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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
巫女の国 大いなる野望 編
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(11) 暴挙への鉄槌

 今まで表に出ることなく、その存在に疑問符が付いていた姫巫女・・・・アルターレ護国のトップが姿を現し、儀式場は騒然としている。


 ただ、Tシャツにパンツスタイルと言うラフな格好なためか、いまいち威厳に欠けるが、それを補って余りあるほどのオーラを放っている。


「それじゃ・・・・・まずは、そこのお馬鹿さんたちの処遇を考えないとね」

 ため息交じりに、拘束されている賢人たちの孫を鋭い眼差しで射抜くマダム・ヴァイオレットこと姫巫女シオン。

 孫たちも、先ほどまで冬華とうかに何十回と殺される目に遭っていったとは思えないほど、今にも咬みつきそうに睨み返している。

「あら、まだ元気なのね」

「すみません、昊斗そらと君が中途半端に止めに入ったせいで、肉体も精神も完全回復しちゃってます」

「そうなの?」

 冬華とうかの説明に、シオンは考え込む。

 ふと、横に居たミユが震えているのに気が付いた。その視線は、なにか怖いものを見ているようだと、シオンは思った。

 その視線の先には・・・・・・


(好都合だわ、あの子がいる・・・・・・・・・まだ私たちに運があるわ!)

(でも、呪文を書いた紙は手元にないわよ?)

(うろ覚えでも構わない。あの娘の”力”を暴走させれば・・・・)

 小声で打ち合わせていた三人がいた。

 次の瞬間、骨のきしむ生々しい音と共に一人が真横に吹っ飛ぶ。

 呆気に取られる面々の視線の先には、上段に蹴りぬいた形で止まっているシオンがいた。

「あ・・・が・・」

 顔面を蹴られ、口から血を流しながら折れて地面に転がる歯を見つめる孫A。

 さっきまで、どんな致命傷でも治っていたのに、怪我が治ることは無く、茫然としている。

「あ、術は全部解いてるから。いくら待っても、治らないよ?」

 冬華とうかの言葉に、孫Aは痛みで震えだす。

「ふん。ミユの才能に目を付けたところは、褒めてあげてもいいわ。でもね、あんたたちみたいな三流以下の”半端者”たちに、あの子の力を使いこなせると思っていたなんて・・・・・大概にしなさい」

 

 蹴りぬいた足を下しながら、吐き捨てるシオン。


「は、半端者・・・・?それは、私たちのことか!!」

 そう呼ばれ、孫たちが激高する。


 半端者。

 アルターレ護国において、能力不足により巫女になれなかった者たちをそう呼び、辻占いなどでその日暮らしが精いっぱいな者も多く、基本的には差別用語に類する言葉だ。

 そんな言葉を、国のトップが口にするのは問題であるが、シオンはこう言って切り捨てた。

「あたしはね、巫女になれなかった子たち全員に言ってるわけじゃないの。巫女になれなくても、歯を食いしばって生きてる子も多く居るからね。だけどあんたたちのように、特に努力もせずに巫女になろうとして、なれなかった怠け者は話が別よ」

「ふざけるな!!私たちは神に選ばれた者!半端者ではないし、あんな屑たちと一緒にするな!!」

 怒りにまかせ、喚き散らす孫たち。

「さっきから、五月蠅いわね。神に選ばれたとか・・・・・本気で言ってるの?」

 何度聞いたか分からない言葉に、シオンが呆れた顔をしている。

「当り前よ!世界でも数少ない、トリプルシンボルなのよ!神に愛されていなかったら、なれるはずないわ!!」

 その言葉を待っていたと言わんばかりに、笑みを浮かべる冬華とうかが、ルールーの方をみる。

「ルーちゃん、出番だよ!」

「おぉ!やっと妾の出番か!!」

 冬華とうかに呼ばれ、ルールーが意気揚々と歩み出る。

 アルターレ護国の関係者が何者だ?と怪訝な顔をする。

 それを見越して、冬華とうかはルールーに施してある封印術を一つ解いた。

「?!な・・・・・ま、まさか・・・」

 突然、シオンを始め賢人たちが顔を真っ青にしてルールーを見、マーナへ助けを求めるように見る。

 だがマーナは、穏やかな顔をしてただうなずくだけだった。


「それならさ、本人に聞いてみたらいいよ。ね、ルーちゃん」

 そう言って、冬華とうかはフェリシアに合図を送る。

「フェリシア・アルバーナ・ルーンの名において、”精霊”ルールーに施されし封印を解除する!」

 ルールーの首に付いた首輪が緩み、その姿が足元から沸き起こった逆巻く水柱に消える。

 そして、水柱が音もなく消えた瞬間、そこに立っていたのは、水の神ルドラだった。

「妾、降臨!」

 嬉々として現れた水の神姿のルールーは、前とは所々差異が見受けられた。

 まず、見た目の年齢。20~30代の妖艶な美女だったが、今はフェリシアと変わらない年齢の美少女になっている。

 そして、首には緩んだ首輪がそのままなので、彼女がルールーと同一の存在である事を示していた。


 強大で神聖な霊力を持つルールーに、呆気に取られるアルターレ護国の面々とフレミー。しかし、昊斗そらとたちを始め、フェリシアやマーナはケロッとした顔をしている。

 なんせ今のルールーは、全盛期には遠く及ばない力しかないので、全力を知る者には、逆にはしゃいでいるようにしか見えない、ルールーの姿に頬が緩んでしまう。

「初めまして、と言うべきかの?」

 一言、ルールーが口にしただけで、全員が床に額をこすり付けんばかりにひれ伏す。

 巫女や尼僧たちには、分かったのだ。目の前にいるのが、嘘偽りなき本物の神だと。

 孫たちは、その異常な光景を棒立ちになって見つめていた。


「ふむ・・・久々で加減が難しいが・・・妾はやり過ぎなのか?」

 不安になったルールーが、冬華とうかに尋ねた。

「う~ん・・・・・ギリだけど、合格点!」

 冬華とうかの言葉に、ルールーが嬉しそうに笑みを浮かべる。

「そうか!さて・・・・・妾たちに選ばれたとか、ほざいておる輩がいたな」

 表情を険しくし視線だけを動かして、棒立ちの孫たちを見る。

「ふん!なんじゃ、その濁った魂は・・・・貴様らの様なものが、神に選ばれた?随分と、ふざけたことを言う・・・・もし、妾以外の神が貴様らを選んだのなら、妾たち他の神への侮辱じゃ。じゃが、妾たち神は特別なことでもない限り人間を、しかも個人に対し、”選ぶ”などと面倒なことは行わん」

 ルールーの言葉に、孫たちが声を上げる。

「そんな!!私たちは、神に選ばれている!そのはずよ!!」

「そうよ!そうじゃなきゃ、この力は説明できない!!」

「黙れ」

 苛烈な霊力を放ち、孫たちを黙らせるルールー。

「言ったぞ?妾たち()は”選ばない”と。仮に、選ばれているのなら、妾以外の神の気配があるはずじゃ。じゃが、貴様らにそんな気配など、微塵も感じんぞ?全く、このような物わかりの悪い者たちに仕えるなど、妾の眷属ではないが、精霊たちが不憫じゃな・・・・」

 そう言って、ルールーが指を鳴らす。

 誰もが、何が起こるのか予想もつかず、身体を強張らせる。


 だが、何が起こるわけでもなく、静寂が支配する。


「・・・?!・・・・!?!そ、そんな?!!?!!」

 それを打ち破ったのは、孫の一人だった。

 ひどく混乱し、髪を掻き毟る。

「精霊が・・・・・私たちの精霊が!!!!」

 あり得ないことが起きたと、恐慌状態になりルールーを見る3人。

「あ奴らに義理立てる必要はないのだが・・・知り合いとして見過ごせないのでな。貴様らの精霊を解放させてもらったぞ」

 今度は、巫女や尼僧たちが驚愕して顔を上げた。

 当然である。人間と精霊の契約を取り持つのは巫女の仕事の一つであり、その契約は、人間が死ぬまで解けることはない。

 それが、相手が神とは言え、いとも簡単に解かれたのだ。

 自分たちの常識が音を立てて崩れていく幻聴を聞いた気がした巫女たち。


「巫女の長よ。後はぬしに任せる、好きにせい」

「?!はっ」

 ルールーに声を掛けられ、シオンは深々と頭を下げた。


「・・・・おぉ、一つ言い忘れておった」

 今度は何?!と戦々恐々する面々。


「神はそう易々と人間の前に現れんが、妾がここに居られるのは、”選んでもらった”からじゃ」

 ルールーは、孫たち3人に見せ付ける様に、フェリシアの横へと並ぶ。

 それはまるで、ルールー()とフェリシアが対等な立場に居るような構図だった。

「そして、貴様らのような汚物と違い、この者は清らかな心の持ち主での。悔しければ、生まれ変わって出直して来い。もっとも、何度生まれ変わろうとも、絶対に妾は貴様らを認めんがな」

 ルールーの刃のような言葉が、孫たちに止めを刺す。自分たちは神の不評を買って全てを失い、憎しみの対象だったフェリシア(お姫さま)は、神の寵愛を受けている。

 そんな自尊心に受けた傷は、今度は癒えることはなく、彼女らの目から生気が消えてしまい、本当に死体の様に動かなくなってしまった。


 ルールーの首輪が再び作動し、いつもの幼い姿へ戻る。

「フェリシア!どうじゃったかの!?妾、凄かったか!?」

「はい!凄かったですよ、ルーちゃん!」

 フェリシアに頭を撫でられ、嬉しそうにするルールー。

「これなら、封印解除時のルーちゃんの力、2割から4割ぐらいまで引き上げてもよさそうだね」

 封印状態を解いたルールーは現状、神の時の2割しか力を発揮できない。それでも”精霊”としては破格な力なので、通常は困らないが、今回のようにいざと言う時を考えると、心もとないと冬華とうかは、ルールーの活躍を鑑みて、割合を引き上げる方向で考え始めた。

 

 あまりにも、場にそぐわない雰囲気に、めまいを覚えるシオンたちだが、持ち前の精神力で立ち上がる。


「お兄さん・・・あんな隠し玉があるなら先に言ってくれないかしら?あたし、心臓が止まりそうだったわよ」

「まぁ、先にバラしたら隠し玉になりませんから」

 シオンに文句を言われ、それを軽く受け流す昊斗そらとだが、実の所は彼もルールーを担ぎ出すことを聞いていなかったので、ちょっとびっくりしていた。


「・・・さてと、色々あって話が逸れたから、話を戻すわよ。まずは、あたしや賢人たちの名でここ一か月に出されたお触れや決まりは全面破棄、国民及び関係国への説明は姫巫女であるあたしが行う。各国商人たちへの賠償等も、全部受けるよう通達なさい」

 巫女の数人が、決定を伝えるため足早に出て行く。  

「次に、今回の件に洗脳はなく、自らの意志で加担した者への処遇だけど、即錬の行を行ってもらうわ」

 この決定に、どよめきが起こる。

 即錬の行とは、アルターレ護国の巫女が行う修行で、最も過酷な物であり、その死亡率は9割を超える。言ってしまえば、死刑宣告である。

「それからカーナ達賢人3人は、解任。後任への引き継ぎ作業後、巫女の位も剥奪する。今回の被害者とはいえ、血縁者から犯罪者を出した以上、責任を取ってもらうわ。それから、貴方たちの一族から今後一切、祭事巫女及び要職の位にもつかせない・・・いいわよね?」

 賢人たちに問いかけるシオン。

 その問いに、賢人たちは首を縦に振る。

「はい。姫巫女様がお決めになったことですから、我々は従います」

「次に、お馬鹿さん3人だけど、両親兄弟と共に、一生”開拓民”として生きてもらいましょうか?この国に多大な迷惑かけたんだし、罪を償いながら家族みんなで、この国の礎になりなさい。あぁ、場所は東の開拓地だから、頑張んなさい」

 随分、軽い処遇と思われるが、アルターレ護国において”開拓民”というのは犯罪者がなる身分のことだ。

 しかも、刑務所と違い、刑期というものが無い為、開拓民になる期間というの終わりがなく、無期懲役と同義になる。逃げ出したとしても、身分が無いに等しいので、逃げ切っても奴隷に身を窶すしかない。

 さらに、東の開拓地は魔獣やモンスターの巣窟が多く、開拓に行った者たちはその殆どが早々に死んでいるので、こちらもある意味で死刑宣告だった。

 廃人とも燃え尽きたとも言える3人を、尼僧たちが引きずっていく。


「・・・殿下、今回の決定を持って、あなた様への侮辱の数々に対する謝罪とさせていただけないでしょうか。もし、決定がお気に召さないとおっしゃるのであれば、どうぞこの首をお持ちくださいませ」

 そう言って、シオンはフェリシアの前に跪き、首を投げ出した。

「な?!」

 その言動に、アルターレ護国の関係者から絶句に近い空気が流れる。

 だが、フェリシアは首を横に振った。

「いいえ、その必要はございません。姫巫女様の決定は、とても重いものだと皆様の反応を見て、よく分かりました。ですので、これ以上の言及は致しません。ルーン王国は、アルターレ護国に対し、これからも変わらぬお付き合いを望みます」

 シオンに、手を差し出すフェリシア。

「!・・・・・多分なご配慮、心よりお礼申し上げます」

 シオンは、驚きながらもその手を取るのだった。




 その後、シオンは今回の経緯を国民たちに包み隠さず発表し、事件の首謀者である孫たちが作った決まりを即日破棄した。

 この事件によるアルターレ護国が被った損害は国を傾かせる程だったが、古くから祭事巫女の活躍による各国との間に築いた信用と、姫巫女シオンの真摯な対応のおかげで保つことが出来たのだった。



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