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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
聖域の中の母娘 編
89/180

幕間

「まさか、あのパッツィーアさんが失敗するなんて・・・・・」


 椅子に座るアルトリアが、信じられないと言った表情を浮かべる。


 呪符による転移によって、集合場所にいち早く到着していたユーリたちだったが、亜人捕獲に向かったパッツィーアが約束の時間になっても現れる事はなく、ギリギリまで待っていたが、これ以上留まるのは危険と判断し、彼らは用意していた別の拠点へと移動していた。


「だから言ったんだよ!パッツの奴を置いてきていいのかって!」

 短い付き合いだったが、パッツィーアとはいい飲み仲間だったディアゴが、マギハに怒鳴りつける。


「仕方ないでしょう!あのまま聖域に留まれば、勇者様が”ルーン王国にいる”と言うことが王家に露見してしまう可能性がありました!今後のことを考えれば、そのことは一番避けねばならないこと!私だって、出来ることならパッツィーアさんを置いては行きたくは、なかったですよ・・・・・・」


 大局を見据えた判断から、ある意味でパッツィーアを見捨てたマギハだが、数少ない仲間を置き去りにしたことに多少なりとも思うところはあった。

 険悪なムードの中、レーアがテーブルを叩いて立ち上がった。


「もう、いいじゃん!ウチらの目的だった聖剣は手に入ったんだし!あいつも、自分の始末くらい自分でつけてるよ!!」

 薄情に聞こえるレーアの言葉だが、それがこのパーティーの決まりだ、と全員が思い出し、押し黙る。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・それで、どうされるのですか?亜人捕獲の依頼は」

 気持ちを切り替えるように、アルトリアが現在の懸案事項をマギハに尋ねる。


「それに関しては、私がどうにかします。元々私が受けた仕事ですし、彼とはそろそろ縁を切らなければと、考えていましたから」

 マギハの只ならぬ雰囲気に、ディアゴが拳を打ち鳴らす。


「荒事なら、オレもついてくぞ。このままじゃ、どうにも収まらねぇ」

「・・・・・・・そうですね。私の力は”対人”向きではありませんし。ディアゴさんにご同行いただきましょうか」

 普段なら、ディアゴの言動を諌めるマギハも、今回は口を出さず、動向を許可する。

 

 立ち上がり、マギハはレーアとアルトリアに視線を移す。

「少々ここを空けます。勇者様はもう少し、ここから動けないでしょうから、我々がいない間、頼みますよ」


 マギハはユーリが篭っている部屋のほうを一瞥する。


 未だ、聖剣が”馴染まない”と言って部屋に篭ったユーリ。

 彼があの部屋から出てきた時、全てが始まるとマギハは心の高ぶりを感じた。


 だからこそ、面倒ごとは早く処理しなければ、と急いで用意を始める。


「ご心配なく。勇者様はワタシがお守りします」

「大丈夫よ、ウチがユーリ様を守るから!」

 ユーリのこととなり、いつもの感覚に戻ったのか、火花を散らす女性二人

 一癖も二癖もあるメンバーにいつも困らされているマギハだが、今日は色々なことが重なっていた為に、いつもの余裕が無かった。


「くれぐれも、油断なきよう!いいですね?お二人とも」

 用意の手を止め、マギハは殺気を織り交ぜて言い含める。

 マギハの様子に、さすがにマズイと、壊れた人形のようにコクコクと肯く二人。


「では、ディアゴさん。行きましょう」

「おう!」


 準備を終え、危険な光を瞳に宿し、マギハとディアゴが部屋を出て行った。


*********************


 一方その頃、王都ディアグラム。


 アルバート城、国王カレイドの執務室では・・・・・


「工房を作るなら、木漏れ日の森はどうか?と、お前の親父さんが言ったのは、そういう意図があったのか・・・」

 定位置となっているソファーに腰を下ろしたドラグレアが、深々とため息をつく。


「あぁ・・・父上は、ルーン王国において最強と言われ始めていた君に、間接的にでも聖域の守護者になってもらおうと、考えたようだ。あそこに封印されていた物を考えると、父上の判断は間違っては居ないが・・・・・・君に黙っていたことは、謝る。すまなかった」

 長年、口外無用と父親に言われていたとはいえ、友人に真実を伝えられなかったカレイドは、その真実を伝えたことで何処か胸の痞えが取れたように感じた。


 少し前。


 夜も明けぬ内から、カレイドに呼びつけられたドラグレアは、いつもの事ながらと思いつつ、ついでに友人に小言の一つも言ってやろうとアルバート城へと上がった。


 だが、出迎えたカレイドの慌てた様子に、何か大変なことが起きたことを察したドラグレアは、一先ず文句を横に置いて、カレイドから話を聞くことにした。


 木漏れ日の森にある聖域の結界が破られ、結界内に封印されていた”聖剣プロウェス・カリバー”が何者かに盗まれた。


 その言葉に、さすがのドラグレアも、あの場所にそんな物が封印されていたとは、予想だにしていなかったため、言葉を失った。


 そんなドラグレアを余所にカレイドの説明は続き、代々国王に引き継がれている、聖域に封印された聖剣に何かあった場合に警報を発するオーブが、金切り声の様な音を上げ木っ端微塵に砕け散った。この光景にただ事でないと悟ったカレイドは、すぐに木漏れ日の森のある地域を守護するローランド騎士団に聖域を調べるよう、最上級の命令を出した。


 第一報で上がってきた情報に、カレイドは頭の中が真っ白になった。

 

 言い伝えにあった聖剣が刺さっていた台座はもぬけの殻。なぜか近辺だけが嵐でもあったように木々がなぎ倒されて荒れ果てており、台座の周りには、複数の真新しい足跡があった、と騎士団団長から報告が上がった。


 報告を聞き、本当に聖剣が何者かに強奪されたのだと、カレイドは思い知らされた。


 説明しながらも、未だ信じられないと、顔を真っ青にしているカレイドを見ながら、ドラグレアは頭を掻いた。


 説明を聞きながら、ルーン王国に召喚された少し後、静かな場所に工房を作りたいと、当時国王だったカレイドの父、ジェラードに相談した際、木漏れ日の森を強く勧められたことを、ドラグレアは思い出していた。

 

 そして、先ほどの言葉が口をついたのだった。


「・・・・たく、言ってくれればこっちも快く引き受けたのに・・・しかし、あそこに相当厄介な結界が張ってあることは知っていたが、何でまたあんな場所に聖剣なんて封印してたんだ?寧ろ、お前の手元にある聖剣リライアンス・ブレイドと一緒に、目の届く場所に保管しておいた方がよかった気がするが?」


 ドラグレアの最もな意見に、カレイドは頭を抱えながら口を開いた。


「君の言うことも尤もなんだがな・・・・・・二振りの聖剣は、元々はルーン王国建国前後に、アルバート一世が使っていたと言われる伝説の代物で、封印されていた聖剣は、恐ろしく攻撃に特化した剣らしく、一振りで山を割り、空を裂いた、と言われている。そんな聖剣を後の王が、他国へ攻める為の力にするのでは?と、アルバート一世が懸念して厳重に封印らしい。私の元にある聖剣は、逆に防御に特化した聖剣で、その身をもって民と国を守るという信念を具現化した聖剣と言われ、ルーン王国国王のあるべき姿勢を示す聖剣として、歴代国王に引き継がれているんだ。封印場所にあの森が選ばれたのは、あの辺りが、元々ルドラ様から下賜された土地の一つという言い伝えがあったし、建国の父であるアルバート一世誕生の地とされていて、そういった理由で彼の方が、あそこを聖剣の封印場所として選んだのでは、といわれている」

 聖剣封印に関する書物は、保管に気をつけていたとはいえ、経年劣化による破損が酷く、現在では読み取れる部分から凡その推測しか出来ない状態だった。

 後は、口伝による情報のみなのだ。

「それにしても、その聖剣がこうも簡単に盗まれるとはな・・・・・・あの場所に聖剣が封印されていることを知っているのは?」

「直系の王族。私の知る限りでは、私と亡くなった兄上ぐらいしか思いつかないが・・・・」

 そう言いつつも、カレイドには思い当たる節が少なからずあった。

「ずっと昔の王族が残した資料が何処かに存在し、それを見た者が奪ったとか?」

 それが、ドラグレアが言った可能性だ。


 ルーン王国の王位継承は、アルバート一世の直系の子孫が選ばれることになるのだが、兄弟などが存在する場合、どの国でも起こる継承問題が発生する。

 その折に、聖剣に関する情報が外部に漏れる可能性は0ではなかった。


「無くは無い可能性だが・・・・・・・それでも、あの聖域の結界はそう易々とは破れるものではないんだ。それは、君が一番よく知っているだろう?」

 それでも、最後の砦となる聖域の結界が、今まで聖剣を護っていた。

「まぁ、それはそうだが」

 ドラグレアも、かつて聖域の結界攻略に、カレイドの黙って挑戦したことがあったが、破壊せずに結界内に入るのは無理だと分かり、半ば諦めている。

「とにかく、現在騎士団を総動員して行方を捜させている・・・・もし、あれが国外にでも持ち出されでもしたら」


 言い伝えどおりの高い攻撃力を持つ聖剣が、本来護るべきルーン王国に向けられるとなったら、と考えると、聖域を護ってきた代々の国王・・・自分の祖先に申し訳が立たないと、カレイドの表情が苦しげに歪む。

 

「火種になることは確実だな・・・・・こういう時こそ、祭事巫女の出番だが、あのお嬢ちゃんにはまだ期待できないか」

 前任の祭事巫女マーナ・クロエなら、未来予知によって、未然に防げた可能性があるが、後任のミユは年齢のせいか、未だに力が安定しないようで、ルーン王国に赴任してから、一度も予知らしい予知を行っていなかった。

 だが、ドラグレアの言葉に、カレイドは頭を振る。


「いや・・・・・実は昨晩、ミユ様がフェリシアの部屋に泣きながら駆け込んだと言う報告が、兵士や侍女から上がっているんだ。駆けつけた者たちに対応したフェリシアは、ミユ様が怖い夢を見て、怖がられているだけだから、と言ったそうだが・・・・」

 だが、状況を考えると、そうではない可能性が浮かび上がってくる。

 そのことに、ドラグレアはミユの評価をホンの少し上方修正する。


「なるほど、マーナさんの後任に選ばれるだけの実力はある、と言うことか。今すぐ起こして、話を聞くべきだろう」


 ドラグレアの言葉に、カレイドの顔が少し陰る。


「・・・出来ることなら、朝になってからとも思うが・・・・そんな悠長なことを言っていられる状況ではない、か」


 娘のフェリシア同様に、ミユのことも可愛い娘のように思っているカレイドだが、聖剣を盗まれるという国の一大事にに、ミユから何かしら状況を打破する情報が得られるかもしれないと、心を鬼にしミユが居るフェリシアの部屋の通信球に、連絡を入れるカレイドだった。



 


この話をもって、今章は終了となり、次話から新しい章に入ります。


***********


次回更新は、5月7日(水)PM11:00過ぎを予定しています。


変更の場合は、活動報告でご連絡いたします。

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