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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
聖域の中の母娘 編
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(15) 聖域崩壊

 時間は遡り、パッツィーアを見送ったユーリたち勇者パーティーは、リーダーであるユーリを先頭に、聖域の中を歩いていた。


「しかし、ここは色々と面倒なところですね。其処彼処に霊力の吹き溜まりが存在している・・・・皆さん、下手に踏み抜かないでくださいね!普段霊力やそれに類似した力を使っている我々でも、あの濃度をまともに浴びれば、急性中毒で死にますからね!」


 マギハの忠告に、レーアとアルトリアが悲鳴を上げユーリにしがみつく。


「つまんねぇ・・・・・・何にも居ねぇじゃねーかよ!こういう場所って、秘宝を護る守護者みたいなのがいるんじゃないのかよ?!」

 ここ最近、本格的な戦闘を行っていないディエゴは、フラストレーションが溜まっているのか鋭い目つきが、さらに鋭くなっている。


「ここは元々王家の、それも限られた者しか立ち入ることが出来ない場所なのです。・・・・そういった意味で言えば、パッツィーアさんの方の亜人が、守護者の可能性もありますが・・・・」

 元々少ない聖域内の情報で、マギハが調べた中に守護者などと言った情報は見当たらなかった。


 誰にも聞こえないような呟きだったマギハの声に、獣人のディエゴが反応する。

「やっぱ、そうなのか!?なら、今からパッツの後を追うぞ、オレは!」


 ここまで来ればワザとなのでは?と思いたくなるような、ディエゴの脳筋発言に、とうとうマギハの怒りが限界突破した。

「いい加減なさい!亜人は捕獲すると、何度言わせるのですか?!」

 怒鳴るマギハを見て、ディエゴの目つきが一気に鋭くなる。だが、どこか待ち望んでいたかのように、薄らとだが笑みを浮かべる。

「だったら、どうだというんだ?」


 怒らせるとかなりマズい、と仲間内で言われているマギハ。怒る理由の大半が、ディエゴ絡みなのだが、ここ最近、ディエゴはマギハと戦いたいがために、それを逆手にとって彼を怒らせているのでは?と噂が立っている。


「ディエゴ・・・・・・」

 一触即発の状況に、ユーリの声が響く。

「な、なんだ?ユーリ」

 まさか、ユーリの地雷まで踏み抜いたかと、ディエゴの頬に汗が流れる。


「・・・・・そんなに戦いたいのなら、アレの相手は任せるぞ」

 最悪な事態に陥らなかったと胸を撫で下ろし、全員がユーリの指差した方を見ると、甲冑姿の騎士を模した古びた石像が立っていた。


 離れているにも拘らず、その大きさが分かるほど巨大な石像だった。


「・・・・・?あれは、石像?」

 観察しようと目を凝らすと、石像の首がガタッと動く。

「?!ちょっとアレ・・・動かなかった!?」


 レーアの言うとおり、ヘルメットのスリット部分に緑色の光を灯し、甲冑の石像が剣を携え、歩き出した。


 ユーリたちの元までやってきた石像は、剣を杖のように地面に突き立てる。


―聖域ヲ訪レシ者ヨ。証ヲ示セ


 機械じみた片言の言葉を話す石像。石像の言う証とは何か判らず、全員が首をかしげる。


「証?何か、王家由来のものを持ってくる必要があるということでしょうか?」

 立場上、ルーン王家由来の物など持ち合わせていないメンバーは、どうするか顔を見合わせる。

おれの道を阻むか、薄汚い人形風情が・・・・・・そんなものは持っていない。道を空けろ!」

 

 そんなユーリの言葉に反応し、石像のスリットの色が緑から、赤へと変わる。


―聖域ヲ侵ス、不届キ者ヨ。失セヨ!


 石で出来た剣が、光輝く金属の剣へと変化し、ユーリに襲い掛かる。

 その攻撃を、ユーリは最小限の動きでかわし、距離をとる。

 

 そして入れ替わるように、ディエゴが石像の前へと躍り出た。


「へ!動く石像じゃ腹いっぱいにはならないが、暴れられなくてムシャクシャしてたんだ!少しは楽しませろよ、木偶の坊!!」

 風を切り裂く音を立て、ディエゴの拳が一瞬消える。

 次の瞬間には、剣を持った石像の右肩辺りが砕け散り、土煙を上げて地面へ落下する。

「ちっと固いが、この程度かよ!?」

「待ってください!」

 だが、出来の悪い逆再生映像のように、砕けた破片が落下した腕に集まり、フワフワと浮き上がると何事も無かったように石像の右腕が復活する。


「!?砕けたところが再生する?!これは、弱点を破壊しなければ倒せないタイプのようですね」


 古今東西、こういったタイプのモンスターの弱点は広く知られている。

 例えば、額に刻まれた言葉から一字削り、言葉の意味を変えると倒せるとか、身体の中を動き回る弱点を見つけて打ち壊すなど様々だが、早めに弱点を発見しなければ、永遠と復元し続ける厄介な敵と言える。


「なら、こいつはどうだ!」

 ディエゴは一息に、三箇所へ攻撃を加える。

 人間の急所に当たる、顔・胸・股間の三箇所だ、しかし、意味は無かったらしく、即座に再生してしまう。


―無駄ダ、我ハ不死身。何人モ、我ヲ倒ス事ハ出来ヌ!


 巨体に似合わず、暴風雨の様な剣戟を繰り出す石像。

 その剣戟の中を、驚異的な身体能力と動体視力を駆使して、ディエゴが避け続ける。そんな中、ディエゴは苦戦して顔をしかめるどころか、笑みを浮かべていた。


「・・・・いいぜぇ・・・・唯の木偶の坊かと思えば・・・・無限再生するサンドバッグかよ!!おもしれぇ!オレも、ちょっと本気出すぜ!!」

 今まで、どれだけ手加減しても一撃で大概の相手を死に追いやったディエゴの拳を、四発喰らって平然とする相手に、ディエゴの頭の中がスパークする。


 石像の剣戟が届かないギリギリまで距離をとり、深く腰を落とし構えを取る。


 追撃の為、距離を詰める石像だが、ディエゴの圏内入った瞬間、フルフェイス型の兜が跡形もなく消し飛ぶ。

 再生が始まる瞬間、次は右肩、胴体と、次々抉られて行く。


「ははは・・・あははははははははははははははははははははははははは!!!!」


 気でも狂ったように笑いながら、目で捉えられないほどの速さに達する拳を繰り出すディエゴによって、瞬く間に石像を粉々に打ち砕く。

 しかも、砕け散り地面に散らばった破片さえも残さないとばかりに、地形が変わるまで拳を振るい続ける。

 それはまさに、暴風と言っていい激しさである。


「おら、どうした!?これからでも再生するんだろ?!早く元に戻れよ!!」

 十数分後、幻想的な聖域の森の一部が一変し、嵐の過ぎ去ったかのような悲惨な光景が広がる。

 先ほどまで再生し続けていた鎧の石像は、幾ら待っても復活することは無かった。


「・・・・・・・・・・・・・どうやら、あそこまで砕かれれば再生できないようですね」

 弱点を潰したのだろうと、マギハは結論付け、障害がなくなったことに安堵すように息を吐く。


「んだよそれ?!」

 だが、楽しんでいたディエゴは肩透かしを食らった形になり、不満を漏らす。

「もういい、行くぞ」


 ここまで自分の思い通りに進まず、不機嫌さを増すユーリが、石像が立っていた場所の後ろから伸びる道をズンズン進みだした。


 慌てて後を追いかけるメンバー。



 道を抜けた先に広がっていたのは、鬱蒼とした森の中とは思えないほど広い空間が広がり、そこは静寂が支配していた。


 ファルファッラたちが住んでいる広場の様な牧歌的な光景ではなく、厳かな空気が満ちる場所。その中心に、不思議な光が集まっていた。


「こ、これが・・・・・・・・」


 全員が光に吸い寄せられるように近づくと、其処には一振りの剣が岩に刺さっていた。


 長い年月その場に存在していたはずの剣には、錆はおろか汚れ一つ見られない。

 岩に刺さる剣を見つめていると、その存在に中てられ、レーアは何とか堪えたが、アルトリアがその場にしゃがみ込んでしまう。


「ルーン王国を建国した初代国王アルバート一世が、各地を平定する際振るったとされる、ニ剣一対の片割れ・・・・・聖剣プロウェス・カリバーですか・・・・」

 遠巻きに聖剣を見つめながら、マギハの口からはため息ばかりが漏れる。


「たしか、もう一本の聖剣は国王が持ってるんだっけ?」

 立ち上がろうとするアルトリアを支えながら、レーアが首をかしげる。

「えぇ、代々国王が引き継ぐと謂われている、聖剣リライアンス・ブレイドですね。国儀の際は必ず国民にお披露目されるので、国民なら誰でも知っていますよ」


 ”とある理由”から聖域に封印された聖剣プロウェス・カリバーと違い、もう一振りの聖剣リライアンス・ブレイドはルーン王国王位継承の証として、代々受け継がれている。


 何故リライアンス・ブレイドが国王に継承されるのか、と言う説明をマギハが始めようとした時だ。


 ユーリが聖剣の柄に手を掛けた瞬間、静電気のような音と共に、ユーリの手が柄から弾かれる。それはまるで、聖剣がユーリを拒絶しているように見えた。


「ゆ、勇者様!?」

 弾かれた部分が赤くなっているのを見て、マギハやレーアたちが近寄ろうとするのを、ユーリは手で収める。


「ほう、このおれを拒むか・・・貴様の声を聞けるこのおれを・・・・・だが!!」

 再び、聖剣の柄に手を掛けるユーリ。先ほど以上に激しい閃光と音をさせる聖剣だが、ユーリは柄から手を離すことなく、岩から一気に聖剣を抜き去る。


 聖剣を頭上高く掲げると、聖剣の刃から眩い光が溢れ、天へと上る。


「聖剣である以上、貴様はおれから逃れることは出来ない!!」

 聖剣を手にしたユーリの姿は、まさに勇者そのものだった


「お、おぉ・・・・・・・・」

 伝説や物語の中で語られる一幕に立会い、マギハから感嘆の声が漏れ出る。

おれは勇者・・・・いかなる聖剣も、おれの前に屈服するのみ!」

 眩い光が収まり、先ほどまで聖剣から溢れていたあらぶる気配が消える。


 掲げた聖剣を下ろすと、見計らったようにマギハが取り出した”布”を受け取り、ユーリはその布を聖剣へ巻きつけ、背中に背負う。


「戻り次第、それに合う鞘を拵えさせます」

 聖剣を収めるに相応しい鞘を準備せねばと、マギハが頭をたれる。

「任せる」

 来るまでの鬱憤が吹き飛んだのか、不遜な顔つきの中に笑みが垣間見えるユーリ。

 

「ね、ねぇ・・・なんか、ヤバくない?」

 そんな中、レーアがいち早く異変に気が付き声をあげる。


「!?結界が!!」

 何とか立ち直ったアルトリアが、頭上を指差す。

 指差す先を見ると、聖域を護る結界に幾重にも亀裂が入り、その亀裂が広がりだした瞬間、結界は崩壊を始めた。


「やはり、先ほど聖剣から出た光は・・・・予想はしていましたが・・・仕方ありません!皆さん、ここから離脱します!!」

 そう言って、マギハは虎の子である転移術が封入された呪符を取り出す。その行き先は、例の集合場所。もしもの為と思い、大金を払って用意していたものだ。


「おい!パッツの野郎はいいのか?!」

 別行動をしているパッツィーアのことを、完全に置いて行く形となるため、ディエゴが声を上げた。

「あの方なら役目を果たし、必ず合流されるはずです!今は、勇者様の安全が第一です!!行きます!!」


 マギハの中での優先順位は、何よりもユーリが一番である。

 パッツィーアは必ず追いつくものと信じ、マギハは呪符の力を解放した。



********************



 深夜の森の中を、一頭の馬が駆けていく。


 馬に跨るのは、魔獣使い(モンスター・テイマー)の能力を持つ、木漏れ日の森管理スタッフの鞍馬くらまだった。


「シロ!こっちでいいのか?!」

「ガゥ!」

 少し先を走る真っ白な毛並みが特徴的な鞍馬くらまの相棒、魔狼の子供であるシロが肯定するように一吠えする。


 夜の見回りを終え、日課になっていた共用語文字の習得をしていたとき、突然シロが吠え出し、鞍馬くらまのズボンの裾を引っ張り外へと連れ出した。


 付いて来い!と言わんばかりに何度も吠えるシロを見て、鞍馬くらまは先輩スタッフたちに様子を見てくるといい、馬に乗ってシロの後を追いかけていた。


 整備された表の森から、獣道ばかりの裏の森へと入り、微かに月明かりが射し込む木々の間を駆けていると、遠くからとんでもない地響きが鞍馬くらまへと近づいてくる。


 クラマ、ネ!


 なんと、七メートルほどある巨体を揺らして、全速力で走っているポンタが右の林から姿を現した。


「ポンタさん!!」


 気配で、近づいてくるのがポンタだと分かっていた鞍馬くらまが慌てることなく、彼女の傍へと馬を操る。


 モシカ、シテ・・・・ナニカ、ジケンノ、レンラクガ?!

 

「いいえ!オレは、シロが付いて来いって騒いだんで、それで!ポンタさんは?」


 ワタシ、ハ、ムナサワギ、ガシタ、ノ・・・・・シロハ、コノサキ?


 ポンタと話していたせいで、シロに置いて行かれる形になった鞍馬くらまだが、シロの位置を常に把握しているので、相棒がどの辺りにいるか手に取るように分かった。


「はい!真っ直ぐ森の奥を目指しています!!ポンタさん、この先ってたしか」

 シロが目指す森の奥にあるのは、鞍馬くらまがポンタに近づかないよう注意を受けていた聖域がある。

 そのことに、ポンタが動揺するほど焦っている、と鞍馬くらま横目で見ながら感じ取った。


 イソギ、マショウ!イヤナ、ヨカンガ、スルワ!


「はい!」


 二人は移動速度を速め、森の奥へと走っていく。


 この先で待つ事態をまるで予見するかのように、空に浮かぶ月が血の様に赤く輝いていた。


 連続更新二日目!


 明日もまだまだ続きます。


 次回更新は、4月24日(木)PM11:00過ぎを予定しています。

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