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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
聖域の中の母娘 編
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(5) 木漏れ日の森 再び

「あら、驚いたわ。まだ生きてたの?」

 小国連合との連絡用に使っていた、盗聴防止措置の取られた通信球に突然連絡が入り、相手の姿を見てエイレーネは素直に驚いて見せた。

『ミス・エイレーネ!我々を助けてくれ!』

 通信を入れてきたのは、小国連合の複数の出先機関を、取り纏めをしていた男だった。

 なかなか有能な男で、エイレーネも何度か会ったことがあるのだが、彼女にとっては都合よく動く駒程度の存在だった。

『今、ルーン王国のある町に隠れているんだが、国境の警備が厳しく、国外に脱出できないのだ!頼む!!』

 彼の後ろにも、見覚えのある人間が数人ほど見受けられるが、誰も彼も逃亡生活に疲れた顔をしている。


 小国連合の消滅と共に、連合の様々な悪事が白日の下に晒され、各国で関係者が次々と拘束されていた。

 男や他の人間も、ルーン王国を始め幾つもの国で指名手配されており、捕まれば即処刑という運びになっていた。


 男の申し出に、エイレーネはマニキュアを塗っていた爪を見つめながら、気だるそうに口を開いた。

「どうして私が貴方や、貴方のお知り合いを助けないといけないの?何のメリットもないじゃない」

 彼女にとって、すでに小国連合とそれに関係する人間は無用の長物であり、自ら進んで荷物を背負い込むつもりも無かった。

 エイレーネの言葉に、男は面喰らい口角を引くつかせた。

『なっ・・・我々が、貴女に対してこれまでに、どれだけの便宜を図ったか、忘れたとは言わせないぞ』

「それはそれ。貴方たちだって、私からそれ相応の恩恵を受けてたじゃない。ギブ・アンド・テイク、ビジネスの基本でしょ?何かを望むのなら、それに見合う対価を差し出しなさい。あぁ、それから、言葉遣いと態度も改めてくれるかしら?はっきり言うけど、それが人に頼み事をする人間の態度なの?」

『くっ・・・・・・・・・・・』

 逃亡者である彼らではあるが、それなりに資金などの資産となりうるもの持って逃げてはいたが、それでもエイレーネを満足させられる対価は用意できないのは、長い付き合いから判っていた。


 彼女の言葉を聞き、改めて目の前の悪女に慈悲を求めたのは間違いだったかと、彼らは己の浅はかさに閉口せざるを得なかった。



『・・・・そういえば、今ルーン王国に居るって言ったわよね?』

 ふと、何かを思い出したように、エイレーネが通信球の方へと顔を向けてきた。

「そうだ」

『ん?聞こえなかったわ。何て言ったのかしら?』

 男の態度が鼻につき、エイレーネの表情が険悪なものへと変わる。

「いいえっ、そ、そうです!我々は今、ルーン王国に居ます!」

 通信球越しとはいえ、目の前の女だけが、自分たちに残された最後の頼みの綱だった。ここで彼女の機嫌を損ねれば、自分たちに待つのは”死”のみ。


 男は、最大限エイレーネのご機嫌を取らなければ、と残っていたプライドをかなぐり捨てて、自分より二周り以上歳の離れたエイレーネに平に平にと頭を下げる。


『なら、私の”お願い”を聞いてくれたら、助けてあげてもいいわ』

 エイレーネの”お願い”と言う言葉を聞き、男の顔から血の気が一気に引いていく。


 彼女が”お願い”と言ってくる用件は、基本的に達成不可能に近いものばかりだ。しかも、どれも命がけと言う鬼畜仕様。


 昔、男の同僚がエイレーネの”お願い”を聞き、その後これがあいつだったのか?、と原型が判らないほどの状態で発見されたことを思い出してしまった。

 他にも、似たような事例をいくつも目にし、いつしかエイレーネの”お願い”は聞いてはならない、と暗黙の了解が出来上がったのだ。


『嫌ならいいわ。そのまま、真綿で絞め殺されるように、ゆっくりと人生の最後を待つのね』

「き、聞く!いや、聞きます!貴女のお願いを!!」

 しかし、彼らに残された選択肢は無く、受け入れるしか道は無かった。

『そう・・・・・それじゃ、私のお願いはね、ルーン王国のとある場所にある希少なモノ(・・)を、持ってきて欲しいのよ』

「き、希少?」

 ルーン王国において、希少なモノと言われている品物に心当たりのない男は、首をかしげる。

『えぇ、そうよ。ずっと探していた、とても希少種なの・・・・・・それを、手に入れて私の前に持ってくると約束できるなら、助けてもいいわ。もちろん、失敗すれば判るわよね?』

 男とその知り合いたちは、一心不乱に首を縦に振る。

『いい子ね・・・・情報だと、それがあるのは、王家の直轄地。木漏れ日の森の・・・・・・・』


***************


 普段、あまり人の訪れることのないドラグレアの庵の前に、五つの人影が立っていた。

「ここに来るのも、久しぶりだねぇ」

「まぁ、アレから二、三ヶ月しか経ってないけどな。そう思える程、色々なことがあったってことは確かだ」

 ドラグレアの庵を前に、昊斗そらと冬華とうかはグラン・バースにやってきた日の事を思い出していた。


「我々は一晩しか居なかったので、そう感慨深くはないですけど」

「そうかな?冬華とうかさんと、玉露ぎょくろちゃんのバトル見たの久々だったから、意外と印象に残ってるけどな、わたしは」

 玉露ぎょくろの言うとおり、一晩しか居なかった二人だが、モノの見事に意見が分かれる。


「今日からここに寝泊りする、ということですか?なかなか、趣のある建物ですね」

 初めて見る庵を見上げながら、カグが興味深げに見渡す。

「さて、ドラグレアさんの話じゃ、あの日から使ってないってことだからな。掃除を始めるか」

 昊斗そらと創神器ディバイスから、真新しい掃除道具を取り出し、玄関先に並べる。

「カグ、あなたは部屋の中の窓と扉を開けてきてください。ただし、龍の紋章が入った扉には入ってはいけませんよ?」

「分かりました」

 昊斗そらとがドラグレアから預かった庵の鍵で玄関を開け、カグは玉露ぎょくろに言われたとおりに扉や窓を開けていく。

昊斗そらと君、台所の方はこっちに任せて。金糸雀カナリア、早く台所の掃除を終わらせて、持ってきた食材でお昼ご飯の準備を始めようか。もうちょっとしたら、フェリちゃんたちも来るだろうし」

「畏まりました」

 掃除道具を手にした冬華とうか金糸雀カナリアが、台所へと入っていく。



 フェリシアたちと一緒に、避暑地である木漏れ日の森にある王家の別荘へ泊まる予定だった昊斗そらとたちだったが、直前になって自分たちだけドラグレアの庵へと変更した。



 その理由は、遡る事数日前。




「こんにちは」

「こんにちは、ドラグレアさん。あ!これ、お土産です」

 突然、空間転移で現れた昊斗そらと冬華とうかに、自分の家でくつろいでいたドラグレアは、渋い顔をする。


「お前らな・・・・・・罷りなりにもいい大人なんだ。もう少し、常識的な訪問は出来ないのか?」

 苦言を呈しながらも、二人に座るよう勧め、何故か昊斗そらとたちの前にお酒が出てくる。

「すみません。堂々と表から入ると、色々と厄介なことになりそうだったので」

 昊斗そらとの言葉を聞き、ドラグレアはここ最近パターンになっていた流れを感じ取る。


「やはり、お前たちには隠し通せなかったか」

 髪をガシガシと掻きながら、ドラグレアはお猪口に入れた酒を一気に呷る。

「さすがに、あそこまで露骨にされると、どんな人間でも気がつくと思いますよ?」


 昊斗そらとたちがアルターレ護国から戻ってから、ベースの周辺で不審な行動を取る者が目につくようになった。

 そして、それに比例するように騎士団の巡回も増え始めていた。


 確かに、気にしなければ気がつかない変化だが、傭兵を名乗る昊斗そらとたちには、あまりに露骨に映ってしまっていた。


「大概は、何となく俺たちの様子を伺ってる輩ばかりで、騎士団の見回りがくると姿を消すので放っているんですけど、昨日侵入しようと試みた命知らずがいたので、こちらで拘束しました」


 まさか、こんなにも早く行動起こす馬鹿者がいたのか、とドラグレアは頭を抱える。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そいつ、生きてるよな?」


 前に昊斗そらとたちのベースに行った際、ドラグレアは防犯と言うには、些か物騒な術式がベース中に組まれていたことを思い出す。

 

「殺してませんよ。拘束して、ちょっと”話”を聞いて、ついさっきここへ来る前に、フォルトさんの所へ捨ててきました」 

「そうか・・・・・・・・・」

 ならば、後でフォルトから連絡が来るかな、と思いつつドラグレアは、お猪口に酒を注ぎ足す。


「まぁ、俺たちも少々急ぎすぎていた感があるのは否めませんが、こんなにも早く俺たちを排除しようとする貴族が現れるとは思いませんでしたよ」

 昊斗そらとたちにベースに忍び込もうとした者は、ある貴族が雇い入れてた密偵だった。


 先ほどボカした言い方をしたが、密偵はなかなか口を割らなかったので、玉露ぎょくろが強制的に頭の中の記憶を引っ張り出し、依頼主の貴族の名前と顔を割り出していた。

 ルーン王国内部に、昊斗そらとたちをあまり良く思っていない貴族がいることに気が付いていたが、このことで昊斗そらとたちは確証を持つに至った。


「オレの時に、二度と馬鹿な考えが浮かばないように、貴族たちには”誠心誠意”話を通しておいたんだけどな。二十年以上経てば、記憶も風化するか・・・・・」

 ドラグレアは、カレイドの元へ召喚され、その後自分を排除しようとした一部の貴族たちと争い、悉く潰してまわったことを告げる。


「なるほど。つまりは、いざとなったら弱みを握って、家ごと潰しても構わないと言うことですね。目の前に前例があるわけですし」

 笑顔で答える冬華とうかに、ドラグレアは”しまった!”という顔をしたが、時すでに遅し。


 昊斗そらとたちの中に、本当の意味での”実力行使”という選択肢が増えていた。


「・・・・・・で、今日来た理由はそのことだったのか?」

 酒が入っていたせいだ、と自分に言い訳し、早々に諦めたドラグレアは、昊斗そらとたちの訪問理由を問いただした。

「関連していますけど、来た理由は別にあります。実は、ドラグレアさんにお願いがありまして」

「言っておくが、貴族の方の対処はオレたちに任せておけよ?カレイドの奴も、その辺りに気を使ってお前たちに情報を伏せているんだからな」

 一応、釘は刺しておこうと、カレイドの名前を担ぎ出すドラグレア。


「分かってますよ。ドラグレアさんもご存知だと思いますが、もう少ししたら、フェリちゃんたちと木漏れ日の森に泊りがけで、遊びに行くって話しが出てるんですけど、最初は私たちもルーン王家の別荘に泊まる予定にしていました。けれど、先の話を考慮すると、私たちが王家の別荘に泊まると、方々に迷惑をかけそうなので、ドラグレアさんの庵を借りられないかな、と思いまして」 


 冬華とうかの説明を聞き、ドラグレアは内心ホッとした。 

「そういうことなら、構わないぞ。ただ、あそこはお前たちと出てから一度も使っていないからな。それなりに掃除なんかはしないと、泊まることも出来ないぞ」

 ドラグレアも年に数回しか訪れない為、一応は庵全体に状態固定の術式を使ってはいるが、それでも掃除は必要だろうと伝える。

「ご心配なく。きちんとやっておきますから」

「それから、オレの部屋は入るなよ?一応、工房として使っている場所だ。あまり見られたくないものも置いてあるからな」

「たしか、東洋龍が描かれた扉の部屋ですよね?了解です」


 昊斗そらとは、ドラグレアから庵の鍵―兼、状態固定の術式の解除術式―を受け取り、二人はそのまま夜遅くまでドラグレアと飲み明かしたのだった。




 そして当日。フェリシアたちよりも早めに現地入りし、庵を掃除し始めた昊斗そらとたち。


 二時間ほどして、掃除が終わり冬華とうか金糸雀カナリアが昼食の準備を始めた頃、フェリシアたちが馬車に乗って現れた。

 

 今回の発起人であるフェリシアを始め、アリエルにヴィルヘルミナ。フレミー、ペトラ、フローラの騎士三人に、祭事巫女のミユ。さらにはクレアに、プリエ、アイリスと、昊斗そらとたちのベースに出入りしていた面子が揃っている。

 そして、掃除が嫌でフェリシアたちの方へと逃げていたルールーが、バツが悪そうにコソコソと馬車から出てきた。

 

「ここが、ドラグレア様の工房ですか?」

「いいですね〜、趣のある〜お家です〜」

 初めてみる建物に、アリエルやヴィルヘルミナたち外国の面々は先ほどのカグ同様、興味津々と言った様子だった。


「ここで、姫様は試練を受けられていたのですね・・・・・」

 フェリシアが試練を受けている時、ここへ同行できなかったフレミーは、複雑な面持ち庵を見つめている。


「みんな早かったねぇ。今、お昼の準備してるから、待っててね」

 フェリシアたちがやってきたのを知り、中から出てきたエプロン姿の冬華とうかが、人数が揃っているかを確認し、中へと戻っていく。

「あ、トーカさん!私も手伝います!!」

 二ヶ月間過ごし、勝手知ったるドラグレアの庵の台所にまた立てると、フェリシアは嬉しそうに庵の中へと駆けていく。さらに、侍女見習いをやっているアイリスも、さも当然のように手伝いをする為、庵へと入っていった。


「天気もいいし、外で食べるか。悪いが、誰かテーブルを運ぶのを手伝ってくれないか?」

「あ、私が!」

「フレミー先輩!僕も手伝います!」

 フレミーとプリエの師弟コンビが、即座に反応し昊斗そらとの後を追う。


「こういうときこそ、騎士の出番だな!」

「ちょっとペトラ!幾らこの辺りが安全って言われていても、姫様たちを置いていけないでしょう!私たちは残る!!」

 王家の直轄地内とはいえ、各国の姫や貴族。さらには、祭事巫女と言うVIPばかりが揃っている状況で、護衛である騎士が全員になくなるのはマズイと、昊斗そらとの手伝いをしたいという欲求に堪えながら、フローラはペトラの首根っこを掴む。


 そんな賑やかなやり取りの中、森の奥からかすかに地響きが聞こえてくる。


「?今、何か音がしませんでしたか?」

 最初に気がついたのは、ヴィルヘルミナだった。

「そういえば〜・・・気のせいでは〜ないみたいね〜」


 段々と音は大きくなり、庵へと近づいてくる。


「なんだろ・・・・凄く強い気を感じる。でも、優しい感じもする・・・まるで、マダムみたい」

 祭事巫女であるミユは、こちらに向かってきている存在を感知し、それが危険でないものだと感じ取る。


 そして、現れた存在に、その場にいた全員が唖然とした。


「ぬ、ぬいぐるみ?」

「大きな〜くまのぬいぐるみ〜・・ですね〜」

 アリエルたちの前に現れたのは、森の主であるポンタだった。


「・・・・!?フローラ!呆けている場合じゃないぞ!」

「?!い、いけない!!」

 唖然としていたフローラとペトラだったが、得体に知れない巨大な存在に、頭の中を戦闘体制へと切り替える。


「あ!ポンタさん!!」

 騒ぎを聞きつけたフェリシアが顔を出し、ポンタの姿を見つけると喜び勇んで駆け出し、ポンタへと飛びついた。


「ね、姉様!?」

 フェリシアの行動を見て、驚いたヴィルヘルミナが悲鳴を上げる。

 他の面々も、驚いて声が上げられなくなっていた。


「心配するな。彼女は、この木漏れ日の森を管理しているポンタさんだ」

 テーブルを運んできた昊斗そらとの言葉に、一番反応したのはフレミーだった。

「では、あの方が!」

 フレミーも幾度と無く話に聞いていた伝説の存在を目の当たりにし、ポンタを羨望の眼差しで見つめていた。


「ポンタさんが皆に挨拶がしたいって言ってるから、皆さん来てください」

 手招きするフェリシアに、全員が恐る恐る近づいていくと、ポンタが大きな手を前に差し出す。


 握手を求めていると、フェリシアに説明され、一人一人がポンタと握手を交わす。



 ハジメマシテ、ミナサン。オアイデキテ、コウエイダワ。


 ポンタの声が全員の頭の中に響く。


 フェリシアや昊斗そらとたちがそうであった様に、ポンタ初体験のメンバーは驚いて声を上げていた。


「お久しぶりです、ポンタさん。お体の方も、すっかりよくなられたみたいですね。お子様方はお元気ですか?」

 ポンタがやってきたことを知った冬華とうかも、昼食の準備を止めて外に出てきた。


 木漏れ日の森での事件で、怪我を負ったポンタやその子供たちの処置を騎士団に任せていたので、冬華とうかとしては少々気になっていた。


 キシダンノ、ヒトタチノオカゲデ、スッカリゲンキニ、ナッタワ・・・・・・。ソレカラ、アノトキノ、オレイ、マダイッテナカッタワネ・・・・。アナタタチノ、オカゲデ、ワタシモ、コドモタチモ、ダイジニイタラズニ、スンダワ。ホントウニ、アリガトウ。


 大きな頭が、ゆっくりと垂れてくる。


「あの、ポンタさん。お子さんたちは、今日は一緒ではないのですか?」

 会うのを楽しみにしていたフェリシアが、周りを見渡す。


 ゴメンナサイ。キョウハ、ワタシ、ヒトリナノ。ボウヤノ、イオリノホウカラ、ケハイヲカンジテ、ヨウスモミニキタ、ダケダカラ。 

「そうだったのですか・・・・・残念です」

 がっかりするフェリシアの頭を、ポンタの大きな手が優しく撫でる。


 ジカンガ、アッタラ、ツレテキテ、アゲルワ。アノコタチモ、オヒメサマニ、アイタガッテ、イタカラ。


 冬華とうかとフェリシアが、ポンタの子供の可愛さをアリエルたちに力説していると、森へと入る道から人が歩いてきた。 


「あ!ポンタさん、ここにいたんですか?探しましたよ」

 余程探し回ったのか、少し疲れた声でポンタに話しかける人物。その服装は、ポンタと共に木漏れ日の森を管理するスタッフのものだった。

 アァ、ゴメンナサイネ。ナニカ、ヨウカシラ?

「壊れていた遊歩道の柵の修理が終わったので、その報告に」


 声から随分若いスタッフだと思い、フェリシアが何気に”彼”の顔を見ると、頭の中が真っ白になり、呼吸するのを忘れてしまった。


 当然である、フェリシアにとって忘れられない。いや忘れることの出来ない少年だった。


「あなたは・・・・・・・・」

「え?・・・・・・?!」

 感情の篭らない声と共にフェリシアに凝視され、今度は少年が驚き、陸に上がった魚のように喘ぎだす。



 かつて、ポンタを自分の使い魔としようと襲い掛かり、フェリシアと一戦交えた魔獣使い(ビースト・テイマー)、ルシフェード・レイ・鞍馬くらま


 昊斗そらとたちによって倒され、騎士団に捕まっているはすの少年が、そこに立っていた。


 あまりに突然の再会に、穏やかだった雰囲気が一転し、一気に一触即発の危険なものへと変わるのだった。 


 


 次回更新は、3月15日(土)PM11:00過ぎを予定しています。


 変更の場合は、活動報告にてご連絡します。

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