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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
巫女の国 大いなる野望 編
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(12) 兄妹のやり取り

 アルターレ護国で起きた”クーデター”事件。

 事件を解決に導いた昊斗そらとたちは、日付が変わる頃に、姫巫女であるシオンに呼び出された。

 ルールーも呼ばれていたが、早々に寝てしまい起こすのは可哀想だと、そのまま寝かせて、昊斗そらとたち傭兵4人と、フェリシアとフレミーの6人で、シオンの部屋へやってきた。


「ごめんなさいね、関係各国に謝罪と説明をしてたから、こんな時間になってしまって」


 昼間と違い、ミユと同じ巫女の衣装を着たシオンは、その威厳を如何なく発揮していた。

 そしてその横には、マーナが立っている。

「改めて、今回は本当にご迷惑をかけてしまって、ごめんなさい。そして、解決に尽力してもらってありがとう」

 立ち上がり、頭を下げるシオン。

「私たちは、降りかかる火の粉を振り払ったにすぎません。それに、この国が各国との関係を悪化させなかったことは、我が国にとってもいい方向へ向かいますしね」

 しっかりとした言葉を口にするフェリシアを、シオンは笑みを溢す。

「さすがは、ジェラード様のお孫さん。考え方はあの方そっくりね」

「お爺様をご存じなのですか?!」

「まぁね・・・・っといけない、話が逸れたわね。こんな時間に呼んだのだから、手早くしないと」


 自分の祖父の話が思いがけず聞けるかと期待したフェリシアがしょんぼりするが、シオンが「時間がある時に、一杯話してあげるわ」と約束する。

「話と言うのは・・・・実はね、ルーン王国に派遣する新しい祭事巫女のことなのだけれど」

 歯切れの悪いシオンに、フェリシアが首を傾げる。


「・・・・・候補の巫女の中に今回の件に関与した者が複数いたのよ。その影響で、一から候補を絞り込まないといけなくなったの。ごめんなさい、そのせいで殿下たちにはもう少し、この国に滞在してもらわないといけないんだけど、ダメかしら?」

「そう言ったことでしたら、仕方ありませんね。私たちの目的は、マーナ様を送り届けるのと、新しい祭事巫女様をお迎えすることですから、お待ちしますよ」

「ありがとうございます、殿下」


 深夜だが、和やかな空気が流れていたが、それを一人が撃ち壊した。


「・・・さて、話はつきましたがもう一つ、姫様にお願いしないといけないことがあるのですよね?姫巫女様」

 どこか辛辣なマーナに、シオンが冷や汗を流す。

「えー・・・と心の準備が、ってちょっとマーナ、なんか厳しくない?」

「何処がですか?それから、お話をするなら相手の目を見る。お父様やお母様に言われたことですよ?」

「あ、あの方々のことを引き合いに出すのは、卑怯よ?」

 やり取りが段々と組織のトップと部下と言うより、家族の言い合いになってきている。

「卑怯ではありません!あなたはいつもそうです、ちょっと面倒そうだな~と思うことから逃げ出す!いくつになっても変わりませんね、兄さん!!」

「「「「「に、兄さん!!!!!!??」」」」」


 昊斗そらと以外が、素っ頓狂な声を上げる。

「え?え?!シオン様は、女性ではないのですか?!」

「スレンダーな方だとは思っていましたが・・・・」

「よく言われるわ、女性ですよねって。でも正真正銘、男よ。心も体もね」

 シオンが男だったことに驚くフェリシアとフレミーに、オネエ言葉のシオンが証拠を見せましょうかと言って脱ごうとするのをマーナに殴られ止められる。

「いやいや、年齢が合わないでしょう?」

「うん、どう考えても逆だよね」

「どうスキャンしても、シオン様の肉体年齢は30代後半って出ます・・・・あれ、でも精神の摩耗度は80近い?」

「前に、巫女は年齢と共に力を増すといいましたよね?年老いる巫女の中には、増加した力を若返り法をと言う、秘術に使って若返る方もいるんです。兄はその一人で、見た目はああでも年齢は、私より5歳上ですから」

 シオンとマーナが兄妹と言うのが信じられないでいた冬華とうかたちには、マーナが懇切丁寧に説明した。

 昊斗そらとは、事前にシオンから話を聞いていたので、まったく驚いてはいなかった。

 

 そんな中、昊斗そらとは話が進まないと、口を開く。

「それより、フェリシアへのお願いってなんなんです?」

「あ、あ~・・・ん~・・それはね・・・・」

 先ほど以上に、歯切れの悪いシオンに、マーナが「早く言ってください」、と無言で圧力をかけてくる。 

「・・・・・・実は、ルドラ様をこの国にお迎えしようと、殿下に許可を・・・・」

「それは、出来ない相談です」

 毅然とした態度で、シオンが言い終わる前に一刀両断するフェリシア。

「まぁ、そうよねぇ~。はい!この話は無かったことで!!」

 断られたにも拘わらず、さも嬉しそうにするシオンに、昊斗そらとたちだけでなく、フェリシアやフレミーも怪訝な顔をする。

 シオンの説明では、あの場に居た巫女らが神であるルールーを、一国の姫に預けるより、この国で祀るべきだと言い出し、シオンにフェリシアを説得するよう詰め寄ってきたのだ。

 儀式場での一幕を見てなお、そのような言葉が出てくるとは、余程阿呆の集まりか?と国のトップであるシオンは内心笑ったそうだ。

 聞くだけ聞く、とその場を収め、一応形だけでも、とフェリシアに聞いたそうだ。

「すみません、その方々の名前と容姿をお教え頂けますか?ちょっと、力の限り説得(記憶を改ざん)してきますから」

 室内が凍りつきそうな笑みを浮かべ、冬華とうかがシオンに詰め寄る。

「えぇ、喜んで。どうせ、事務仕事もこなせない者たちだから、好きにしていいわよ」

 彼も彼で、自分が処断するより、昊斗そらと冬華とうかに任せた方が馬鹿には効果的だ、と考え丸投げしてきたのだ。

「まぁ、さっきの馬鹿話は横に置いといて、もう一つの本当の目的はこれなのよ」

 そう言って、シオンは一冊の古びた本を取り出した。

「それは?」

「これはね、初代賢人様が残された覚書と言われている物よ。まぁ、古代文字と思われる字で書かれているから、あたしたちには読めないんだけどね」

 取り出した本の表題を見て、昊斗そらとたち傭兵の面々が微妙な顔をする。

「ど、どうされたんですか?」

「ん?ん~・・・・まぁ、ね」

 あいまいな返事をする冬華。

 なぜか?それは、本の表題には”Diary”と書かれていたからだ。

「中を拝見しても?」

「いいわよ」

 シオンから受け取った”本”を開くと、そこには昊斗そらとたちが慣れ親しんだ日本語で書かれていた。

「異世界1日目、どうやら本当に異世界に来てしまったようだ・・・・・」

「・・・お兄さんたち、その文字が読めるのね?」

「え、えぇ・・・・俺たちの国の言葉ですから」

 その言葉に、シオンたちの顔が明るくなる。

 アルターレ護国の礎を築いた伝説の人物の書いた本であるため、内容がどうしても知りたかったと嬉々として答えた。


 だが、流し読みする昊斗そらとたちは、ページをめくるごとに表情が曇っていく。


”異世界に来て一か月、僕の努力の結果、一人の女の子に巫女さんの格好をさせることに成功した。これを足がかりに、もっと多くの女の子を巫女さんしようと、僕は決意する”


”異世界生活1年・・・・・僕は、もう女の子を信じない!!・・・そうだ、可愛い男の子をさがして、巫女さんの格好をさせればいい。男の娘・・・・いい、いいぞ!!”


”異世界生活を始めて5年。ようやく国らしくなった。僕が育てた男の娘が代表を務めている。あれから僕も大人になり、女性への不信感も消えた。でも、女性に巫女さんの格好をさせるつもりはない。あれは、姫巫女になる男の娘専用だ”


 途中でぱたんと、本を閉じた昊斗そらと。 

「どう?よかったら、待っている間に翻訳してもらえないかしら?もちろん、報酬は払うわよ」

 そう言われ、昊斗そらと玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの方を見る。

(そんな本の内容を丸暗記するぐらいなら、死を選びます)

(私も・・・・出来るなら遠慮させてください!)


 口パクで答える二人に、「だよな」と、昊斗そらとはうなずく。


「お引き受けしてもいいですが、我々は専門家ではありません。多少の齟齬が出てもいいのなら、と言う条件で引き受けます」

「その条件でいいわ。お願い」

 意外にあっさりと了承するシオン。適当だな、と思いつつも条件を飲まれたので断れなくなった昊斗そらとは、短く息を吐く。

「分かりました。では、この本をお借りしても?」

「えぇ、どうぞ」

 昊斗そらとは、シオンの許可を取り、”日記帳”を借り受ける。

”とりあえず、誤解を受けない程度に改ざんしないとな”

 同じ異世界人の趣味趣向を開けっ広げにするのも忍びない、と昊斗そらとは、内容を出来うる限りアルターレ護国の人々にとって、精神衛生上問題のないモノにしようと思案し始める。


「本当に、こんな遅い時間に色々とごめんなさいね」

 要件は済んだということで、今日はこれで解散となった。

 冬華とうか金糸雀カナリアは、先ほど聞いた巫女たちへの”お仕置き”をしに、そら寒い笑みを浮かべて街へと消えて行った。


 昊斗そらとたちが部屋から出て行った後、シオンは深々とため息をつく。


「今日は、色々あったわね~・・・・・」

 緋色の袴をまくり上げ、年甲斐もなく足を投げ出すシオン。

「何呆けてるんです。まだ仕事が残っているのでしょう?」

 呆れながら、疲れて足を投げ出す兄を見るマーナ。

 自分より若い姿をしている兄だが、その横顔は歩んできた年月が顔に影を作っているようにマーナは思えた。

「まぁね・・・そうそうマーナ。カーナ達の後任、任せるわよ?」

「はぁ?!ちょっと、兄さん!何を言っているんですか!?私はもう・・・・」

 そこで、マーナの言葉が止まる。

「力を失うから、賢人は無理?」

「!?」

 ものの見事に言い当てられ、マーナは言葉を失う。

「これでも長年、貴女の兄をやってきたのよ?・・・・・マーナ、内にある自身の力を感じる為の方法って、覚えてるかしら?」

「?えぇ、もちろん。巫女を目指す者が最初に教えられることですから」

 それは、とても抽象的な方法だった。

 目を閉じ、小高い丘へ上がり、眼下に広がる町を見るイメージ。それが、内なる自身の力を確認する方法だった。

 巫女となった者たちは、定期的のこの方法で自身の力を確認しているのだ。

「だったら、ここでやってみて」

「・・・・・」

 半信半疑で、確認を始めるマーナ。

 

 しかし、彼女の眼下には何もなかった。

「もっと、高くから」

 シオンにそう言われ、マーナはイメージ内の丘の高さを上げる。

 やはり、そこには何もなく、マーナが唇を噛む。

「もっと高く!鳥のように、空の彼方から見なさい!!」

 マーナは、自分の身体を空高くへと運ぶ。そして、飛び込んできた光景に驚き、目を見開く。

「!?」

「見えたようね?」

「に、兄さん・・・あれが、私の・・・・?」

「そうよ。貴女と再会した時、驚いたわよ。いつ力が暴走するか分からない状態だったんだもの、ハラハラしたわ」

 そう、マーナの力は減少する所か、彼女自身が確認できないほどに膨れ上がっていたのだ。


「原因は、水の神とあのお兄さんたち・・・・あんな規格外な存在が周りに居たら、その影響で普通の巫女だと一瞬で発狂するか廃人一直線ね。貴女のような下地のしっかりとして、経験を積んだ古参の巫女だから、危うくともバランスが保てていたのよ」


 巫女は、一般人と比べ感受性が相当に強い。


 昊斗そらとたちは、自分たちが無神世界出身で、世界に影響を与えない存在だとしても、細心の注意を払っている。

 だが、それでもマーナは敏感に感じ取り、彼らが王都に来た頃から影響が出始め、ルールーが現れたことで一気に表面化したのだ。


「これで、賢人にならないなんて、我儘は言えないわよ?ただ、そのままじゃ不味いから、力を押さえないとね」

 笑顔の兄を見て、マーナは嫌な予感が過る。

「まぁ、手っ取り早いのは、若返り法よね~」

「なっ!?」

 兄の言葉に仰天するマーナ。

「まぁ、力の配分を考えたら20代ぐらいまで若返ればつり合いが取れるでしょうね」

「ちょっと、待って!」

「待てないわよ。今は猫の手も借りたいぐらい忙しいのよ?力を制御する方法を身に付ける時間は無い。そうなったら、方法なんて若返り法しかないでしょうが」

「でも・・・・」

「旦那さんに気を使ってるなら、大丈夫よ。あの人、絶対気にしないわよ」

「あの人なら、そうでしょうけど・・・・」

 旦那を引き合いに出され、言葉が尻すぼみになるマーナ。

 彼女の旦那は、ルーン王国の騎士団に所属し、アルバート騎士団団長にまで上り詰めた猛者である。

 引退後、妻の故郷で暮すため、マーナより数年早くアルターレ護国に移住していたのだ。


「それに、貴女のことだから若い頃、肌を許してはないのでしょ?男はいくつになっても元気なものよ?」

「?!に、兄さん!!」

 二人のやり取りは、まるで幼い頃の様になっていた。


「・・・笑い事じゃないけど、本気で考えなさい」

 立ちあがったシオンが、年老いたマーナの頭を撫でる。

「大丈夫よ、あの姫様も驚きはしても、貴女を軽蔑なんてしないわ」

「分かっています。あの方は、本当に優しい方ですもの・・・・」

 そう言って、諦めたように肺の中に溜まる重苦しい空気を吐き出す。


「・・・・私も覚悟を決めましょう。その代り、若返り法のやり方なんて知りませんので、きちんと教えてくれるのですよね?」

 挑戦的なマーナの言葉に、シオンは剣呑な顔をする。

「誰にモノを言ってるの?私は全ての巫女の頂点に立つ、姫巫女よ?懇切丁寧に速攻で、伝授してあげるわよ!」

 袖をまくり上げ、準備を始めるシオン。


 その頼りがいのある背中を見るのは何年振りか、とマーナは嬉しくなり、その目には涙が浮かんだ。


 こうして、長かった騒乱の一日は、ゆっくりと過ぎていくのだった。



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