『GAU!』

 属性が違うとはいえ、精霊として神に声を掛けられたディアマンテは嬉しそうに、尻尾を振る。


「よし!では仕切りなおしだな!」

「何で、ペトラが仕切ってるのよ!」

 そんな言い合いをしていると、再び正門から竜骨兵たちが大挙して押し寄せてきた。

「さぁ、みなさ〜ん!もうひと〜頑張り〜しましょう〜!」


 アリエルが先陣を切って敵へと駆け出し、フローラとペトラがその後を追って突入していった。



****************



「・・・・・・・やはり」


 何事もなく裏門にたどり着き、フェリシアとカグはクレアから預かった鍵を使い、扉から顔を覗かせアイディール学園の外を伺っていた。


 正門ほどでは無いにしても、街中には所々で竜骨兵が徘徊している。


「カグ君。なるべく戦闘は避けて、お城を目指しましょう」

「分かりました・・・・行きます!」


 そう言ってカグは、一番近くに居た竜骨兵を破壊し、二人は脇目も振らずアルバート城を目指し、一気に駆け出す。


 そんな二人の姿を、見つめる複数の視線があるとも知らずに。



 



次回更新は、6月14日(土)PM11:00過ぎを予定しています。


 変更の場合は、活動報告にてご連絡します。

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